王宮でのお話
そしてそんな事を全く知らないヴォルカン達一行は王都へと到着し、到着早々に騎士団に連行され王宮へと推参した。
「あいつ等絶対可笑しいって、なんで王都についた瞬間捕まるの?監視されてた?」
「えっと、どうやら皆様旦那様のお顔をご存知のようで」
「監視されてるようには見えなかったので・・・旦那様この国で何をなさったんですか?」
門を潜った瞬間に騎士団が大量に出張ってきて俺達を馬車に押し込んで王宮までのノンストップだ。
旅支度のままなんだけどこれどうすんだよ。
「何にもしてねえよ・・・強いてあげるならサマルの経済握ってるくらいじゃないのか」
木材の輸出と紙の販売で数えるのがちょっとめんどくさいくらいの金がうなってるが今のところ支出の方も予定がビッチリ詰まってるのでそこまで余裕はないのだ。国家規模の土地の整備と人件費の支払いが待ってるからな・・・。
「農地改革と警察隊の人件費と教育費だろぉ・・・兵器の維持費に訓練費・・・食料自給率がザンナルの土地のせいで十割から三割くらいまで落ち込んでるから食糧輸入も金が・・・もうやだ禿げそう」
頭が痛くなってくる。とりあえず農民をフィゼラー寄りの場所に集めて農地を再整備し、獣人達の中から順番に荒れた土地を再生させていっている。魔物も結構出るらしいが彼らからしてみればフィゼラーの外の魔物などウサギレベルとのことだ。
「狩りまくってるお陰で肉が主食になってるそうだ。俺としては穀物の高騰が懸念される」
「肉は片端から燻製や干し肉にしてるそうですが・・・毛皮なんかも余って来てるそうですね」
「毛皮を小麦とその苗に交換してもらっているからなんとかなるといいんだけどなぁ」
「こっちでは価格崩壊してますけど実際魔物の毛皮って高級品なんですよ?」
「それがアランからまた苦情が来てさぁ・・・」
「調子に乗って売りすぎましたかね?」
「調整してくれてるらしいけど倉庫がパンパンだってさ」
「毛皮を使った商品とか道具とか考えましょうか?」
「羊皮紙ならぬ魔物皮紙とか?」
溜まった雑務の事を考えると頭が痛くなるが仕方ない。そう考えていると俺達を運んでいる騎士からもう直到着するとの連絡が来た。
「あのー、もうすぐ到着なんでそろそろ降りる準備してもらっても良いですかね?急ぐように言われてるので」
「うるせーコノヤロー!なら最初の一日くらい余裕持たせとけ!」
「あとその格好もどうかと」
「イヤミか!喧嘩売ってんのか!」
「や、やめて!御者の首絞めるとか正気ですか!」
「うるせぇ!罪人か家出人みたいな扱いしやがって!この!この!」
「旦那様!ゆ、ゆれてます!大変ですってば!」
三人がかりの説得でなんとか許してやったがあの騎士め、次にあったらとっちめてやるからな。
「さて、到着っと・・・相変わらずでけえな。ザンナルもそうだったがどこも王宮ってのはでけえ」
「灰にしちゃいましたけどね。ザンナルの王宮は」
滅ぼしちまった国のことはどうだっていいさ、それより今からどうするかだ。民達の安寧があれば恐らく彼らも浮かばれてくれる。自己満足に過ぎないがな。俺達は案内を受けながら王宮の中へと入っていく。
「ヴォルカン・アダムスター、参上いたしました国王陛下」
謁見の間に通された俺は国王陛下の前に膝を付き頭を垂れる。後ろの三人も俺と同様のポーズを取ってくれているので問題ないはず。
「よくぞ来てくれた、ガランドの息子。いやさ、ヴォルカン伯爵」
「はて、爵位を授けられたのは子爵だったはずですが?」
「此度の戦の功と思ってくれれば良い。功労に応じて褒章を授けるのは当然だからのう」
「なるほど・・・」
陛下からの許可を得て立ち上がった俺に近習の者から伯爵以上の爵位の者が持つマントと杖を手渡される。
「ヴォルカン・アダムスター。ザンナル帝国の打倒の功により伯爵位を授ける・・・そして褒章として授けるものだが・・・なにがいいかのう」
「お金とかはぶっちゃけた話事足りてますんでね」
「そうだろうのぅ・・・つーか素に戻るの早くない?」
「此処の人間は俺が人間じゃない事知ってんでしょ、それに実際の年齢で言うと俺の方が六十年ばかり年上だしさ」
かつて皇太子の婚約に際し俺はドラゴンの姿で彼らの結婚を祝福したことがある。王権神授ならぬ王権龍授である。実際のところ彼女との結婚には反対派が多かった為公的に上げることができなかったのだ。なぜなら今の皇太子妃は身分が低い男爵の家の出であり他の連中の嫉妬に晒されたのだ。その際に一役買ったのがドラゴンである俺。前もって打ち合わせをした後に婚約の会場に降り立って祝福したのだ。
『良き哉良き哉・・・睦まじくあれ』
腰を抜かす反対派にもしっかりと聞こえるようにそう言ってやったところピタリと陰口は止んだ。褒章は出なかったが皇太子と皇太子妃の関係を国内に認めさせた事で国内の不穏分子は沈黙した。そのお陰で父なし子であったフランツとアレクシアは晴れて皇太子の実子と公的に認められた関係となった。
国王と皇太子は墓場まで持っていく事を条件に俺がドラゴンであることを教え、それを悪用しない事を条件に色々と協力して来たのだ。