3.ギルドの登録
歩いて行くとすぐに王都の門が見えてきた。
街全体を壁が囲み、大きな扉が街の入り口としてある。門の前には門番の兵士が立っており、街に入るための検査を行っていた。
「通行証は持っていますか?」
「持っていません」
「冒険者か何かですか?」
冒険者になるために、ギルドに入るためにきたので間違いではない。正直に答えた。
「冒険者…ギルドに入るためにきました。入れませんか?」
「少し待ってください。今から通行証を発行します」
そう兵士は告げると大きい門とは別にある、隣の小さい扉から中には入っていった。
一時が立つと、中には入っていった兵士が戻ってきた。
「こちらが通行証になります」
兵士の手から紙を一枚もらった。
手書きになっているがしっかりと王国の判子が押されている。
「こちらの通行証ですが1度きりの通行証になります。ですので、冒険者になるためにきたのならばギルドに入ってもらい、ギルドカードを発行してください。ギルドカードは通行証の代わりになりますので」
兵士はそう告げると小さい扉をもう1度開けて俺が通るように促した。俺は素直に通る。
通るのを確認した兵士はそのまま扉を閉めた。
無愛想な兵士だ…と俺は思った。
街に入るとさすがにヴァルマスの王都。とても賑わいを見せていた。
祭りは行われてはいないのだが、街の道には人が溢れかえっており、不自由のない活気のある街だということが一目でわかる。
貴族や平民、そして冒険者など。たくさん、人たちが歩いていた。
皆、平等。ここだけ見るとそう見えた。
「さてとっ」
俺は早速だが、ギルドに向かうことにした。
兵士が言っていた通りまずは通行証と身分証明書になるものが必要である。どこにあるのかわからないため、街をあちこち歩き始めた。
防具屋、武器屋、道具屋。それぞれの店を確認。
どこに何があるのか頭で整理をしていく。
そして、目当てのギルドが見つかった。
ギルドは真新しいような建物であり、ドラゴンに剣を突き刺したようなロゴが看板として立てられている。丁寧に下に小さくギルドと書かれていることが何とも滑稽だった。
遠慮なく、ギルドに入っていく。
ギルドの中には冒険者であふれていた。剣を持つもの、弓を持つもの、様々な武器を持っており、またパーティーを組んでるようで基本的に4人で集まっている。
俺は迷いもなく受付にいく。受付は扉の真正面に位置しており、女性が一人立っていた。
「すみません。ギルド登録をお願いしたいのですが?」
受付に立っていた女性にギルド登録のお願いをする。
長い黒髪にキリッとした目、上から覗かせるような鋭い目線を女性はしていた。女性は名札をつけてありユイというらしい。
「ギルド登録?舐めているの?そんなヒヨッコイ体で何ができるの?帰りなさい」
いきなり結衣という女性は重かった。
グサグサと俺のガラスの心を貫く。初対面あるのに言葉がきつかった。
「すみませ〜ん、ごめんなさ〜い」
心が傷つき、固まっている所に受付の後ろの扉からもう一人女性が出てきた。紙を短めにきり、ショートヘアーであり笑顔がとても可愛らしい女性である。名札はもちろんつけており、名前はエミと書かれていた。
「もう〜だめだよユイ〜‼︎‼︎あれほどきつい言葉はダメだと言ったのなんで守ってくれないの〜!!」
「すみません…」
エミが大きく頬を膨らませて怒ったようにするのだが俺から見えれば可愛らしいとしか言えない。一方ユイは一切の反省の色を見せてはないが素直に謝っていた。このコンビは一体どんな組み合わせなんだと言えるほど不自然だらけだった。
「もう〜しょうがないな〜。ここは私がやっておくからユイちゃんは奥で資料の整理をしておいて」
「わかりました」
ユイが奥に行き、エミがこちらに笑顔見せた。
「ごめんなさい。まだ、新人さんなんで許してください」
丁寧に頭を下げられてどう判断したら良いのか、わからなかったが素直に大丈夫だよと伝えた。
「そうですか。ありがとうございます。こちらからは指導しておきます。それで…ご用件はなんでしょうか?」
「ギルドの登録に」
「ギルドの登録ですね。少々お待ちください」
エミは素早く机の下に潜り、1枚の紙と水晶を取り出した。
何に使うのだろうか?
「それでは登録はいります。まずは紙に必要な情報を書いてください。名前と年齢、またスキルの属性です。そのまま、ギルドの証明書として登録されますので間違いのないようにお願いします。また、属性の判断はこの水晶で測りますので手をかざしてください」
俺は素早く自分の名前を書き込む。
イズミ シンヤ。20歳。この世界では基本カタカナの名前が多いためカタカナで書いた。そして俺は重要なことに気づく。
スキルの属性…。
それは登録は難しいものだった。闇属性だとわかられる可能性があるのだ。
「あの…属性の判断はどのように結果が出るのですか?」
俺は水晶がどのように表すのか気になるように聞いた。ここで疑われたどうしようもない。エミはそんな俺に対して何も疑りもなく丁寧に教えてくれた。
「この水晶は手を当てるだけで主に主流になるとされる属性の色が出てきます。火なら赤、水なら青など簡単にわかります。また、混合することもあり2種類以上をお持ちの方は混ざりあった色が出てくることになります。なお、そういう方は稀でありますが…」
エミの説明を聞いてなお、俺の表情は厳しくなった。2種類の属性。これは俺は多分ありえてしまう。
闇の魔法で黒は確定。そして俺には勇者の称号を持っているために光の魔法があってもおかしくないのだ。それだけではない、勇者は全属性を備えていてもおかしくなかった。困ったもんだ。
「どうしました?手をかざしてください」
俺に手をかざすようにエミは水晶を俺に近づけてきた。
判断に迷ってしまった。
ここでばれてもいいがそれはそれで面倒だが必ずギルドは俺にとって必要なことなんだ。本当は登録したい…しかし、どうするべきか…。
そんな風に迷っているとエミは水晶を怖がっていると勘違いをしたのか俺の手をとった。
「んっ?」
俺はそんなエミの心情をわかることはなく、何故そんな行動をとったのかわからなくなる。それが命取りになる。
「怖くありません。さっさとつけましょう」
エミは俺の手を思いっきり引っ張り、限界まで近づけていた水晶に手を当てた。やばい。そう思ったのも束の間、水晶は明るく輝き始めた。
エミは突然の水晶の輝きにびっくりする。こういうのことは本当は起こらないイレギュラーだということはエミの表情をみるとわかった。
水晶の輝きが弱くなっていく。それをみたエミは興味深々で水晶を覗き込む。
俺はエミの体によって水晶が見えず、若干困っていた。
エミが水晶から顔を上げる。顔を上げたかと思うと水晶を手に持ち、俺の手を握った。
「ちょっと、ついてきて」
急にそう言われたがこれはしょうがないなことなのだと諦めてついていく。手を握られてからそのままギルドの裏方へと引っ張られた。
裏方に行くとたくさんの部屋があり、俺はその1つである空いている部屋に入れられた。
エミはそのまま、部屋の鍵を閉めて俺が出られないようにした。
「ねえ、あなた…何者?」
エミは疑りも深く聞いてきた。
何者って言われても正直に勇者です。魔王ですというわけにもいかない。ましてははぐらかしてしまうと益々、疑いの目を向けられるのはわかっていた。
「この水晶をみても、はぐらかす?」
エミはさっきシンヤのスキルを測った水晶を突き出した。
水晶には色が写し出されている。
「透明…無色はありえない」
色が写し出されていると水晶を見えればわかるが水晶には色がついていなかった。
読んでくださった方、ありがとうございます(^O^)
不慣れなことはありますが頑張ります(>_<)
次はギルドをシンヤがどう切り抜けるかです。楽しみに〜(^_^)