死神さんと冥王の子 〜邪魔な奴らは冥力で全部消し去ってしまえ〜
そう、それは突然やってきた。
部屋でスマホ弄ってたら、黒いヒラヒラしたものが目の前を横切ったからびっくりした。
「えーっと、どうも死神ちゃんです」
黒い布切れだけを羽織った、なんとも微妙な表情をした女。
手には背丈を超えた大きな鎌が、ギラギラと存在感を放っている。
驚きを通り越して反応できなかったので、目の前の女は「大丈夫?生きてるよね?」とオドオドしている。
ちなみに学校にいたら絶対モテるタイプの顔。
カワイイ系なのに自信なさげで惜しい美人だ。
「唐突で申し訳ないんですけど、貴方さんは冥界の王様の子供で。一緒に来てくれますか? ……じゃない、連行します」
黙ったまま少し考える。
俺の両親は生きてるし同居しているから、王の子というのは違うはずだ。
ただ壁を通り抜けて寝室に入ってきたので、非科学的な力を持っていることがわかる。
着いていかなかった場合『知られてしまったら殺すしかないな』とか言われてしまうかもしれない。
恐怖で声が出ないのでコクコクと頷いておいた。
こんな時でも頭は意外と冷静だ。
「わぁっ、やった! ……じゃない、こほん」
死神がぴょんぴょん跳ねてる。
鎌が当たりそうで怖いんだけど。
「そ、それじゃあ冥界にお連れしますね!そのまま動かないでください!」
鎌が光りを放ち、視点が切り替わった。
「ここは冥界『タナトスシティー』正面広場! さ、着いてきてください! って、えーとお名前なんでしたっけ?」
死神さんは満面の笑み。
対する俺は無表情。
こういうシチュエーション、アニメで予習済みです。
「降魔シュウ。シュウでいいよ、死神さん」
なう(2023/05/08 00:18:36)




