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オットー達の事情その2

二人がそれから昔話に花を咲かせていると不意にアリーナの視線が一点に釘付けになった。


「アリーナ?」

「ね、姉さん・・・?」


そんなバカな、そう言い掛けてオットーが視線を動かすと彼女の目線の先には淡い緑色の髪をした少女が買い物帰りか袋を提げて歩いていた。


「彼女がどうかしたのか?」

「あの子、とっても姉さんに似てたの・・・」


そう言うとアリーナは今にも声を掛けようかと考えているようだった。オットーはその言葉を受けてアリーナと少女を見比べてみる。髪色は淡い緑色とこの世界でも一風変わった色でこれは風の魔法の強い適性を持つ者に稀に現れる物で髪色に限っては胎内で母親の影響を受けるため遺伝しやすく時には色だけが受け継がれていくなんて事もある。しかし髪色だけなら全く居ないワケではないのでそこまでは珍しくは無いのだが・・・。


「うーん、言われてみれば確かに・・・」


愛妻家のオットーは見飽きるのではないかと言うほど妻の顔を見ているので特徴なども捉えている。

その特徴を比べてみるとどうにもそっくりである。


「しかし似過ぎている気が・・・それに父親の面影が無いというのは可笑しいじゃないか?他人の空似ということもあるし、なにより子供は皆可愛いからキミに似るのも可笑しくないさ」

「まあ、貴方ったら」


惚気ながら話をするも嬉しそうな笑顔を浮かべつつもアリーナは少女が気になる様子だった。何年も前に別れた肉親の子供かもしれないというのだから仕方ないのかもしれないが・・・。

オットーは体の弱い妻をその後も気遣いながら観光名所を巡ってみたがあれ以降アリーナの興味は全て先ほどの少女に注がれているようだった。


「オットー、やっぱりあの子のこと・・・」


宿屋で休む彼女を抱き寄せながらオットーはアリーナに何度目か分からない提案を受けていた。


「気になるのは分かるが・・・」


実のところ彼も気になって少女の事を調べさせていた。緑の髪の少女と言うのはそれなりに珍しかったので情報は直ぐに集まったが一つだけ不穏な情報が混じっていた。

それは彼女が『孤児』ということだった。もちろんオットーが孤児や浮浪児に対して酷い偏見があるワケではない。もしも彼女がアリーナの姪であった場合彼女の両親は死んでいる事になる。

マフィアがらみで音信不通になっているとしても騎士団が行方不明者の捜索も行っているので彼らの情報網に引っかかっていないのは可笑しい。見捨てたにしろ、殺されてしまったにしろとてもじゃないが聞いていて気分のいいものではない。それゆえにオットーは彼女に伝えるべきか悩んでいたのだ。


「孤児なんでしょうね・・・彼女」

「なんでそう思うんだ?」

「だって姉さんの居るのはアンダカ村っていう小さな村だったの・・・マフィアが小さな村を隠れ蓑にして人を売り買いしてるって話が出た時に調べてもらったんだけどね、そこの村は無くなっていたの・・・皆逃げたか殺されたか・・・って」


アンダカ村は辺鄙な場所にある村で農業と狩猟で生計を立てる人が大半だったがそれ故に首都からの距離の割りに監視が緩くマフィア達が基地代わりに使っていたのだ。

騎士団は影でダークエルフの援助を受けて急襲したが村の跡地には村民は一人も居なくなっており、建物の地下からは多数の人骨が埋められていた。村民の大人の総数に近い数が埋まっていた。あまりの非道ぶりに騎士団も思わず言葉を失うレベルであったが子供達の大半は首都に集められておりヴォルカンの孤児院に集まり、纏めて面倒をみられていた。


「姉さんが子供を売り買いすることを見過ごすはずが無いもの・・・」

「そうか・・・そこまで知っているなら俺から反対する理由はないな・・・いいさ、引き取ろう」

「オットー・・・」

「ただ、此処の孤児院は子供達もとても活き活きしている。本人の意思を尊重するがいいかい?」


リットリオの首都にある孤児院は噂になっており、潤沢な資金を元手に多人数の子供の面倒を見ていることと孤児達に教育を施す為の計画を立てているなど界隈の孤児院よりも先進的なシステムを取り入れていた。それ故に下手をすると家庭教師に困るこらいの田舎領主の元で育てるよりも首都の孤児院で育ててもらったほうが豊かに生活できるのではとも考えていた。


(ただ・・・やはり家族の元に居させてやりたいのも事実か・・・)


オットーは祖父や父が家族の大切さを説くことが多かったため彼も家族の大切さを知っているつもりだった。



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