ドラゴンの砲兵のお話
俺は一旦休憩を挟んだ後に獣人達の中から職にあぶれている次男・三男坊を集めて砲兵として教育することにした。人数は先ずは大砲30門を操作する人員とそれを運搬・設営する人員がいる。
「まずは牛獣人の中からヒマな奴を・・・と言いたいが農業バブル中だから彼らは無理だな」
農業もそうだが竜の癇癪玉を粗方処理し、またその方法を伝授したので狼獣人達の間では鉱山の開発が再開され、農業に人手不足が起こっている。獣人同士の諍いが終息したので集落側の農地にその他の獣人を割けるようになったのが幸いか。なかでも強力の牛・熊・ケンタウロス系の獣人は農地開発にうってつけだ。
「俺が介入して産業が健全化されたのは良かったがそれのせいで人材が・・・」
狐獣人はインテリが多いので薬学などを主に行っており、最近ではゲイズバー商会と接触して商業にも手を伸ばしているようだ。薬学という強みもあるので病院の建設も打診しておいた。
ただ狐獣人の薬師は老齢かつ偏屈な者が多いので他種族との交流は次代になるかもしれないが・・・。
「うう・・・エルフ達は諜報の仕事があるからな・・・困ったぞ・・・」
まさか人がこんなに居ないとは・・・。とりあえずタケクラを呼び出して狼獣人を訓練するか。
「タケクラ以下、黒号突撃隊200名参上だぜ大将」
「200?結構集まったな」
「ああ、それだけどこの集落でもはみ出し者がおおいってこった」
試射場に集まったのはタケクラが指揮する突撃隊。若者の不満解消と社会から漏れ出た連中を受け入れるためにタケクラに組織させた民間の警邏隊だ。ノウハウをダークエルフ達に学ばせ、要人警護に関してはなんとか形になってきている。ただ現在は要人は少ないし、諜報は全て彼女達と一部の狐獣人達でまかなえているのでほとんど警察の真似事をしている。
しかしながら元がはみ出し者なだけに信頼は薄いし、喧嘩っぱやく性格上問題を起こすことの方が多いので別の意味で抑止力になっている。誰だって喧嘩に介入されて乱闘騒ぎなんて嫌だろうしな。
しかしメンツは揃ったか、ここから何処まで着いて来れるかだが・・・まあ反骨心でなんとか気張ってもらおう。
「さて、いままで羅卒ごっこをしてお前達を遊ばせていたが・・・現在俺達の国は結構きな臭いことになっている」
「ザンナル帝国ってやつか?」
「耳が早いな、逃亡民もお前のとこに?」
「新参の奴は何処行っても最初は辛いんだろうぜ、そう言う奴の援助してたら何時の間にか・・・な」
頭を掻きながらタケクラやれやれといった様子。任侠の徒のような奴なので放っておけないんだろうな。まあ、実質狼獣人内のナンバー2だしコイツに頼る人が多いのは仕方ない事か。移民が増えたらタケクラみたいな奴が貴重になってくる。
「さて、話を戻すぞ。それに伴って俺達は軍備を整える必要に迫られた。向こう次第だが・・・戦争になるかもしれん」
「逃亡民を取り返しにくるのか?」
「いや、エルフ達の情報によると今期は主食の小麦が不作だそうだ。クチ減らしに開拓団を組織しているらしいが北は荒地で小麦の栽培には向かない。東西は全て土地が埋まっているし、街道や緩衝地帯に防御陣地も作らず開拓団を出しても荒らされるだけだし国境沿いの国に喧嘩を売ってるようなもんだ。それ故に彼らには南下するしかないが・・・南には我々がいるんだなこれが」
「近々鉢合わせするかな?」
「手間は掛かるがフィゼラー大森林を開拓できれば土地は広くなるし得られる土地も肥沃だ。魔物が強力だが軍が動けばそれも多少はマシだろう。なにより土地が広がり、農地になれば税も多くなる。彼らにとって起死回生の一手といってもいいんじゃないか?なにより食える麦が増えれば市民の不満も解消されるしな・・・と、小難しい話は終わりだ」
俺は整列して待つ突撃隊に向き直ってフランキ砲を叩いた。
「コイツを使ってお前達を軍隊に進化させる、各自使い方を学んでモノにしろ。だがその前に・・・お前達に組織的な行動が出来るように軍事教練を施すこととする。コレに関してはタケクラも参加だ」
「了解だぜ大将」
「先ずは全員を試射場周辺にキャンプさせろ、訓練が終わるまでは家に帰ることはゆるさん」
「さっそくだな、俺は構わんが」
中には不満そうな奴もいるがタケクラが了承したので皆もしぶしぶといった様子で了承する。
「次に役割分担の明確化及び小隊の組織だ、名簿に名前を書き、それから成績優秀者に各部隊の小隊長に任命する。そしてこれがお前達の使う玩具だ。訓練の前にデモンストレーションといこう」
俺はフランキ砲に装填し、タケクラの助力を借りて準備を完了させると砲の目の前に分厚い木の板を立てかけておく。
「発射!」
声を掛けた後に俺は発射機構に魔力を流す、するとフランキ砲は轟音を立てて砲弾を発射し目の前の分厚い木の板を粉砕した。
「いいか、お前達のこれからの仕事は我が祖国に仇名す愚か者に鉄の暴風雨をお見舞いすることだ。拒否する者は今すぐ此処から去れ!」
俺がそう声高に叫ぶが誰も此処から立ち去るものはおらず。全員が一歩前に進み自らが!と意欲を高めているようだった。
「よろしい!素晴らしい決意にまずは感謝を、だが!実際に砲を撃てるかはお前達が俺の訓練に耐えられるかどうかに掛かっているぞ!では一時解散、名簿に名前を書け!文字が分からないものには代筆も行うから必ず書けよ!」
「「「「「応ッ!」」」」
こうして突撃隊は解散し、此処からは砲兵連隊として再組織化することなった。