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パーティに向けて!

「それではワシも支度があるからちょっと引っ込むことにするぞい」

「うん、わかった」


アレクシアの我儘を通す為には準備が山ほど要る。彼女も其れがわかっているから例え要望が通らなかったとしても不満を言う事はないだろう。だが、だからこそそんな彼女の望みを叶えてやりたかった。


「よし、アルテシーアに使いが到着するまでどれくらいかかるかのう」

「アダムスター卿の間者を通しましたのでもう直に届くかと」

「ふぅむ、この一ヶ月やつらが大人しかったのは彼女達の働きがあってのことか」


近習に礼装を着せてもらいながらサマル王は嘆息する。


「嫌だ嫌だといいながら抜け目の無い奴。親族に引き込んで正解じゃったのう」

「王都に参上した六千の兵士といい凄まじいですね」

「うむ、ザンナルを降した事から考えてアレが全軍ではあるまい。アレを全力と勘違いする者もおるだろうがな・・・」


六千といえば一領主としては破格だが国家などと比べたら流石に少ない。サマルでも六千以上の兵ならば揃えられる領主も居なくは無い。しかもザンナルはその当時政変から農民の反乱などにより国土は荒廃し、騎士団の長たる将軍の相次ぐ病死などによって騎士団は瓦解したと一般では考えられている。


(いくらなんでもそれだけで騎士団が崩壊するはずがない・・・少なくとも都市部の結束は固かったはずじゃ)


政変の折、サマルの商人や外交官は一時的に避難したもののそれからはザンナルの混乱により外交官達が復帰する事が難しくなり、実質外交のチャンネルは閉ざされてしまっていた。それ故にサマルでは実のところ千人の騎士団を撃退した所までしか実質の戦闘によって勝利したという確実な証拠はないのだ。


(千でもリットリオやサマルの騎士団では手を焼くザンナルの騎士団を壊滅させた・・・わかる者にはこれがどれほど凄まじいのかが解るだろう・・・しかし長らく平穏に馴れた諸侯にこの事を理解出来る者がいるのだろうかのう)


国が滅びるかといった瀬戸際など感じなくなって久しい。表面上はザンナルとも平和であったし、かなり昔にリットリオとは友好関係を構築して戦乱とは無関係に等しかった。あるとすれば夜盗や魔物の類との戦闘だけ。しかもそれさえも徹底的に管理された戦いばかりだ。


(そういえば実戦らしい実戦などついぞ見た事無いのう・・・先代のサマル王が最後じゃったか?)


最後の戦いはかつて先代のサマル王が隣国リットリオと戦った際の戦役が最後だったとサマル王は記憶している。もはや文献のみに残る旧い戦いであった。


(それに比べてヴォルカンは全てが新しいものばかりであったか・・・)


戦術・思想・用兵術に至るまでが先進的であり、拠点を繋いで次々に相手の陣地を攻略する浸透戦術や包囲戦術、ダークエルフやエルフを市井に紛れ込ませての偵察や諜報などノウハウが全く無いにも関わらずそれらを有効に運用している。軍事技術に関しての知識量が絶対的に多いのだ。


「おっと、いかんいかん・・・今はアレクシアの事もかんがえてやらんとな」


王族としてアダムスターのこれからをしっかりと見据えておかねばならないが今はアレクシアの事も考えてやらねばならない。なにしろ政略結婚が恋愛結婚に変わるかどうかの瀬戸際なのである。

ほとんど無いだろうとは思いつつももしもアレクシアがフラレてしまったりヴォルカンが失敗したりしたらそれこそ目も当てられない。ハネムーンの前夜祭のはずが気まずい仕事に早変わりとなっては両者にとってはもちろんの事サマル王国の国益にすら関わってくる。


「まさか孫の結婚を考える事が国の利益になるなんて思わなんだな・・・」


少しばかり胃が気になるサマル王。


「あらあらまあまあ!」


対する離宮ではサマル王の妻である王妃リリーエンタールと側仕えの年嵩の近習達がサマル王からもたらされた報告に色めき立っていた。


「まさかアレクシアがまたドレスを着たいなんていう日が来るなんて!」


かつては身分違いから満足な衣装を着ることが出来なかったばかりにドレスに馴染めず、令嬢ながら男装して剣を振っていた彼女は美しく成長し王女となってからもほとんどドレスを着る事はなかった。

たしかに似合わなかったのも事実ではあったが幼少期のトラウマが必要以上に彼女を女性らしい格好から遠ざけていたのも事実である。しかしいかに女性としては背が高く筋肉が着いているとはいえウエストはキリリと締まり、胸は大きく育ち、女性としての体つきをチャンとしているのだ。なにより凛々しい整った顔立ちは華美なドレスには似合わずとも淑やかで落ち着いた色合いのドレスなら彼女の魅力に答えてくれるはずである。


「夕方のパーティに間に合うかしら・・・ううん間に合わせる!たとえ間に合わなくても結婚式と初夜には間に合わせて見せるわ!」


リリーエンタールは手を叩くと常駐する職人達をかき集めてドレスを仕立てなおす。細かい調整が必要なはずなので難航するかと思いきや彼女の記憶から弾きだされたアレクシアのプロポーションの情報は正確に職人達へと伝わっていた。


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