無職、始めました
ある朝の晴れた日……ではなく深夜ともよぶべき午前三時。
早寝早起きの度が過ぎた、あまりにも非常識な起床時間。
起き上がった俺は日課のウェブ小説漁りとゲームのログインをこなした後、タイムラインを一通り見ながら時間を潰す。
そして台所から夕飯の残りを部屋に持ってきて食べながら、今度は動画を漁る。
そうしているといつの間にやら七時となり、家族は起きて学校や職場に向かう。
「あんたはよぉ仕事探さな。あ、ゴミ出しといてよ」
「ニイちゃんはよ金稼いでなんか買ってや」
などと言われるが、コミュ障ぼっちの俺は曖昧に「うん」とか「わかってる」と返すことしかできない。
それが俺の現状である。
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太陽は真上に上り、日光照り付ける昼のひととき。
カップ麺を啜りながら実況動画を見ていると、インターホンが鳴らされた。
「ごめんくださーい。郵便局でーす」
「はーい、今出ます」
家には誰もいないのだ。俺が出るしかない。
珍しく大声を出したせいか、すこしむせてしまった。
咳をしながら玄関に出る。
「あ、病気でしたか。すいません」
まあ高卒したばかりの容姿で、平日に咳をしながら出てきたら誰しもそう思うのは仕方ない。
ハンコを捺してから早急にお帰りいただく。
渡された箱の宛名はなんと俺だった。
何も買った記憶はないし、買うための金もないのだが。
送り主を見ると、祖母からの贈り物だった。
開けてみると、なんでも卒業祝いだそうだ。少しお高そうな財布と手紙が入っていた。
「んー?」
財布は長財布で、中身を改めていると新品のはずなのに5円玉が入っていた。
なんでだろうか?
「ただいまー」
弟が帰ってきた。ちなみにうちは母子家庭で俺と弟の三人家族である。
まあそんな環境下で就職していないなんて、どんなクズだお前とか言われるかもしれないがそこらへんはご容赦願う。事情はあるのだ。
「あっ、なにそれ。あーちゃんからやん」
このあーちゃんというのは、おばあちゃんと呼ばれたくないがために幼少期の頃からおばを取って『あーちゃん』と呼ばされたせいだ。
「コトにもあるぞ。ほれ」
三年違いの弟は、今年で高校入学だ。
帰りが早いのは入学してからの準備期間であるせいだろう。
「そんなにいらんね。これ」
まあ高校生に文具やノートセットというのはどうかと思う。
小学生じゃあるまいし。
「あっ」
「どしたんニイちゃん」
「ラーメン絶対冷めてるわ……」
「ドンマイ」




