倒すもの
都市オレリアの朝は、ベルの音が響き渡るところから始まる。
その音は魔法の道具の力により、正常者であれば意識を完全に呼び覚ます効果がある。
一般的な都市や街には必ず設置されているものだ。
「ん……おはよう、ギラ」
「おはよう母さん」
ベルが鳴るよりも早く起きていたギラは、軽いものだが鎧を着込み腰には短剣と小袋を吊っていた。
灰色のライトアーマーは光を反射しない皮のようであり、さしずめネズミのようだ。
短剣は簡素な造りだが職人の技が活かされており、数年使っていてもガタがくることはなかった。
「行ってきます」
「ええ、気を付けるのよ」
ギラは玄関で腰の薄汚れた小袋の中身を改め、家の扉を潜っていった。
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「早いもん勝ち100J! 今なら果物が全品100Jだよ!」
「うちのサンドイッチはいらんかねー! カツにハムにスイトの実の三種類アルヨ!」
「そこの貴方、朝のコーヒーはいかがかしら?」
街から出るには出店通りを通らなければならない。
だがギラは予め家で朝食を摂っているため買う必要はない。
足早に、だが走らない程度の速さで駆け抜けていくと、見慣れた門が見えた。
「おっ、ギラか」
「いつもどうも。これが料金です」
「はい許可証だ。昨日は」




