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「いたっ」

「悪い……あ?おまえ…」

「…え?あっ、アンタっ」


目の前にギデオンが立っていた。

うそだろ…二度と会うことはないと思っていたのに。なんで同じ宿に来ちゃうの?

リオが隠すことなく嫌そうな顔をしているのに、ギデオンはお構いなくリオの肩を押して部屋の中に入ってきた。

リオはギデオンの横をすり抜けて部屋を出ようと扉に向かって手を伸ばしたけど、手が届く前にギデオンが容赦なく扉を閉める。


「おい…なんで閉めるんだよ。俺、仕事中なんだけど」

「仕事?働いてるのか?ここに泊まってるのではなく?」

「そう。俺、銀貨持ってないの。だから仕事する代わりに泊めてもらうことになってるんだよ」

「ふむ、俺が渡した銀貨はどうした?」

「…スられた」

「なに?」

「この街に来てすぐにっ、子供にスられたんだよっ」

「ふ…ふふ、そうか」


ん?あれ?もしかして今笑った?木で彫られたお面のように無表情な男が?身体の中が氷で出来てんじゃね?ってくらい冷たい男が?気のせいか?

リオはシーツを抱えたまま顔を上げる。そして口を開けて固まった。

本当にギデオンが笑っていた。いや、笑うというほどじゃないけど、ほんの少し、微かに目が細められ口端が上がっている。

「なんだ…」笑うんじゃん、と見とれていると、「なにがだ」と低い声で睨まれた。

もう怖い顔に戻っている。もう少し笑った顔を見ていたかったのに。あっ、ギデオンの顔に見とれてる場合じゃなかった。俺、笑われたんだった!


「なあ、今、俺のことバカだと思ったんだろ」

「俺は誰であっても人をバカだなどと思わない。おまえはしっかり者だと思っていたのに、意外と間抜けだったのかと呆れていたのだ」

「ねぇっ、だからそれってバカにしてない?」

「していない。ほら、そのように怒ると余計に腹が減るぞ」

「なにが?」

「先ほどからうるさく鳴っている」

「へあ?」


ギデオンに指摘されて気づいた。確かにリオの腹がグーグーとうるさい。

リオは熱くなった顔を、勢いよくシーツに埋める。


「いっ、今から飯を食うんだよ!今日はよく動いたから、いつもより腹が減ってるんだよっ」

「そうか、それは良いことだ」

「ふんっ、じゃあな!」


リオは扉に突進して急いで部屋を出た。

早歩きでシーツを洗い場に持って行き台所に向かう。台所に近づくにつれて肉の焼けるいい匂いがする。


「なんの料理だろぉ…楽しみっ」


飛び跳ねそうな勢いで台所に行くと、ノラに大きな木の箱を渡された。


「お疲れ様。早速だけどこれを最上階の部屋に持って行ってくれる?」

「え?え?俺の飯…」

「この中に入ってるわよ。最上階の部屋のお客さん、知り合いなんだって?今日の仕事は終わりだから、ゆっくりしてらっしゃいな」

「え?なんで?」


箱を抱えて首を傾げるリオの背中を、ノラが押す。

「早く持って行かないと冷めちゃうわよ」と強く押されて、押された勢いのまま、リオは歩き出した。


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