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リオが崖から落ちた事件から三ヶ月が過ぎた。

庭に咲く可憐(かれん)な花を揺らす風も冷たさを()び、庭仕事や馬の世話、鍛錬をしていても寒さを感じるようになった。特に朝晩はグッと冷え込み、目覚めた時にはギデオンの腕の中が温かくて気持ちいいと感じてしまうほどだ。

もうさすがに四ヶ月も経つと、抱きしめられて眠ることに慣れた。起きた時に驚くこともなくなった。それに今では、リオの方からも抱きついているくらいだ。

しかし朝の二人の姿は誰にも見せられないなと、リオは毎朝苦笑している。

ゲイルだけが、リオが雇われた本当の理由を知ってるらしいけど、まさか二人が抱き合って寝ているとは夢にも思っていないだろう。

目覚めた時、アンはいつもリオの背中にはりついて眠っている。何度かリオとギデオンの間に入ろうと試みた形跡があったのだけど、入れなかったようだ。

夜に眠る時は、リオはアンを抱いて眠るのに、どうして朝には自らもギデオンに抱きついているのか。心底不思議に思う。


そしてやはり、アンの成長が遅い。四ヶ月かけて、ようやくひと回りは大きくなったが、まだまだ仔犬の大きさだ。いつまでもかわいくてたまらないのだけど、心配にもなる。

一度、ギデオンが医師を呼び診させたが、どこも悪くなかった。犬か狼か魔獣かもわからなかった。でもギデオン曰く、ここまで成長がゆっくりなのは魔獣だろうと言うことだ。

大きくならないことは心配だけど、アンが健康なら何者でもいい。

リオは、(うれ)いなく過ごせている城での生活に、幸せを感じていた。



朝から曇り空で一段と冷え込んだある日の昼前に、王都から使者が来た。

王都から使者が来るなんてギデオンすごい!とリオは興奮した。興奮して使者がどんな人かを見たかったが、そもそもリオが会える身分の人ではない。

だから、初日に案内してもらった見晴らしのいい小部屋から、城に向かって近づいて来る使者の一行を、こっそりと見た。


「おお…あれか。思ってたより少ない一行だな。あ、真ん中の人、すごく強そう。それに服が重そう」

「まあな。王都に仕える騎士ともなると、頭も腕も重要だからな。それにある程度の身分もなければ」


リオは、ゆっくりと首を動かす。

一人でこっそりと上ってきたはずなのに、なぜか隣にアトラスがいる。

リオと目が合ったアトラスが、にこりと笑う。


「アトラス…ギデオンとか他の人達と一緒に出迎えなくていいのかよ」

「いいの。俺は騎士といっても、まだ新米だし。粗相(そそう)しても困るし」

「…アトラスは騎士になってどれくらいなんだ?」

「一年だよ」

「一年経っても、まだ新米なのか?」

「うんそう」


絶対違うだろとリオは顔を窓に戻す。

アトラスは、言われたことはしっかりとやっているのだろうけど、軽い所がある。

リオは、後でゲイルさんに怒られても知らないよ…と、聞こえるか聞こえないくらいの声で呟いた。

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