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ドワーフ達とサスペンション

ダンパーの重要性を軽く見ていました。

再びエンゲンの鍛冶場町をめざしてえっちらおっちら。時間をかけた方がいいかと思い馬でうろうろする。夜になればドラゴンの姿に変身して洞穴でぐーすか寝ておく。そうすると獣達が寄ってくるので自然と温かくなるのだ。

ドラゴンの中でも別格の俺は命の根源。寝ているときは無害だと獣達も知っているらしいが肉食獣は俺のご飯なので肉食獣や魔物は寄ってこない。その為獣達は体から漏れ出すエネルギーを得て体を癒し、肉食獣や魔物から己の身を守るのだ。

目が覚めると目の前には鹿の魔物であるカーバンクルヤックルがいる。どうやら群れらしい。水晶のような美しい角が特徴で美術品の素材になるがお肉は残念ながら硬くて美味しくないそうだ。

角も生え変わりの時期になると勝手に落ちるので村の人達が拾って生活の糧にしたりしている。

性格は温和で生え変わりの時期になると人になれたカーバンクルヤックルは角を取ってくれとせがんでくるそうだ。屑野菜でも喜んで食べてくれるので一定の場所に撒いておいて人に馴れさせ、角を貰うというシステムを構築しておくと冬場に貴重な収入が得られるのだ。

大型の種類は騎乗することも可能で角の断面が柘榴石のように光ることからカーバンクルヤックルの名がついた。

温和だが群れの意識が強く、特に食料を与える者に仲間意識を持つので餌付けが非常に容易。しかし戦闘能力もそれなりな上、次の年から角ももらえなくなると踏んだり蹴ったりなので狩りの獲物としては全然向いていない。


『子供ばかりか、親はどうしたのかな?』


目を開けて洞窟の中を見ると中に居るのはメスと子供ばかりだ。カーバンクルヤックル達は起きた俺に少し驚いた様子だったが俺の機嫌が悪くない事が分かったのか慌てる事無く洞窟から出て行く。


「なるほど、こういうことか」


人間の姿に戻って外に出ると納得した。群れが多すぎただけだ。オス達は入り口を固める様に集まっており俺が出てくると群れの仲間を連れて移動し始める。フィゼラー大森林でもカーバンクルヤックルは沢山いたがこれほどの群れは見た事がない。そう思っていると彼らはそのまま俺の集落があるほうへと走っていく。なるほど、俺の集落の周辺は魔物たちが少なくなってきているからか。

直線的なスピードは遅いが足腰が強く悪路に強いのでカーバンクルヤックルは森や山に住む人間が好んで騎乗する。俺は偶然見られた大自然の流れにほっこりした気持ちになりつつ俺は再び鍛冶場町へと歩を進める。


「おーい、どうなってる?」


工房に顔を出すとドワーフとブンロク達があれこれと議論を交わしつつ酒盃を傾けている。どうやら休憩中らしいな。


「おー、資金提供者がご登場だぞ!座ってくれ、とりあえず駆けつけ一杯」


大きな樽を囲みながら喋るドワーフの一人がその樽に柄杓を突っ込んで新しいジョッキに酒を注いで出してくれる。


「・・・ぐぅ、ぷはぁ!美味い!」

「おーっ、いけるクチだね旦那」


ウィスキーのようなキツイ酒だがこの体になってからは気にせず飲めるのがありがたい。


「それでどうなった?」

「とりあえず俺達の板バネってのを基本に作って見たんだが困った事が起きてな」


そう言うとドワーフ達は試作の馬車を見せてくれる。車軸には俺が提案した金属を折りたたんで作ったバネが搭載されておりスタンダードな四輪馬車となっているが・・・。


「困った事ってなんだ?」

「揺れが酷いんだ、障害物を乗り越えたときは良いんだがその後に揺れがずっと続くんで乗り物酔い続出だ」


バネの硬度はさすが職人か、乗り上げたときの衝撃を殺す絶妙な硬さになっているらしい。だが今度はバネ自身の伸縮が車体に動揺を生んでしまい馬車にのる人間に容赦ない縦ゆれをプレゼントするらしい。


「あ、そうか・・・」


サスペンションには二種類のバネが必要なんだった。確かダンパーだったか、衝撃を殺すバネとバネの動揺を緩和するバネが必要なんだ。しかしあれは確か油圧とかだろ・・・この世界でそれは再現できるのか?


「そうだな・・・じゃあこれはどうだ?」


板バネを使って今度はボギー転輪をより簡素化したものをやってみる。二つの車輪を板を重ねたバネで平行になるように変更する。ダンパーを省略するのでサスペンションとは言いがたいがその分技術的な敷居は低くなる。


「一つの取り付け口から二つのハンドを伸ばして車輪をくっつけるのか・・・確かにこれなら簡単だ」

「バネも板なら動揺も少ないだろうか?とりあえず試作品をつくってみよう」


そう言うと彼らは休憩を切り上げて俺の指示したとおりに部品を作り始める。強度は二の次でとりあえず鋳型に鉄を流し込んで部品を作り試作品を組み上げる事になった。



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