剣極めれば世界最強
剣を振るう。
この世界だとあたりまえの行為だ。
あらゆる生物が剣を扱う。
産まれたばかりの生物は、剣を抱いている。
人も、魔族も、エルフも、ドワーフも。
牛も、豚も、鳥も、魔物だって。
そう、この世は剣がすべてなんだって。
転生した俺は理解した。
前世の記憶はあまりないが、常識とか他愛ない知識程度なら残ってる。
転生した俺はチート能力を持っていた。
あらゆる物の【ステータス】を閲覧できる。
それは数値のようなものではなく、感覚的なものだ。
しかし例外として、スキルを可視化できる。
この能力のおかげで、貧相な暮らしをしていた俺は王都で商売を営んでいる。
奴隷商だけどな。
「失礼、親方。客が来ています」
おっと、呼ばれた。
スーツの襟を正すように、腰にさげた剣を整える。
髪を撫でつけ、姿見に映る自分の姿を確認した。
珍しい黒髪に、整った顔立ち。
白と黒のコントラストが映える礼服を着て、ネックレスや指輪などのアクセサリーも目立たない程度に身に着け、カジュアルに抑えている。
身なりとしては中の上、といったところだろうか。
この世界では割と長身なほうで、恐らく180cmより少し低いくらいだろう。
最近は食事内容を改めているので、血色も良い。
剣の修練も欠かしていないので、運動もできている。
いたって健康だろう。
思考に鈍さもない。
ステータスで自分を閲覧する。
数値化はできないが、この世界ではこれまた中の上といった力を持っている。
まあ、最近は伸び悩んでいるのだが。
転生してから、先日で20年を迎えた。
まだまだ俺の異世界転生ライフは始まったばかりだ。
「今行くよ。ヴァン」
俺は自室から出て、店の中にある商談用の部屋へと案内された。
扉をヴァンに開けさせ、部屋に入る。
ソファに座った姿勢の良い少女……衣類のグレードが高い。
おそらく貴族の出だろう。
王都での流行り、ブランドなどは把握しているが、最高級ではないところを見るに中級貴族といったところだろうか。
傍付きの者も後ろに控えているな。ステータスを確認すると、準騎士クラスの練度を保有している。
この少女は……あまり強くはないな。
「店主は貴方ですね。私はプロメイト=ミィア。今回は依頼があって参りました」
奴隷商店まできて依頼?
いったいどういうことだろうか。
「単刀直入に申しますと、プロメイト家に貴方が欲しい。婚約していただけませんか?」




