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そっくりそのまま! その4

俺は最近アダムスター領で獣人達の国と国交が秘密裏に始まったことを告げた。もちろんこれは半分嘘で半分は当たりだ。なんてたって交易は始めてるし、親父は獣人に理解があるからな。しかも獣人達が語学の研究に親父達の伝記を題材にしてたからはじめっから好感度は高い状態だ。


「さしあたりまして獣人達の所に贈り物をするのがよろしいかと」

「贈り物か・・・何が喜ばれるかご存知か?」

「人手が一番でしょうな、聞けば貴国は獣人が多数住まうとか。彼らを派遣していただければ十分かと思いますが」


そう言うと皆は何故?といった様子で此方を見る。


「交易を結んでから我等の穀類が浸透し、彼らの中で急速に農業地が広がっております。自給率をもう直越えるかという話を聞き及びますが彼らの住まう地はなにぶん広い森林。開拓に携わる人手が足りないのです」

「なるほど・・・」

「さらにここで獣人に対する寛大な処置を見せればかの国が仲裁に立ってくれるでしょう。よしんば無理であったとしても獣人の国から穀類の輸出が見込めますよ。それだけのペースで農地が広がっておりますので」


そういうと彼らの中に皮算用を始める者が現れ始める。彼らにとっては口減らしと穀類の輸入先が同時にやってきたのだからぜひとも欲しいはずだ。


「しかし・・・国民を売り渡すような真似は・・・」


皆が賛成ムードに傾きかけたところで唯一皇帝が渋り始めた。頭では分かっているが感情を整理できていないといった様子だ。チッ、善人を騙すようで心が痛むじゃないか。


「陛下、しかしながらこのままでは国民に餓死者がでます。ご決断を」


一人がそう言うと将軍達が縋るような目で皇帝を見ている。ま、あれだけ田畑が荒れりゃこう言いたくもなるわな。おれとしてもこれ以上獣人達がクタクタになる前にこっちに引き渡してくれたほうがいいんだがね。滅ぼしに来た時味方と敵がごちゃごちゃになると難儀するだろうが。


「うむ・・・仕方ない、今獣人達は何人いたかわかるか?」

「はっ、おおよそ四万人ほどかと、皆奴隷ですので決定後直にでも集められます」

「分かった・・・。それでは伯爵殿、何人ほど用立てればよろしいか?」

「そうですな、多数、居れば居るだけよろしいので貴国の獣人を国境付近に集めていただければ此方から迎えに行ける様手配いたします」

「了解した、早速取り掛からせよう」


こうして解放区と呼ばれる特区がザンナル帝国の国境に設置され、そこに全ての獣人が集まる事となる。

俺はそこから美味しく獣人達を頂きつつ豊作で値崩れを起こしかかっていた穀類をリットリオとサマルから買い集めてはザンナル帝国に輸送した。中継を魔導エンジン付きのトラックで行ったので時間も経費もかなり少なくて済んだ。


「いやあ、何と言ったらいいか」


数回目の輸送で立ち会った将軍がそう言う。喜んでくれて嬉しいぜ。自給率と国民の数から考えたらクソの役にも立たないだろうが精々民草の為に働いてやってくれよな。


「いえいえ、お互いの為ですから」


奴隷を買うのに比べたらずいぶんと安い相場なんだぜ将軍様よ、わかってるかい?買い叩かれてるのにさ。


「それでは皆、預かっていきますよ」


馬車に乗せられた獣人達は期待半分、不安半分といった様子で馬車に揺られている。しかしフルプレートのヘルムからのぞく獣耳に気付いたのか幾人かが期待に目を輝かせ、俺の国に到着する頃にはその期待を確信に変えていた。


「さて、バレるまであと何回もつかな」


念のためダークエルフ達を暗躍させているが人間ばかりの国では彼女達は目立つため地下活動が主になってしまっている。しかしながらそれでもつぶさに情報ははいってきた。


「なになに、これが閣僚のリストか・・・どいつもこいつも軍人ばっかじゃねえか。官僚はどうしたんだ?まさか全員クビにしたのか・・・」


穀類の出来高も不作だったのかひどい有様だ。国民は全てで20万人以上いるのにこれっぽちの収入じゃ俺が送った小麦もほとんど都市部の連中が食っちまって残らないだろう。しかし農村部に送るにはちっとも足りない。


「さて、貰えるだけ獣人達を回収したら内乱でも起こさせるか。あれだけ不満だらけなら問題ないだろうし、なんてったって国民を小麦に変えちまってるもんな!」


まるで喜劇をみているような彼らの失策の連続に笑いながらも背筋に冷たい物を感じる。


(一歩間違えば俺もああなるって事だ、細心の注意を払わないとな・・・)


獣人達は食事と戸籍を受け取ると喜び勇んでさまざまな職業の訓練所に足を運ぶ。中でも軍学校が結構人気なのは不思議だが獣人は義理堅いから体で返そうとしているのかもしれないとタケクラたちも言っていた。しかし俺としては農民として、そして軍人としての人員が充実してきているので嬉しい話だ。

今は鍛冶に関しても熟練者が増え、鉄板製造だけならドワーフ達が手を加えなくても大丈夫なくらいだ。

月産30両のペースで車両が製造され、片手間に戻し通常稼動状態とはいえ大砲も月産10門を作りプレス機が完成すればそのスピードも自ずと高まるだろう。ただ事故が怖いのでドワーフ達にも安全重視で掛からせているのでそれも生産を圧迫している。


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