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ルンゲンへ

しかし、とゴンゾは考えこむ。


「面白いんだがいかんせん俺だけじゃ人手不足だ」


凄く名残惜しそうにしているがゴンゾの視線を辿るとゲイズバー商会に卸す為の魔導金属をストックしておく場所が空いている。俺が予めブレスを吹き込んでおく事で炉に火を点して置く事はできるがそこから精錬や金属を板状に加工する必要があるためゴンゾがその作業から離れられないのだ。


「そうなるとどうする?暇な鍛冶屋を雇うか?」

「そうさな、ドワーフの連中に声を掛けるのがいいだろうが・・・ドワーフは大抵店を構えてるからな」


そう思いつつ考え込んでいたゴンゾだったがふと手を叩き、自分が持ち出してきた荷物から一通の手紙を取り出してきた。羊皮紙には工房のマークらしい焼印が押されており封をしてあったであろう蝋の封印もついている。


「ん?そのマーク・・・」

「なんだ?」


マークは何を見間違おうか、現代人には一目で分かるマークが描かれていた。歯車のマークだ。それも三つほどがかみ合って動いているであろうマークである。


「いや、どっかで見た事あるなとおもってな」

「そうか?コイツは変わり者でな、なんでも『カラクリ』を作るとかなんとか・・・」

「カラクリだと?!」

「なんだ知ってるのか?」


思わず大声を出してしまった。カラクリを作るなんて言うには日本の匂いが隠しきれない。狐人族や狼人族達の国も和のテイストが感じ取れていたが此処まで露骨になると俺以外の転生者、それも記憶か情報を持っている人間がいるようだ。


「一応はな、なんでもその焼印のマークの部品を組み合わせて物を作るんだろ?」

「ああ、良く知ってるな・・・まあドラゴン様だから当然か?」

「ま、そんなところさ、それじゃ小難しいとこはソイツに任せたほうがよさそうだ、ソイツはどこにいるんだ?」

「ちょっと待て・・・、よし、これでいいだろ一応紹介状を書くぞ。確か、リットリオの国境沿いにあるルンゲンに居るはずだ。ヤツの名はブンロクというんだが変わり者でな、見た事ない文字で謎かけをしてくるらしいから気をつけろよ」


そう言うとゴンゾは新しい羊皮紙に自身の焼印を押して手紙を認めると俺に手渡して言う。


「見た事ない文字?」

「ああ、ヤツ曰く『これはカラクリのように文字の部分部分に意味がある』んだそうだ」

「なるほど、気をつけてみよう」


俺は紹介状を受け取り、外に出るとドラゴンに変身してリットリオの国境沿いの街ルンゲンへと向かう。




リットリオ最東部の都市、ルンゲン。陸路の貿易路を持つリットリオでも裕福な都市。陸路での貿易路の出入り口になっているので多数の人で賑わい、商人から旅人まで多数の人間が一度此処で旅に必要な物資を買い集めたり商売をしていく。そのため市場の規模はでかく、宿場町やホテルなどが多数ひしめいている。そして首都に負けない歓楽街も。

首都と違う所は外国の人間が多いからかルールに厳しく、罪状も罰金刑が多数を占めている。そして此処に所属する騎士達は石頭で有名らしく高潔が過ぎて偏屈者で有名らしい。

それゆえマフィアや犯罪者が現れる事は滅多になく、商人たちや旅行者には安心できる街となっている。


「活気はあるが、ちょいと息苦しいな」


街に入る際に兵士から手渡された旅行客用のパンフレットには禁止されている行為が事細かに書かれており、日没後は市民以外大通り以外を通る事は禁止されている。そして大通りには重武装の騎士や馬に乗った騎士が巡回している。この厳しい管理が此処の治安の良さを物語っている。


「此処がブンロクがいる街か・・・そういやブンロクがいる場所ってどこだ」


飛び出してきてしまったがそういえば場所を聞いてなかった。困ったぞ。見ず知らずの土地で場所も分からず人探しとは自業自得とはいえなんとも難儀な話だ。仕方ないので地道に騎士さん達に聞いてみることに。


「ちょいと人を探しているんだが・・・」

「誰でしょうか?」

「ブンロクという男なんだが」


そう言うと騎士さんは顎に手を当ててしばし考えると思い出した様に手を叩いた。


「ああ、職人市場の・・・」

「知ってるのか?」

「税金が滞納がちでブラックリストに載ってるからね、お宅はどういった用事で?」

「仕事仲間が仕事に必要だから呼んでくれって言っててな、儲かってないなら連れてこうと思って」


そう言うと騎士さんは納得したようだ。しかし税金滞納って・・・変わり者が完全に祟ってるんじゃ。

案内を受けて職人市場に来ると其処には分かる人には分かる物、道具などが所狭しと並べられ露店や店舗がひしめいていた。そんな男くさい場所で時折聞こえる子供達の声が治安の良さと活気に花を添えている。


「コラーッ!このクソガキがぁ!」


悪戯小僧もどこにでも居る様子。俺がそっと避けてやると元気に走り去っていく。そして振り返ると声の主を煽るようにバカにして飛び跳ねている。


「やーい、やーい!そんなボロボロ誰も買うもんかー」

「ガラクタ売るならゴミ捨て場にいったらー?」

「なんじゃとこのクソガキぃ!!!」


声の主はどうやら曲がり角の店に居るらしい。

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