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観兵式でのあれこれ その3

そんなアレクシアの不安を他所に叙任式は滞りなく完了し、サマル王とヴォルカンは教会と貴族の面々が見守る中で伯爵位への正式な叙任と杖の授与が行われた。


「アダムスター伯爵、これで君はお父上に次ぐ爵位になった。これからも国の為に尽くしてくれる事を期待する」

「全力を以って当たらせていただきましょう」


お決まりの定型句を述べて杖を恭しく受け取ると周囲から祝福の言葉が贈られる。教会以外の人間の中には心中穏やかざる者も居るだろうが王族に次ぐ権威の象徴たる教会が睨みを利かせている中で反論出きる者はいない。もちろん教会には多額の寄付がアダムスター領から流れている事も補足しておく。

経典を文書化して保管・量産できるようになったので教会は金銭と同様に不可欠な援助を受けているといっていい。


「それでは次いでザンナル帝国跡地における我が孫アレクシアの総督の任命式とその補佐たる貴殿の任命式を執り行う」


サマル王の言葉を受けてアレクシアが王宮の二階から叙任式を行った会場へと降りてくる。皆はアレクシアの凛々しさに目を奪われ、男のみならず・・・というか女性が黄色い声を上げていた。


「陛下、アレクシア・ウルリカ・フリドリン・サマル参上いたしました」


膝を突いて臣下の礼を取ると会場の皆も一斉に膝をつく。


「うむ、これよりそなたをザンナル跡地を統括する総督に任命する。これよりは一人前の王族として任を全うせよ」

「はっ!仁政を敷き、サマルの栄光を遥か遠くの地平まで轟かせてご覧に入れましょう」

「次に、ヴォルカン・アダムスター伯爵」

「はっ」


場所を入れ替えてサマル王の正面に立つ際にアレクシアの隣を通るとアレクシアは此方を見つめているのでヴォルカンは口角を持ち上げて視線をぶつける。するとアレクシアは少しだけ驚いた様な顔をしていたが笑顔を見て緊張が解れたのか柔和な笑みを浮かべて一歩下がった。


「そなたを総督府補佐官へと任命する。アレクシアを補佐し、ザンナルを立派な土地へと再建せよ」

「全霊をもって任にあたります」


ヴォルカンの返事に満足げに頷いたサマル王は内心礼儀正しく振舞うヴォルカンが似合わな過ぎて噴出しそうだったが大舞台に慣れているので表情を微塵も崩さずに任命式を完遂した。


「任命式の終了に伴いこれよりはアレクシアが国を出、総督就任を祝う宴を開催する。夕刻を告げる鐘まで時間を取るのでそのときにまた見えよう」


サマル王の言葉を受けて一旦解散となり貴族達は礼装を脱いでパーティ用の服装に着替えるべく退席していく。本来ならば即開催しても良かったが貴族や騎士の中には礼装に鎧を採用している者も多く妻を迎えに行く時間やお色直しの時間が必要なのである。


「ふぅ、やっと終わった・・・」


続々と王宮を後にする皆を見つめながらアレクシアはほっと息を吐いた。鎧を脱いで普段の服装に着替えたい思いで一杯だったが鎧を脱いだとしても次に着るのはパーティ用の服装なのだ。

一時期は母も彼女にドレスを着せたがったが余りにも似合わなかったので皆が言葉を無くしてしまい、それ以降は男装の礼服を身に纏っている。しかしそんな彼女も乙女、ヴォルカンを前に背伸びして見せたいお年頃である。


(私がドレスを着たらヴォルは喜んでくれるだろうか・・・)


似合わないとは思いつつも母から女性が着る晴れ着の一つとして教えられている彼女にとって愛する男性の前で綺麗でいたいと考えるのは当然であろう。


「御爺様・・・その、よろしいですか?」

「なんだねアレクシア」


モジモジと歯切れの悪い孫を前に心当たりの無いわけではないサマル王だったがヴォルカンの礼儀正しい姿を思い出してバカ笑いしたい所だったのでちょっと素っ気無い返事を返してしまう。


「ヴォルの事なんですg」

「ぶふぅ!」


ヴォルカンの名前を聞いて遂に国王は決壊した。


「お、御爺様?!」

「ゲーッホゲホゲホ!んんっ!ゲフンゴフン!」

「大丈夫ですか!?」

「だ、大丈夫だ!」


不遜な態度がデフォのヴォルカンが慇懃に振舞う姿はサマル王にとって無茶苦茶違和感の激しいものだった。激しい笑いを引き起こすほど似合わないものでもあった。最低限の礼儀を嗜んではいるがヴォルカンの本筋は和の方の礼儀なので全くといっていいほど似合わないのだ。


「あ、アダムスターはくしゃ・・・ぷぷ・・・伯爵がどうした?」

「ええ、彼の為にその・・・ドレスが着てみたくて」

「えっ?」


サマル王の思考がフリーズする。完全に予想外の言葉であった。


「ドレスか・・・確かにパーティ用のドレスは妻も、皇太子妃殿も持っていたが・・・」


そう言いつつアレクシアを見ると彼女はモジモジと頬を染めながら長い髪をいじっている。


(これが恋の力か・・・まさか嫌いであったドレスを着てみたいだなどと・・・)


恋は人をとても精力的にする。優柔不断で有名な皇太子フリードリッヒに決断という難行を即決させた人生の一大イベント。


「言いたい事はわかった、間に合うかはわからんが掛け合ってみよう」

「本当ですか!」


アレクシアの喜びに満ちた表情に笑顔で頷くとサマル王は使いを出す事にした。



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