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月が綺麗だ
三日月が綺麗だと思った。とても美しい。
現代では懐かしさを覚える木造建築の一軒家。縁側で茶を啜りながら月を眺めていた。
ここは田舎であり、都会の騒音とは無縁だ。
だからこそ風情がある。
僕は月を見ていた。
10分……20分……30分……40分……50分…………。
この胸に抱いた感情は一体なんなのだろう?
憧れ? それとも愛情?
よくわからないものが胸中を渦巻く。
ふと隣を見たとき、そこには彼女がいた。
「月が、綺麗だ」
思っていたことが口から洩れた。
「私、死んでもいいわ」
僕は、いつの間にか月ではなく彼女に魅せられていた。
「綺麗だ」
「ええ、そうね」
明日は祭りだ。
浴衣を用意しておかないと……。
2014年12月10日7時14分投稿




