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遅れて重なる 第10話

第10話

風が消える。

音も消える。

完全な静止。

崩れた構造体の奥。

中心に近い場所。

イリスが立つ。

ギアは横にいる。

距離は近い。

揃ってはいない。

だが、離れてもいない。


「……ここか」


ギアが言う。

イリスは答えない。

空間が揺れる。

遅れて。

何もない場所に、歪みがある。

形はない。

だが存在している。


「……見えてるな」


ギアが言う。

イリスが短く返す。

「ああ」


一歩、踏み込む。

遅れる。

世界が遅れる。

足が地面に触れる前に、感触が来る。

逆転している。

ギアが言う。


「……順序が崩れてる」


イリスは止まらない。

さらに一歩。

空間が歪む。

揺れる。

遅れて。

その瞬間。

“何か”が動く。

見えない。

だが確実に。

イリスが止まる。

ギアも動かない。

一拍。


「……いるな」


ギアが言う。

イリスが答える。


「ああ」


沈黙。

風はない。

音もない。

それでも。

確かに“何か”がいる。

二人は構える。

揃わないまま。

だが、同じ方向を見ている。




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