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欲しがるもの 未完

書きかけ。



 世の中の誰もが自分にないものを欲しがる。

 それは人によって様々であるが、代表格は存在する。


 多くの人が望むものは『金』だ。

 それがあれば大抵の問題は解決可能だし、『容姿』『伴侶』『権力』などの悩みも解決できる。


 創作物でよく『金で買えないものもある』と言うが、その通りだ。

 『愛情』『心』、精神的な事は金では解決できない。




 さて、なんでこんな話を心の中で呟いているか。

 それは私の目の前のモニターの光景を見ていただければ解るだろう。




「ちょっとこれわたしが取ったのよ!」「うっさいわねババア! ひっこんでろ」


「金だ、お前ら早く拾え!」「社長! 鞄が足りません!」「そこらの奴らから奪え。金さえ払えば許してくれる!」


「ママー? これお金?」「ゆうた早くこれをひろいなさい! なんでも好きなもの買ってあげるから!」「わーい」


「金……金……カネ…………」




 空を駆けるヘリコプターから落とされる札束。

 それを必死に拾い集める民衆


 OLに還暦婆。

 小さい会社の社長に、その社員。

 30代半ばの母と、まだ小学生にもなっていないであろう息子

 そして最後にホームレス。

 滑稽だ。実に愚かしい。


『札束です! 数台のヘリコプターから各地に大金が落とされております! 場はパニックとなっており…………』


 ニュースキャスターすらも、実況しながらも職務を投げ出して拾いに行きたそうにしている。

 これが人間だ。

 本心をひた隠し、表ではいい人気取りで裏は欲に忠実。

 他を押し退けてまで奪い取ろうとする姿は正に『金の亡者』。


 拾わずに通り過ぎる者は皆無。

 植えられた木に引っかかったものは、木を蹴って落とそうとしている。

 屋上に落ちた札束を独占しようと、必死で階段を駆け上がる人々。


 これじゃない。

 こんなものを見るために私の財産をばらまいたのではない。

 金に取り憑かれていない者を探すために、ここまでしたのだ。


 自分の力で金を稼げると確信を持った者を選別するために、私はこんなことをしたのだ。


 ──全ては、あの日から始まった。




 ***




 あれは今年の初めの頃だった。

 年が明けて除夜の鐘が鳴らされている時に私は自宅の自室で仕事をしていた。

 会社の業績が鰻登りに上昇し、会社を成功させた年のことだった。

 玄関のインターホンが押された音がした。


 玄関が見えるように取り付けられた監視カメラに映るのは、誰もいない玄関。

 悪戯かと思い立ち去ろうとした時、また耳に甲高く響く高い音が聞こえた。


 もちろん玄関には何も映っていない。

 最初に押してから逃走したとしても、また押されるには時間の間隔が短すぎる。

 二回目はどうやって押したのだ?


 通常こちらの音は向こうには聞こえないが、向こうの音はこちらに聞こえる。

 監視カメラにはマイクが取り付けられているが、音がしなかった。

 このままインターホンを押されても迷惑なので、誰もいない玄関に音声が繋がるようにする。


「どちらさまでしょうか?」


 有り得ない状況に緊張しているのか、声は固い。

 しばらく待ったが返答はない。

 新年を迎えたばかりで、使用人は全員帰らせている。

 自分が玄関にわざわざ出るのも、危険かもしれない。

 そうして背を向けた瞬間、


『貴方にこれを』


 振り向いて画面を見た。

 モニターには、つい数秒前までなかった物が置いてあった。

 何かを布に包んでいるようだ。


『これは貴方の未来を無限にする鏡です』


 画面を凝視するが、特に変わった部分はない。

 玄関に置かれた物が凄く目立っているくらいか。


『貴方が使用方法を間違わぬよう願います』

「誰だっ! 名を名乗れ!」


 返事はなかった。

 ただそこにあるのは、静寂のみ。


「なんだったんだ……」




 それから鏡の能力を知りこの世の理から外れた存在になることなど、その時の私は考えもしていなかった。

20141212830

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