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完璧すぎる不完全

作者: ジャンプ

蛇口からしたたり落ちる水

水を見ていた


何物にも阻まれず、水は堕ちていた

洗面台を滑り落ちた水がどこへ行くのかは僕には分からない


でも多分

ずっとずっと、落ち続けるのだろう



落ちていくな

落ちないでくれ


僕の意思に背いて、水は落ちていく

水滴のその中に僕はいた


どんな表情をしていたのだろうか


変幻自在に形を変えて

僕は僕の意思のまま落ちているのだろうか



はた、と思い立ってコップを蛇口の前に差し出した


コップに注がれる水

溜まっていくことに少し安堵する


形の無かった水が確かな姿を形成していく

それはまるで人間の体に魂が入っていくようだった


いや


違う


水は形を手に入れたんじゃない

ただ、重力のまま落ちているだけだ

縛られているだけだ


涙が溢れてくる



コップが割れた

意思のまま


形がなくなる 僕になる

そう

これが僕だ



どこまでも堕ちる

形なんて関係なく僕になる


僕なんて関係なく



手で形を作ってすくった

手の隙間から逃げるように水は溢れていった



落ちる


落ちるな

落ちないでくれ



何者も僕の形は決められない

何者にも縛られない


僕は僕の意思を妨げられたりしない


でも


意思に縛られて 重力に縛られて


それらはありとあらゆる僕の全てを束縛した



完璧すぎる

不完全すぎる


空虚



洗面台から流れた水はいったいどこに辿り着くのだろうか

いや、もう答えは分かっている


自由であろうとしても

自由であったとしても


その運命から逃れることは出来ないのだから

自由と束縛は表裏一体で

自由を選んだ事で束縛を手にしてしまうこともある


ただそれだけ

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