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闘技場

飲食店のおっさんにお礼を言って闘技場を目指すとその先はさらに多数の人だかりで辟易する。しかしお目当ての闘技場だ。此処で名前を売らなければ弟子は集まらない。

入り口に流されるままやって来ると受付のお嬢さんが営業スマイルで受け付けてくれる。


「ようこそリットリオ一の闘技場グルカリオスへ、賭けは銀貨一枚からとなっておりますよ。」


「選手として登録したいんだがどうすればいい?」


「失礼しました、選手として登録されるとなりますと前金の金貨5枚が義務となります。」


「なぜ? 賭けのコマが増えるのは悪くないことだろ?」


「賭けになるには面白い試合が出来る強い方が必要なのです。」


嫌な言い方だが賭けにならない勝負やつまらない勝負をして欲しくないらしい。

選手の質を保つための保険だろうか。


「わかった。 それじゃあ、これを担保にするのはどうだ?」


俺はそう言うとポケットからドラゴンの牙、数日前に生え変わりで抜けた牙を見せる。


「これは・・・!」


「ドラゴンの牙だ。」


「・・・わかりました、武器は何を?」


「なんでも使えるが・・・素手で挑戦する。」


「わかりました・・・、責任は持ちませんよ?」


受付嬢がOKしてくれたので俺は笑顔で頷くと案内人に先導されて控え室に向かった。人の多い闘技場にはローマのコロッセオのようになっており選手が地下から飛び出せるようになっている。


控え室は薄暗いが戦士達の熱気で満ちており相手の血が見たくてたまらないといった感じだ。そんな中に少しばかり身なりのいい俺が入ると視線が幾つか集まってくる。その中で一番近場にいた一人の男がこっちに笑顔で近づいてくる。


「よお、新入り。シャバに居られなくなって来たのか?」


「ちょっとしたお遊びでね。でもここはとてもいい場所だよ、禿げたゴリラとお話できるからな。」


バカにしたような口調の男にそう返してやるとたちどころに機嫌が悪くなったようだ。


「口の利き方に気をつけろよ、俺は気が短いんだぜ。」


「胸を叩きたくなったなら外に行って観客に見せてやれよ子供がよろこぶぜ。」


「てめえ!」


男が激高したところでタイミングよく角笛が鳴り響いた。


『皆様お待たせしました!これより選手の入場です!』


「チッ! 命拾いしたな。」


男が舌打ちをして視線を入り口に向けた。俺もそれに倣って入り口に視線を向けると甲冑姿の衛兵が俺達に整列するように告げた。


「これよりお前達に観客がベットしてくださる!ベットの低い連中は試合にすら出られないから心してかかれ!」


どうやら今回の試合は生き残りのデスマッチらしい。観客は最初に一列に並んだ俺達を見て金を賭ける。そして生き残った順番を当てると配当金が出るらしい。

その中でベットが極端に低いやつはブーイングを浴びて退場となる。そして兵士に一人ずつ番号札を掛けられ一人ずつ闘技場入りする。


『さあ、今日の選手達は活きがいいぞおお!』


パフォーマンスをしながら自分の強さをアピールする中俺は黙って腕を組んでいる。目立たないかもしれないがそんなことはどうだっていい。初見の選手がアピールしたところでどれだけの効果があるかわかったものでもない。


「どうした新入り、ブルッちまったのか?」


「親切なゴリラだな、生憎と俺は負ける気がしない。」


先ほどの男が性懲りもなく絡んできたので軽くあしらっておく。しつこいゴリラだ、密林に帰れ。


『それでは皆さん、ベットをお願いします!』


司会者の言葉を受けて皆が席に備え付けられたボタンを押して賭けを行う。無駄に凄い機能だな

賭けが始まり皆が思い思いの戦士へとベットしていく。一番人気は意外なことに俺の隣にいるゴリラだ。


「俺にもっと賭けろ!稼がせてやるぜ!」


熱狂をさらに煽るようにゴリラが胸を叩いてアピールする。

対する俺のベットは・・・新人ってこともあるのかそれほど伸びていないが8番人気だ。


「ゴリラが一番なんて皆優しいんだな。」


「吠えるなルーキー、お前は俺が最初に潰してやるからな。」


「ぞっとするぜ、ゴリラが。」


人気の順位で俺に勝っているのが嬉しいのかゴリラがしつこく絡んでくる。


うざいゴリラを尻目に順位を見てみると一位がゴリラ。

名前は『斧使いのベリンゲイ』。


やっぱしゴリラか。


二位が『つむじ風のバサラ』

三位が『熱剣のクワラン』

四位が『疾風のカンラ』

二位と四位が若干被ってないか?


五位『疾風のローランド』


完全に被った! やばくないか?!


六位『炎のクラウン』

七位『光のグロウ』

八位『ルーキーヴァルカン』

新人はルーキーが二つ名になるのか。


九位『ビーストテイマー』

テイマー? コイツだけ二つ名だけの紹介だな。人気の低さはそのせいだろうか?


十位『オカマラス・ヒューイ』


最後の最後にとんでもないイロモノが出てきやがった。しかも・・・ゴリラの隣のヤツか?

ムキムキの体に褐色の肌。化粧がしてあるのか肌はキメ細かい。肌だけなら女性だ。


しかしそれ以上にコイツ・・・。


尋常じゃない使い手だ。 足運びと拳の傷が鍛錬を重ねていることを物語っている。



『それでは皆様!ベットを締め切らせていただきます!』


10位までのベットが完了したのか司会者が賭けを締め切る。それと同時に選ばれなかった何名かが肩を落として控え室に戻っていった。そんな彼らの背中には哀愁がただよっている。


「んふっ、品定めはおわったのかしら。」


ぎょっとして視線を移すとゴリラがいつの間にかオカマのヒューイに変わっている。


「よせよ、男の品定めなんて趣味じゃないぜ。」


「あら、失礼ね、私心は乙女よ。」


筋密度でゴリラを上回るオカマに言われても説得力がない。身長は大差ないが筋肉量では勝てないだろう。


「ところでアナタ、よかったら取引しない?」


「彼氏候補なら他所を当たってくれ。」


「ちがうわ!すごくタイプだけど!」


いやーん、いっちゃったわ!とくねくねするオカマに辟易しつつ俺は取引に話を戻す。


「取引ってなんだ?」


「ここってね、20分の制限時間があるのよ。それで生き残った選手にはそれだけファイトマネーが提供されるワケ、だから私との一騎打ちになったらなるたけ

時間を稼いで私も生き残れるようにしてほしいのよ。」


「なるほどな、人気の低い闘士はそれで食い扶持を稼ぐわけか。」


このオカマ思った以上に喰えないヤツらしい。

しかし初日から敵ばかり作ってもよろしくないのでオカマの提案に乗ることにする。


「なら簡単に決めとく。俺は出来るだけお前を攻撃しないが誤魔化しのために何度かお前を踏み台にするがいいか?」


「いいわよ、そのかわり踏むときは声を掛けてねん。」


クレバーなオカマは了承してくれたのかウィンクを一つ飛ばして元の場所に戻っていった。歩法などを再度確認したがやはり只者ではない。体重は明らかに重量級にも関わらず足取りが軽いのだ。


「おもったより面白くなりそうだな。」


俺は誰に言うでもなく呟く。


賭けが終了すると後は闘士たちの時間だ。 俺達はそれぞれの順位に合わせた位置に移動する。


闘技場の円の外周上に数字が刻んであり、壁際に闘士たちは並ぶ。 試合開始の合図は闘技場の屋根につけられた鐘が知らせてくれる。


『それでは熱い戦いの始まりです!』


司会者の言葉が早いか鐘が戦いの場にそぐわない綺麗な音を立てる。それと同時に数人の闘士が中央に走り、遅れて俺や他の闘士たちも中央目掛けて走り出した。

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