カーリデアの宴
「許せクオン! お前のことは忘れねぇからな!」
「あははっ、焦ってる焦ってる♪」
「クオン……すまん。死んでくれ」
俺は今この瞬間、死ぬことが決定づけられた。
それは誰にでも訪れる死という現象ではなく、もっと強度の高く簡単な死。
遭遇すれば死ぬという存在……『死神』との邂逅だった。
古来より伝承で語られるそれは、『夜に出歩いたら死神に会う』とか『死神と会って生き延びられるのは通常の魂では不可能』とか、理不尽なものなのだ。
そして僕は今、死ぬ。
『死神』を発見したまではいいものの、逃げる途中に躓いて転んだ。足を引っかけられたのだ。
行ったパーティの3人は捨て台詞を吐いて逃げ出した。
そして死神はこちらに気付いて追ってきていたようで、起き上がろうとすると眼前に居たのだ。
『A//////S』
黒いローブで体をすっぽり覆っている、
理解不能の言語だ。
手に鎌。
ああ、振り下ろされる。
その鎌は魂を刈り取るという。
「あっ――」
死んだ。
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「ええっと君、大丈夫? ねぇ?」
「ぅ……ん?」
「あー、目開いたよね。起きてるよな」
眩しい。
まるでそこら中にランプを灯したような明るさだ。
寝たまま夜空を見上げると、月が一つ。
「そこのお方、月の数が足りんように見えるのだが」
「あ? 月は一つしかないだろ。あと俺の名前は竜司だ」
確か、月は最低三つが反映されるはずだ。
月が一つしかなく、見慣れぬ風景というここは。
どこだ?
「すまん、ここはなんという場所だ?」
「なんだアンタ。酔ってたのか?
ここは京都の片田舎……夜野辺街だよ」
「キョウト? ヨルノベ?」
「おいおい、やっぱ外国人じゃねーか。それにしては上手いな日本語が」
これは完全に、死後の世界とかいうやつなのでは……?
思考を巡らせている間に、目の前の男はすくっと立ち上がり手を差し出した。
倒れたまま寝ていた俺は、手をとって引き上げてもらった。
「なんかワケアリみたいだし、警察行っても面倒になるだけだよなぁこれ。明日仕事あるし……ひとまず俺んち来い」
「僕もわからんことばかりで参っている。お言葉に甘えさせてもらおう」
「話がわかるやつじゃねぇか」
気のいい男だ。
そんなことを思いながら、後をついていった。
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