タイトル無し 未完
書きかけ。
今日も学校に行き、授業を受けて、部活を終えて、コンビニに寄ってミネラルウォーターを買って帰宅し、家で自分の10を越える趣味の内の一つであるエアガンの整備をしていたときだった。
『ありえないなんてことはない。
全ての事柄は定められた法則によって、作業的に為される。何が起ころうとそれは誰かが起こしたか、その他の何かが起こしたことだ。偶然なんてものはない、全ては運命に定められた必然だ。
そして、僕は今から君に【質問】をする。そして君が答えることもまた必然だ』
突然にして唐突に目の前に現れたこの美少年。
その姿に似合わない低い声でゆっくりと、こちらによく聞こえるように語っていた。
「なんだお前」
とりあえず右手に持っていたエアガンをそいつに向け、タバコを唇で挟んで左手のライターで火をつけた。
まったく、人が家のリビングでくつろいでいた時にいきなり現れるなんて非常識なヤツだ。思わず【神速のジョニー】と呼ばれた俺の無敵の早撃ちを脳天にかましてしまいそうになったぜ。
『僕は他の世界から来たんだ、名前はジン=シン。目的は、君を魔女の後継者にするためさ』
ちゅ、中二病か!
と叫びそうになったが、俺は大人だ。
子供の戯れ言をマトモに聞いてはいけないだろう。ここはクールに諭すべきだ。
何処から現れたのか、見たところ小学生のようだし、しばらく付き合ってやろう。
子供に向けていたエアガンを降ろし、タバコを灰皿で潰し、ソファに腰掛けた。
『うーん、信じてないね。なら僕の魔法を見せよう。非科学的なことや、非現実的なことが起きたら信じてね。
じゃあ、この指を見てて』
魔法とか言って、本当は手品だったりするのはよくあることだ。
この少年が突然現れたのも手品なんだろうなと、渋々指先に視線を固定する。
『3……2……1…………!』
その瞬間、指先からハトか火でも飛び出すのだと思った俺は甘かったことに気付く。
さっさとエアガンで撃っていればよかったのだ。
──簡潔に説明すると、家が吹っ飛んだ。しかも、木っ端微塵に。
家具や床や壁……その他諸々まで無くなった。
『……ま、これで信じてもらえたかな』
「な、な、なんだこりゃ! い、いい、家が! 俺のっ、家っ!」
『君、ちょっと五月蠅いよ? 近所にも迷惑だし場所を変えようか。それっ!』
次の瞬間、跡形もなくなった俺の家の跡地から、四方八方を何かに囲まれたどこかに瞬間移動していた。
その何かは動物らしく、甲高い声で唸っていた。しかし、その姿は歪にして異形。
──犬の顔、熊の体、ゴリラの手足……のようなものを無理矢理くっつけたようなそれらは、漫画やアニメで見る【合成獣】に見えた。
「なんだ、こいつらは……」
『こいつらは魔女が生み出した……そうそう。君が今考えている【合成獣】ってやつだよ』
こいつ、俺の考えを読みやがった!?
『ああ、言い忘れてたよ。僕は【神】なんだ。
人の心を読むことくらい出来るさ』
じゃあわざわざ声に出さなくてもいいよな?
もう今更だから神だなんだとか言うのには驚かない。全面的に信じよう、そして協力しよう。
最初に言っていた【質問】というのはなんだ?
『君にこの世界を救ってみる気はないかい?』
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「世界を……救う?」
思わず声が漏れてしまった。
しかし、目の前の少年は淡々と告げる。
『君にはね、魂に備わっている能力があるんだ。とても強い力が眠っている。
ただそれは長い時間を掛けて育てていかなくてはいけないし、まず元の世界では使えない。
しかし、現状は君にしか使えない力だ』
なるほど、生まれる世界を間違えたということか。
『詰まるところ、君にはある世界を救って欲しいんだ。もちろん成功すれば報酬はあるし、もし死んでしまっても元の世界で元人生を送ってもらうことも出来る。家も元通りにしよう。
──リスクはない。僕のお願い、いや、わがままだ』
リスクはなくて、成功したら報酬はある。
それって最高じゃないか?
チャンスがもらえたんだ、やらないでどうするよ。
『決まり、だね。じゃあ早速この世界で生きてもらおうかな』
え?
『まずは僕らの周囲の【合成獣】30匹の掃討…………安心してくれ、こいつらはRPGで表すと最弱の総称である【スライム】だからね。
今は僕の魔術でここに近付けないようにしてるけど』
ああ、スライムね。確かに弱いのだろうけど…………
「合体、してませんか?」
『そりゃするよ。【合成獣】だもの。合成から重ねて合体なんて、素敵じゃない?』
全く持って素敵ではない。
二匹がお互いの肉を喰らい、最終的に5割増しの大きさになっている。
それが何度も行われ、とうとう30匹分の大きさになった。
大きさ的には、電柱二本を縦にしたような身長だ。
「無理無理無理無理無理無理! どうやって戦えと? 晩成型って説明したのはあなたですよね!?」
『いや、今が弱いなら弱いなりに戦えば?』
「どうやって!?」
せめて超能力とか武具とか……なんかチート級のがないとすぐに死ぬ。
この【合成獣】を見て確信した。
だから、神に助力を乞うしかない。
『仕方ない、一つだけだ。一つだけ欲しい物をあげよう。もちろん強すぎると制限がかかるけど……』
この世界には魔女がいたそうだし、目の前の【合成獣】もその魔女が造ったという。
つまり【魔法】が使えないと不利だということだ。
馬鹿正直に剣で戦うよりはマシだろう
いや、剣があるかどうかが分からないから断言は出来ないが。
──俺が【魔法】を使えるようにしてくれ。
『……分かった。その願いを叶えよう──』
よしっ!
『──後悔しないようにね』
え?
そう言い終えた神は消え去って、目の前には目算20メートルほどの【合成獣】。
早速魔法を使おうとしてみるが、まずどうやって使うのかわからない。
あ、詰んだ。
次の瞬間、俺の身体は【合成獣】に踏みつぶされて、呆気なく死んだ。
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胸が圧迫される感じがして、目が覚めた。
起き上がらずに、目だけ動かして室内を見回す。
そしてなにやら、俺の華奢な身体の胸板に柔らかい感触が──
布団をめくると、一人の少女が裸で俺の胸で寝ていた。
これなんてエロゲ?
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ひとまず少女はベッドに降ろし、室内を探索する。
広さは学校の教室ほどで、かなり広い。
一つだけある窓から外を見ると、木しか見えない。
部屋にはキッチン、ベッド、などの家具は一通り揃っている。
本棚もあるので、一冊手にとってみるが読めない。何語だろうか?
冷蔵庫らしき物があり、扉を開くと食材が詰め込まれていた。見たことがない食材だ。
とりあえず少女が起きるのを待つために、冷蔵庫もどきから液体が入った瓶を取り出してテーブルに置き、食器棚から持ってきたコップに注ぐ。
椅子に腰掛けてコップの中の液体を見ると、紫色だった。
毒々しい色だが、のどが渇いているので思い切って飲んでみた。
舌から感じられる味は、生ゴミと雑草を混ぜたあとに加熱して腐らせてからカエルの死体とカラスの死体を混ぜ合わせたミンチと更にこねてこねてこねたものを液状化させたような味だった。
一口で気絶した。
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「うぇい! はゆりめこじぃど! ひひふへへへへへ」
目が覚めると、床で寝ていて、変な言語を使う少女が俺をビンタしていた。
これが目覚ましビンタか。
ぼんやりとした意識のまま、起きたと意思表示。
「おーけーおーけー! 起きた、起きたから!」
それを聞いた少女は冷蔵庫もどきへ駆け寄り、中から一つの瓶を取り出した。
「おーで」
コップに注いでくれるが、なぜか飲みたくない。
「おーで!」
仕方なく口に含むと、普通に美味しかった。ただ、少し妙な味だ。
フルーツジュースに一手間加えたような、変な違和感がある。
「コトバ、わかる?」
「お、おう」
これは凄い、言語をマスターしている。
一体あの飲み物はなんなんだろう。
「森でたおれてたから、たすけた」
森?
ああ、そうだ。あの巨大な【合成獣】に踏みつぶされて……
「──オェッ!」
「だ、だいじょうぶ!?」
思い出したぞ!
アレ(・・)を飲んだんだ。
くそっ! 胃から昇ってくるこの液体はどうすればせき止められるんだ!
間違ってもこの少女にぶちまけるわけにはいかないが、なぜか俺の体をがっちりホールドしている。
2014年12月10日7時46分投稿。




