序章
PM.9:00
ざわざわと、仕事終わりの男達でその酒場は賑わっていた。
「おい、知ってるか?」
「あ?何だよ」
「なんでも、西の町で妖精が出たらしいぜ」
「はっ妖精?そんなもん、お伽話だろ」
「よせよせ、ガキじゃねぇんだから」
そして、軽く手を振りながら新たな酒を煽る。
喧騒はやかましく、お伽話の様な話は男達の笑い声に流されて消えてしまう。
そこで、カランカランという音が鳴り響き、その場に居た者達のほとんどが、新たな飲み仲間を求めて入り口に注目した。
「「「へ?」」」
「あん?」
そこには、求めていた飲み仲間は居らず、まだ五歳にも満たない子供が佇んでいた。
「おいおい。坊主どこの子だ?」
この時間、この場所に居る事が明らかにおかしい子供に一人の男が近づく。
大分、酔っていたがそれ位の理性は残っていた。
「あはっ」
男が子供に伸ばした右腕が一瞬で、消えた。
「へ?」
「あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは」
子供の笑い声が、響き次には男の左腕が消える。
「へ?」
赤い、赤い鮮血が飛び散るのを、男達は呆然として眺めていた。
「あはははははははははははははははは」
その日、一つの酒場に集まる男達が行方不明になった
男達の足取り、行方はようとして知れない。