リットリオ
俺は今リットリオの国境にいる。 そして俺は到着早々大失敗をしてしまった。
「なあアンタみたんだろ! ドラゴン様を!」
「いや、俺は・・・。」
「隠すと為になんねえぞ!」
龍に変身して国境付近までの陸路をショートカットしたのだが着陸して人間に戻った時、この付近に飛んでくるのを目敏く見つけた連中が俺を第一発見者として取り囲んでいるのだ。
皆して鼻息が荒い。な、なんでこんなに・・・。
「いや、バーっと光ったのを見ただけなんだ。」
「光った?」
これは事実。ドラゴンから人間に戻るときは急激に小さくなるせいか淡い光を放つ。これ自分もまぶしいんだよ。
「そんで、ここにはもうドラゴン様はいない。わかったか?」
滅多なこと言うと袋叩きにされそうなので俺もお手上げと皆に伝える。
っていうかこいつら俺から何を聞こうというんだ。
「なんだ・・・今回もハズレかー。」
一人がそう言うと皆はぞろぞろと俺から離れていった。
「そういえば・・・ちょっといいか?」
「ん、なんだい?」
「フィゼラー大森林で目撃される事が多かったから、其処で張れば確率が少しはあがるんじゃないのか?」
追っかけらしい人物の一人にそう尋ねると一人は目を見開いた。
「それ何処情報? 嘘じゃないよな?」
「えっと、知らないか?鉄砲水があった時の話だが・・・アダムスター領ではそれなりに有名な話だぞ?」
くい気味に聞いてくるので若干引きながら尋ねると追っかけは興味深そうに古布に該当情報を書き込んでいた。
「将来また開拓とかであそこが話題になると思うからその話も含めて言いふらしてくれると助かる」
「なるへそ、そういうことね。いいわ、真偽の確認が取れ次第言いふらしてあげる。」
「君はここら辺じゃ顔なのか?」
そう尋ねると彼女はフードと顔を隠していたスカーフを外して素顔を見せてくれた。
「私はリタ。平民だから姓はないわ」
「俺はヴォル、姓は・・・まあ次の機会に話そうか」
「ワケアリってわけね。 オーケー、情報を早速調べるね」
握手を交わして自己紹介を済ませるとリタは足早にその場を立ち去り、付近にはドラゴンがまた現われないかと淡い希望を抱いている信者っぽい連中ばかりだ。
此処にいてもいいことはないと思うので早々に入国手続きを行うことにした。
「ふぃー、やっぱ大都市って感じだな。」
陸路を馬車に揺られること三週間。
リットリオ公国一番の都市、ベリスに到着した。
件の闘技場は此処にあるらしい。 都市の観光名所にもなっているので観光客や職業で入る人などたくさんの人でごった返している。
「人が多いといいことばかりじゃないな。」
最初は活気に溢れていて年甲斐もなくワクワクしたがそれもほんの1、2時間。以降は人の多さに眼が回りそうだ。
時折屋台の食べ物に手を出しては見るが値段の割りになんとなく好みに合わない。 しょっぱいんだこれが。
苦い顔をして屋台のくし焼きを食べていると飲食店のおじさんに笑われてしまった。
聞くところによると屋台で食い物を買うのは旅行者がほとんどなので余り物を売りつけられるそうだ。しかもそれは大抵失敗作なので美味しくないとのこと。
勧められるままに同じものを注文すると店の串焼きは値段が同じにも関わらず美味しかった。畜生。




