ブートキャンプ!その3
訓練には必ず成果が伴わなければならない。その点、俺はまず彼らに大砲の威力を見せた。そして彼ら全員に俺の強さの理由の一つである『武』を教え、手本を彼らの体に叩き込んだ。そして今回は最新式の装備を見せ、触らせる事で彼らにご褒美を与える。いささか強引だがこれだけやればある程度は向上心を持ってくれるだろうか。体力面に関してはさすがは獣人。一週間の後半には誰も吐かなくなったし愚痴も聞かなくなった。
「さて、これから諸君らの本当の剣となり槍となる武器、大砲の本当の姿だ。だが此処からは体ではなく頭を使うことになる!だが!諸君であれば切り抜けられると私は信じている!」
「「「「「応ッ!」」」」
「俺は心待ちにするぞ!諸君らにあのピカピカの新式砲と制服を授与する瞬間を!」
「「「「「応ッ!」」」」
「我等の祖国に仇なす愚者に正義の鉄槌を!鉄の暴風雨を届けるその瞬間を!想像するがいい、我が国民は君達を英雄と讃えるだろう。食い詰め者で、逃亡奴隷で、荒くれ者で、どうしようもないクズだった諸君をだ!私は知っているぞ!この武器を操る者を待ち受ける栄光を!それを得ずして諸君らはこの学び舎を去るか?」
「「「「「否ッ!」」」」
「たとえどんな苦難があろうとか?」
「「「「「応ッ!」」」」
「よろしい!それでは小隊を組み半数で別れろ!それぞれ交互に座学と演習を行う!」
「整列!敬礼ッ!」
ダークエルフの号令と共に彼らは整列し、敬礼を行う。鮮やかな陸軍の敬礼だ。そんな新兵を蹴飛ばす普段は物静かな彼女達も教官が板についてきたのか大声を出す事に慣れてきたようだ。
そして教官の熱意と兵士達の熱意がぶつかり合えば例えどのように教材が拙かろうと少しずつ、しかし確実に彼らは成長していく。一ヶ月掛かったが、彼らはちょうど政変で混乱している様子だったので好都合だ。いくらでも奴隷達は受け入れるし、大砲も順次生産中だ。砲兵がそだったら狼人族達の兵も鍛えなおしてやろう。ああ、楽しみでならない。
「諸君!今日、今まさにお前達・・・いや!今日ばかりは君達と呼ぼう!君達は全ての課程を修了した!だがこれが終わりではない、これは始まりなのだ!君達の輝かしい未来への!」
わずか一ヶ月ちょっとの訓練課程を終えた彼らは最早荒くれ者ではなく、一個の兵士として成長した。
国の為に戦い、死ねる兵士となった。若者の成長とはなんと素晴らしいのだろう。
制服を手渡すのがこれほど楽しいのはそれだけ苦楽を共にしたからだろうか。素晴らしい事だ。
「さて、砲兵が育った。素晴らしいこの事を皆にも分けてあげたいな」
「教官殿、それは名案であります!(俺らだけで終わるとかやってらんねえって)」
卒業生達が俺の意見に賛同してくれる。嬉しい事だ。
「まあ、此処はこれから軍学校として設立するつもりだから良いんだがね」
「おお!それは聡明な判断かと」
「ああ、落伍した兵士を再訓練する意味も兼ねているから設備はドンドン充実させていこう!」
「え?」
聡明などと言われてはむず痒いがここまで太鼓判を押されてはやらなくてはいけないな!
「だから、砲兵連隊やこれから創立する歩兵連隊から脱落者がでるだろ?そんな奴には再び勉強しなおす機会を与えてやらなければな」
(薮蛇だったかもしれない・・・)
制服を片手に引きつった笑顔を浮かべる兵士達を他所にヴォルカンは瞳を輝かせていた。そして、その月の内に軍学校に叩き込まれた獣人はなんと1000人に上った・・・。笑顔で屈強な獣人を反吐まみれにしていくトラウマレベルのヴォルカンの鍛錬と引き換えに彼らは驚くべきスピードで近代化して行くこととなる。そして獣人達の間で『悪い子は軍学校に入れるよ!』という母親の躾の文句が出来た事は言うまでもない。
現在の戦力。
砲兵連隊 構成員200名 装備 野砲『雷鳴』30門 並びに牽引車30台
追加兵員 観測手20名
歩兵大隊 構成員800名(200名は脱落) 装備長剣・槍及び歩兵砲『啄木鳥』10門
「旦那様、この歩兵砲というのは何なのですか?」
歩兵達の訓練をやりきり、流石に感じた疲労を癒すべく自宅に帰ってきた俺にアウロラが尋ねてくる。
「大砲にも種類があるんだ、野戦・・・平野とか草原で使う大砲がある、それは野の大砲と書いて野砲という。そして歩兵砲というのは文字通り歩兵が使う大砲だ」
「どういう違いがあるんですか?」
「大まかには違いは無いが・・・強いてあげれば重さだ。砲兵は魔導エンジンを搭載した馬車を使うが歩兵はそんなものは無かったり、あっても普通の馬車がまだまだ多い。それ故に威力を犠牲にしてでも軽量化して携行できるようにしたのさ。歩兵の移動用に魔導エンジン車が揃うまでの間に合わせと野砲が置けないくらい悪い地面で使える大砲として配備している」
歩兵砲『啄木鳥』は小銃を作ろうとして大失敗した代物で小型化の実験でできた産物である。小型化は出来たが口径が30ミリと小銃には程遠く、人力で牽引するのは難しい。ただ組み立て式による長砲身化により貫徹能力と低伸性による射程は1500メートルを超える。訓練により分30発を可能とした。




