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大砲とドワーフ達

わずか二日ほどの短いバカンスを終えて俺はまずダークエルフ達を招集する。


「諸君、よく集まってくれた。今回、同胞と難民の受け入れによってわが国の国力は徐々に上がってきている」


俺の言葉に皆が嬉しそうに頷く。


「だが、今回、我が同胞は他国の貧民を引き連れて帰国した。たかが貧民、だが彼らとて元は立派な他国の民だ。彼らを搾取していた国は恐らく今回の一件でわが国の存在は知らずとも酷い違和感を感じたに違いない」

「貧民の逃亡に違和感ですか・・・?」

「そうだ、まあ夜逃げなんて珍しい事でもないし普通の国ならフィゼラー大森林に手ぶらで逃げ出すなんて自殺行為だ。たとえ獣人でもな、だがそんな自殺志願者が百を超え、千に届こうかといった時には流石にどんなバカだって違和感くらいは感じる」

「といいますと?」

「いくらその場に留まっても何時果てるとも知らぬ命とはいえ国を捨てて逃げるのはひとえに生きる為だ、前まではその大博打に出る奴が・・・まあ年数十人居れば多いほうじゃないか?少なくとも我が同胞はザンナル帝国で獣人の保護を訴え、それなりに成功していたからな。つまりだ、その同胞に縋って生きれば豊かとは言えずとも恙無く生きれるのに何故かフィゼラーに向かって逃げ出す、この意味が分かるか?」


そう言うと皆は漸くその事に気付いたのかなんでだろうと考え始める。帳簿だけ見てれば気付くのも遅くなるだろうが普通に考えて夜逃げなんて余程の事じゃなきゃしないし、国も許さない。だがフィゼラー大森林は危険度が高く、林業を生業とするサマルの職人ですら並の戦士よりも高い水準で戦闘できる事を求められるほどの危険度なのだ。ちなみにそれ故戦時徴用では樵と猟師が真っ先に徴兵される。


「そしておまけに今回は富裕層として成功していた筈の国民が同じくフィゼラー大森林のルートを通って逃げた。そうなると誰だっていずれこう考える・・・『手引きしている奴がいるんじゃないか?』とな」

「では我等に矛を向けると?」

「可能性は高い、もしも離脱した富裕層の同胞がわが国の国民であることがバレ、それが貧民や奴隷とは言えど他国の国民をそそのかして出奔させたと考えられればな」

「バレない可能性は?」

「楽観は毒だぞ、俺はその為に君達を集めた。ザンナル帝国との国境沿いの警戒を厳し、流れ込む難民はできるだけ此方に誘導しろ。遅かれ早かれどうせ揉め事になるからひとりでも多く国民をネコババさせてもらおうじゃないか」

「了解しました、もしもザンナル帝国と接触した場合は?」

「外交団なら此処までつれてきてくれ、向こうが紳士的な場合もある。だがもしも兵だった場合は直に報告してくれ、それでは解散」


ダークエルフ達はその言葉を聴くとすぐさま散り、行動に移してくれる。あー、この情報管理する部署も作らんといかんかな。そろそろお気楽な集落は難しくなってきた。そう思いつつ俺はゴンゾたち鍛冶師の元へと向かう。


「失礼するぞ」

「なんだ気持ち悪い・・・っとなんかヤバげな雰囲気だな」


俺の内心の焦りを察したのかゴンゾは真面目な表情になって仕事から離れて俺の所に来た。鍛冶場では人数が増えた事により弟子の育成も加速し、板金にする事くらいならドワーフ達の手を借りずとも可能になっていた。しかしながら未だに車両の開発や剣などといった複雑な加工には難があり要練習といったところか。


「今まではお前とも楽しい物ばかり作ってきたがそろそろ国としての責務を課さねばならなくなった」

「と言うと?」

「これからは兵器製造にも加わってもらう、機密事項も増えるからお前さん達をこの国から出す事も難しくなるだろう」

「・・・なるほどな、だが今更って奴だぜ。エルフもダークエルフも、そして獣人達も此処に居る奴は他に行き先なんてねえ、他のドワーフ達もな」

「そうか、愚問だったな」


彼らは皆この国を祖国とし、この国と共に滅びる覚悟があった。俺の瞳には彼らが遠い彼岸の彼方に旅立ったかつての戦友達の面影がダブって見えた。


「よろしい、ではこれよりわが国の脅威を打ち払う為の武器を生産してもらう」


俺の号令とともにドワーフ達は生産したプレス機と魔導金属、そして俺の知識を持ってこの時代には不釣合いな武器・兵器の生産に乗り出す。


「まず君達に作ってもらいたいのは遠い世界で戦場の花形となった兵器だ」

「それはなんだ?騎兵とか弓兵じゃないのか?」

「『大砲』だ、これがあればどんな要塞も時代遅れになる。そんな代物だ」


俺が参加した戦争でも大砲の有る無しでは大きな差が出た。そしてその大砲はいずれ車両に搭載され戦車として、自走砲として活躍の場を広げていく事になる。


「ソイツはすげえな、で大砲とやらはどういう代物なんだ?」

「すごくざっくり言うと鉄の砲弾を遠くまで飛ばして人や物にぶつける武器だ。投石器は知ってるか?それの発展型だ」

「なるほどな」


前装填式からはじめるのもいいが折角知識と高い耐久性がある魔導金属があるんだ。後装填式の開発から始めよう、まずはフランキ砲からかな。


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