紙とブンロク達と
テルミットの仕事を監督しつつ久々にリットリオの首都でだらだらする。色町の活気も前のような殺伐とした感じではなく普通な感じになっている。
何回か引っ張り込まれそうになったが妻ができたと言う事で勘弁してもらう。俺がそういったのが珍しいのか奥さんの顔を立てる亭主と言う事で意外と評価が良かった。
上納金の話も出てきたのでゲイズバー商会に頼んで窓口を作ってもらい、公正な判断で運用できるように医療基金を設立することにする。色町はどうあっても病気とは縁が切れないし、暴力沙汰や純粋に疲労からくる病気や怪我もある。治安はいいがそれでも時折勘違いした野郎が出てくるので守衛も必要になる。
騎士団に相談すると騎士団の中から何人かが巡回してくれる事になった、どうにもマフィアが居なくなってから納税をきちんと指導したところバカにできない額が動いているとのこと。
ここらへんは治安が良くなって自由に商売が出来るようになった為全体の質が底上げされたからだろう。これに関しては一般の商家も同じだ。
そんな感じで二・三日だらだらしてから集落へと帰ることにした。
「あ、旦那様お帰りなさい」
アウロラが出迎えてくれたので抱きついて頭を撫でると嬉しそうな顔してくれる。うーむ、嬉しいがなんというか初々しさが無くなったな。一番回数を重ねているから仕方ないのかもしれないが。
「そういえば紙はどうなったかな」
アウロラに尋ねると彼らは順調に作業を続けているとの事。エルフやダークエルフ達の中で街の生活に慣れていて狩りに同行できない連中に仕事が割り当てられるので皆喜んでいるとのこと。
基本エルフ達は長命な割りに勤勉だからなぁ。コボルト達もそうだ。
「さて、そろそろ乾いてきたんじゃないか・・・てあれ?」
どういうこったい。完成した紙が大量に出来上がっているではないか。うず高く積まれた和紙の束が箱詰めされている。手工業というにはちょっと語弊がある生産量ですがこれ。
「あ、王様、どうでしょうか!我等の会心の出来栄えです!」
一枚取り出してエルフが俺に手渡してくれる。おお、古き良き和紙の味わい、チョイと茶色がかっているがこれも皮をちょいと加工すれば直ぐに白くなるので無問題だし味といえなくも無い。
問題は量だ。サイズは大体B4サイズだったがそれが木箱にどんどんと詰められていっている。
「俺の知る限りではもっと時間が掛かるはずだったが・・・」
「はい、ですが風の魔法で上から押しつぶすようにすればその日の内に完成しました。最初はヨレヨレになりましたがそれも加減でどうにでもなるレベルでしたよ」
彼女達は思った以上に有能でした。とんでもないな・・・。
「よし、とりあえずコレもこの集落での産業にしようか。パピルスはどうなった?」
「はい、此方はちょっと時間がかかりますので木の皮の紙より時間が掛かりますが幾つか完成しました」
そう言うとパピルス紙を渡してくれる。うん、たしかにこれなら紙としての使用にも耐えるだろう。
さて、そうなると今度は販路の開拓か。まあアランの所に行けば何とかなるだろうが問題はサマルのほうだな。魔導金属の件もあるし片方ばかりに流してはえこひいきしてるみたいで嫌だし・・・。
「とりあえず親父と孤児院に箱で送って後は良い様にしてもらおうかな」
親父はともかくヴァルターは画家としての才能がある。紙が沢山あったら喜ぶんじゃなかろうか。
仮にいらなくても売りに出せばそれなりのお金になるだろう。そうなると頻繁にサマルと此処を行き来するわけだが・・・動力付きの馬車の開発を急いでもらおう。
「とりあえず木箱一つをサマル王国のアダムスター領領主、ガランド・アダムスター辺境伯へ、残りを先ずはリットリオの孤児院へ届けるようゲイズバー商会へ頼んでくれるか?」
「了解しました、では早速始めますね」
そう言うと彼女達はいそいそと箱詰めした和紙を馬車へと載せていく。この馬車はゲイズバー商会が交易用に用意してくれたものなのでコレに事情説明付きで伝えると配達も行ってくれる。
俺はこの木箱にあて先と代金を挟んで置く。そしてこの紙について商談があれば俺に連絡をつけるようにも書き記しておく。利に聡いアランならこの文面と試供品を手渡せば必ず何かしかのリアクションを取ってくれるはずだ。生産量も沢山あるので輸出にも耐えるだろう。木材の廃材から作れるので材料にも困らない。和紙は材質的にも強く痛みにくいので工芸品として加工して売るのもいいかもな。
「後はブンロク達のところへ行くか」
数日だけとはいえ日数が経っているのだから成果があるだろう。最悪紙面上の進展だったとしても構わないしな。そう思いつつ俺は再びブンロク達のいる鍛冶場町まで足を運んだ。




