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神の遺した神 未完

書きかけ。


 儂は神だ。

 長年……というか、世界の生誕からこの世界を支えてきた。


 ある時は魔王と呼ばれる必要悪を創ったり。

 またある時はそれに対抗する勇者を創ったり。

 またある時は魔法の進歩を少し手伝ったりした。


 そして儂が産まれてから数え切れない程の年月が経った。

 しかし、神にも寿命というのが存在する。

 なので最後の力を使い、自分の子を七神作ることにした。


 なぜ複数創るかというと、儂のように一神だと寿命が縮んでしまうからだ。負担を軽減させようという儂の優しさよ。




 一神目は魔の神。

 主に魔法や魔術、魔王の制作など、魔と付くものの管理を任せる。


 二神目は人の神。

 主に科学や医学、勇者の制作など、人と付くものの管理を任せる。


 三神目は物の神。

 主に不自然でない物の制作、物体の管理を任せる。


 四神目は知の神。

 主に知識を蓄えたり、記憶の管理を任せる。


 五神目は善悪の神。

 主に正義と悪を選別したり、勇者と魔王の戦いの結末を変えることが出来る。


 六神目は天候の神。

 天候を操る。

 それだけ。


 七神目はその他の事柄を全てやってのける、儂の本命中の本命、全知全能の神。

 主に他の六神の担当以外を任せる。




 さて、創ってみたは良いものの、七神目の名前が長いな。

 それぞれに名前を付けてみることにしよう。


 一神は魔の神。

 二神は人の神。

 三神は物の神。

 四神は知の神。

 五神は善悪の神。

 六神は天の神。

 七神は全知全能の神。


 ここからどう変更しようかの?


 まずは地球っぽい名前にしてみようかの。


 一神は魔の神→スティーブ

 二神は人の神→ガンダーラ

 三神は物の神→マル

 四神は知の神ポチ

 五神は善悪の神→ゲーニッツ

 六神は天の神→ダンナ

 七神は全知全能の神→オロス


 ……脈絡が無いのう、せめて関係がある名前にしようかの。


 一神は魔の神→スライム

 二神は人の神→田中

 三神は物の神→机

 四神は知の神→海馬

 五神は善悪の神→ゼンアク

 六神は天の神→空

 七神は全知全能の神→唯一


 た、田中……田中はやめておこう。

 全国の田中さんが神になってしまう……ぶひゃひゃ! 笑いが止まらん!




 ……名前は他の事柄で決めよう。そうじゃな~、髪の色とかどうじゃ?

 丁度色が全員違うしの!


 一神は魔の神→紫

 二神は人の神→紅

 三神は物の神→黒

 四神は知の神→翠

 五神は善悪の神→黄

 六神は天の神→蒼

 七神は全知全能の神→金


 うむ! これなら良いじゃろう!

 適当に知識与えて……衣服を着せて……完了じゃ!


 ほれ、お前ら。起きろ。



「む? お呼びでしょうか?」

「あれ? ここどこ?」

「ふぇえ……神がいっぱいだよぉ……」

「……ふぁっ!?」

「はっ! 夢か……」

「私を天が呼んでいる!」

「……」



 今から名前を伝える。

 魔の神→紫

 人の神→紅

 物の神→黒

 知の神→翠

 善悪の神→黄

 天の神→蒼

 全知全能の神→金

 以上。

 儂はこれから強引に輪廻転生してくるから、あとは任せたぞ。



「かしこまりました」

「なんかわからないけど、いーよー」

「ふぇえ……なにかを任されちゃったよぅ……」

「ふぁー?」

「夢だ。これは夢なんだ」

「天の導きのままに!」

「……」



 ……ま、それじゃあな! 達者でな!






◇◆◇◆◇






 さて、どうしたものやら。

 どうやら私たちは神によって産まれたようだ。しかし産んだ神は寿命なので輪廻転生をしてくるらしい。なので私たちが神の業務である世界管理を行うという重要な役を任されたわけだが、わざわざ感情を付ける必要は在ったのだろうか? 神はそこをキチンと考えていなかったから今こんなにも意見が別れている。要するに神の考えなしめ!


 世界の管理者がこんなのばかりだとダメだろう。

 まずは業務放棄するか。



「制作」



 私は世界を創造する。

 神の力の殆どを受け継いだ私に出来ないことはない。



「じゃあな、兄弟姉妹よ。私は早めに逃げさせてもらう」



 そう言うと、魔の神。紫が突っかかってくる。



「お前よりにもよって神の意志を無駄に……うっ!」



 私は自らの神の力を見せつけ、威圧した。

 奴は私の神の力に圧倒的され、怯んでいる。

 誰にも私を止めることは出来ない!



「ぎ、義務くらい果たしてくれ。俺達ではとても世界の管理は出来ない」


「無理だな。既に自分の世界を創った。お前らの手は借りんし、貸すつもりもない」


「理由くらいあんだろうな?」


「人から受け継ぐなんて面倒だ。自分で創った方が効率が良い」



 絶句していた紫を尻目に、私は創ったばかりの世界へと移動を始めた。


 ──私は私の好きなように生きる。誰にも邪魔はさせない。






◇◆◇◆◇






 今現在、俺の目の前には雄大な自然が広がっている。

 落ちたら確実に死ぬような崖に渓谷。

 泳いだら気持ちが良さそうな川に湖。

 森林浴をしてみたくなるような森にジャングル。


 とても興味をそそられるが、それよりも更に興味を寄せられるものがあった。



「本物か……?」



 常人ならば目を疑うような景色。

 島が空に浮いていたり、巨大な鳥とファンタジー世界でしか見ないようなドラゴンが戦っていたり、滝の水が下ではなく上に昇っていったり。


 だが、未知の光景に俺の心は奪われていた。



「ここは天国か! 生きてるって素晴らしい!」



 俺の名は空駆翔太そらかけるしょうた

 歳は16、好きな食べ物は肉と野菜。

 運動が好きで、よく山や谷を駆けていた。

 ……享年も16歳。現在進行形で『二度目の人生』を体験している。






◇◆◇◆◇






 私が創った世界は過酷だ。

 地球で流行していたファンタジー要素を許す限り取り入れ、地球で死んだ者に二度目の人生を与えることを目的としている。

 そのファンタジー要素が厳しく、この世界に来た24時間後まで生き残っていた者はいない。


 何かを食べれば毒に当たる。

 凶暴な動物に遭遇すれば襲われて死ぬ。

 うっかり足を滑らせて崖から転落。


 運が悪い人達だ。

 少し道筋を変えれば、生き残れたというのに。

 一応これでも生き残りやすいようにしたのだがな。

 既に50は死んでいる。


 流石に人が死ぬのは飽きたので、変わりに世界管理をしているあいつらを覗き見してみることにした。

 実際に会うと、面倒な事になるだろうからな。




 覗いてみると、全員あの場から動いていなかった。

 それ以前に、皆寝ている。

 面白くない。




 ふと自分の世界に目を向けると、一人の男が狼に襲われていた。

 木に登ることでやり過ごしたようだ。

 やっとまともな人間がきたのか。


 特に感動もなく、ただ私は世界の微調整をしていた。






◇◆◇◆◇






「さてと、先ずは食料調達と寝床の確保だな」



 今は俺一人だが、後で誰か来るかもしれない。

 そのことを考慮して、声に出す。

 一人でも喋っていないと、舌の筋力が衰えて滑舌が悪くなってしまうからな。

 いざとなったときに聞き取りにくいと大変だからな。


 とりあえず最初は地形把握からだ。

 さっきも狼に追いかけられ、散々な目に遭ったしな。

 それと同時に食べれるものがないかの探索、寝れそうな場所を探す。

 なかったら一大事だが……そのときはそのときだ。なんとかするしかない。






◇◆◇◆◇






「ガウッ! ガウガウっ!」



 探索を開始して数分後、早速見つかってしまった。

 武器になりそうな物は拾った木の棒のみ。

 防具となるのはTシャツとジャージ。

 靴は某メーカーの運動靴だ。

 これで一体どうしろと?

 向こうは様子を伺っているようで、睨みつけて威嚇している。



「グルルルルゥ………………!」



 狼が唸った瞬間、俺の体が動かなくなった。



「なっ!?」



 まるで金縛りにあったように、動けない。

 これが殺気というやつか?

 しかしそんなことを考えている間に、狼は舌なめずりをしている。


 そういえば狼って夜行性じゃなかったっけ。ってそんなこと考えている暇はないんだった。うわああああどうしよどうしよちょっとタンマタンマ足に齧り付くとかちょいと待っておくれやすってやめろやめろああああああ痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いいたいいいいいいいいい!

 なんなんだよ体は動かないし狼が襲ってくるし俺は死んだはずなのになんでこんなところにいるんだよおかしいだろまず動物とかいるのがおかしいって本当に神様は何考えてんだ馬鹿野郎!



『誰が馬鹿だって?』



 ほら幻聴だこんな夢早く醒めろ醒めろ醒めろ醒めろ醒めろもうこれ以上俺に苦痛を与えないでくれやめろやめてくれお願いします。



「あれ? 幻聴?」



 今本当に聴こえたぞ……?



『お前に興味が湧いた。話しにくいから一先ずこちらに来い』



 は? お前何言って…………




 その瞬間、俺の視界が切り替わった。

 そこは白い箱の中みたいな場所で、どこもかしこも真っ白だった。

 噛まれたはずの足は元通りになっていて、痛みも無くなっていた。

 そして目の前には金髪の青年が座っていた。



「よう、人間。

 私はお前らが言う神様の内の一人だ。

 あの世界を創ったのは私でな、人間の希望する世界がよくわからんのだ。

 良ければ私の世界創造を手伝ってくれないか?」


「はい?」






◇◆◇◆◇






 この男、人間の中ではかなりの強さと知恵を誇ると言って良いだろう。

 矢張り呼んで正解だった。

 此方を睨みつけながら後ずさりしているが、きっと警戒しているのだろう。


 どっちにしろ、この空間からは逃れられんのだから。



「話しをしよう」


「断る」


「話しをしよう」


「しつこいぞ」


「話しをしよう」


「だから」


「話しをしよう」


「ちょっ……」


「そうか、まずは腰を据えなくてはな。

 私としたことが、こんな簡単なことを見逃していたとは……。

 全知全能の神の名が聞いて呆れる」



 まずは木製の机と椅子を用意する。

 これが確か、和風というのだったか?



「どこから出てきたそんなもん!」


「創ったのだが、何か?」


「材料は?」


「神の力だ」


「愛は?」


「生憎だが、神に何かを愛する感情はないと言われている」


「いや、本気で答えなくていいからね……冗談だから」


「成る程、そういう言葉の裏に秘めた思いまで見抜かなくてはならないのか。

 生前は日本……か。難しい国だな」


「そんなことはないんだけどね。

 とりあえず、用件だけ聞くことにするよ」



 仕方なさげに、椅子におずおずと座る。

 ようやく聞いてくれる気になったか。

 それでは聞いて貰おう。



「説明するにはまず、貴方は生前どこに生きていた?」


「地球の日本」


「そうだが、もっと大きなものがあるだろう?」


「うーん、宇宙?」


「惜しいが不正解だ。世界、だ」


「その世界がどうするんだ?」


「世界には必ず神が付いている。

 その世界を創った神や、代理の神が、だ」


「さっきから神って言ってるが、神とはなんなんだ?」



 そこからか。

 仕方ない、説明しよう。



「世界を作り、世界をより良くし、最後には壊す。

 それを『神』と言う」


「そうか。で、あんたがその神様ってわけか」


「そういうことになるが、少し違う。

 私は地球の神の子だ」


「神に子供だなんて、えらいファンタジーだな」


「現実だがな。

 続けるぞ、地球の神は死ぬ間際に自分の神の力を持った七神を創った。

 その内の七神目が私だ」


「偉いのか?」


「神はそんな基準で判断しない。

 単純に力の大きさで決まる」


「あんたは? 」


「私はこの世界を創り、逃げてきた。

 つまり、はぐれものだ」 


「ああ……大体分かった。

 あんた、ぼっちか」


「そういうことになるな」



 やけに真剣な表情をしている。

 まだ本題ではないといのに。



2014年12月10日7時40分投稿

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