記憶を吐き出し夜に雄叫べ
「目覚めたか?」
深い眠りから目覚めた感覚だ。よほど疲れていたのだろうか。
起き上がるとそこは病院の病室……なのだろうか。白い壁に天井だ。
「あの、ここは?」
目の前にいた男性に尋ねた。
こんなところに来た覚えはないからだ。
「ここは病院だよマコト君。喉は乾いてないか?」
「あ、いただきます」
なぜか喉が異常に乾いていた。
水の入ったペットボトルを差し出されたので、キャップを開けて呷る。
「さて、問題だ。君は誰で僕は誰か、覚えているかい?」
=≒=
「ええっと、ですね」
記憶を探る。
「僕は如月誠、17歳です。貴方は学校の担任……でしたよね?」
なぜか記憶が曖昧になっている。危ない薬を飲んだ覚えはない。
寝起きなのに頭が冴えないというのは、どうにも違和感を感じる。
「違和感を感じる」の「感じる」の部分が重複しているが、「歌を歌う」と同じようなもので間違ってはいない。という無駄な知識はハッキリと思い出せるのに。
「あの、なんでこんな質問を?」
「いや、確かめておきたくてね。君が無事だったのかどうか。外傷が癒えても、内面的な問題は発生していることもある。
まあただ単に心配性なだけなんだがね」
「は、はぁ……」
よくわからない。
何が僕の身に起こったというのか、記憶が全くない。
「無事なことがわかったんだ、また来るよ。それじゃあね」
「あ、はい」
腕時計を確認してから立ち上がった先生は、そのまま扉の向こうに消えていった。
ボーっとする頭をどうにかしないといけないが、どうしなければいけないのかがわからない。
「暇だなぁ」
僕はベッドから抜け出て、立ち上がってからそう言った。
=≒=
「やはり思考にノイズが?」
「ああ、波長が読み取れない。あの未確認飛行物体にまだ監視されているのかもしれん」
「それでは次はこちらの薬を飲ませてくれ。自白剤のようなものだが、効果は薄い」
「ああ、了解した」
「食事などの雑事は、看護師型アンドロイドがこなす。見張り役ご苦労だった」
「まさか半世紀も経過するとは思ってなかったですがね。容姿を保つのにも一苦労だ」
「君も早く機械臓器を取り入れればいいのだよ。違和感が生じるだろうが、慣れるのがニンゲンというものだ」
「眠気がきたのでこれで失礼。時間がきたら起こしてください」




