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ドラゴンに求婚されたニンゲンの話

それは夢のようだった。


「ここは……?」


見渡す限りの金の山。

注意深く見ると、どうやら全て金貨のようだ。

その山の頂上に、人の形をとった何かがいた。


『歓喜せよ』


それには角があり、尻尾があり、鱗で皮膚を守っていた。

女性の象徴を示すような体つきをしている。

まるで竜……


『オマエは我が主となるべく呼ばれたのだ』


その竜は一瞬で間合いを詰めた。

瞬間移動にしか見えない速度で移動していた。

そして、跪き、頭を垂れた。

絶句だ。

言葉も出ない。


『さあ、婚約しよう!!』


真紅の竜は咆哮を放った。



/////////



たっぷり30秒ほど俺は固まっていた。思考停止から回復したのはその後だった。とりあえず状況把握が先だと自分に言い聞かせる。文句は後回しだ。


「えっと……名前を教えて貰えるかな?」

『我が名はローズ! 深紅の庭園に咲く一輪の花よ!』

「それで、ローズが俺をここに呼んだの?」

『ああ! 現世の合わせ鏡という神具を使い、我が主となるべく生命体をこの世界に召喚せしめたのだ!』

「どうして婚約?」


そう聞くと、今度は照れたように鱗が赤くなる。

その姿を見て、まるで鱗が人体を侵食しているような印象を受けた。この姿は歪だ。


『そっ、それは我が主を好きに決まっているからだ。決まっておろう!』


うーん、よくわからない。

なんでこの子は俺の事が好きだと言えるんだ?

一目惚れってレベルじゃねぇぞ。


『……ひとまず場所を移そう。我らに相応しい住居を用意してある。こちらだ』


金貨の山の合間を縫って、ぽつぽつと歩き始める。

俺は後ろについて彼女について行った。



/////////



金貨の山を抜けると、洞窟から出た。ここ洞窟だったのかよ。明るすぎて気づかなかった。

その先には、青空があった。

そこには空飛ぶ島や翼の生えた人間らしき物体が遠方で飛び回っていた。

ドラゴンガールを見た時から薄々勘づいてはいたが、やはりファンタジー世界に呼び出されてしまったらしい。

そして、


「でけえ」

『たしかこれを主の世界では、豪邸と呼ぶのだろう?我ちょっと勉強したから知ってる』

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