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「それで?」
リオはいつの間にか、ケリーの話に引き込まれていた。続きが気になる。今ここにケリーがいるということは、助かったのだろうけど。どうやって助かったのかが気になる。
ケリーはようやく、窓から顔を戻してリオを見る。
「慌てて振り向き剣を構えたが、魔獣の鋭い爪が目の前に迫ってきた。当然防ぎきれない。しかし俺は目を瞑瞑らなかった。せめて一突きでも傷をつけてやろうと魔獣を見ていた。すると突然、目の前に人が現れた。その人が手を前に突き出した瞬間に魔獣が倒れた。俺は…何が起こったのかわからなかった」
「…人?」
リオの心臓が早鐘を打ち始める。これからケリーが何を話すのか。リオが思ってることでなければいいが。魔獣を一瞬で倒した人…まさか…まさか…俺の…。
「魔獣が倒れて、その人はすぐに去ろうとした。だから俺は慌てて手を掴んだ。掴んで驚いた。小さく子供のような手だったからだ。よく見ると背格好も小さい。ありがとう助かったと礼を述べ、その人の前にまわって顔を見た。そしてまた驚いた。とても美しかったからだ」
リオは無言で考える。
その人はきっと、俺の一族だろうと思った。手を突き出し一瞬で魔獣を倒すなんて、魔法以外有り得ない。だから村を出た誰かだろうと。仲間ならば驚いたけど嬉しく思う。だけど年が若そうだ。男か女か。いったい誰だ?
黙り込んだリオを、さして気にも止めず、ケリーは話し続ける。
「俺は矢継ぎ早に聞いた。今のは何だ、どうやって魔獣を倒した?君の名前は?どこの出身だ?年は?だがその人は、質問には答えず手を離せと睨んできた。俺は、絶対に離すまいと更に強く握りしめた。するとその人は非常に怒ったみたいでね、俺に向かって手のひらを向けてきた。その直後に俺は意識を失い、気づくと自室のベッドに寝ていた。疲れもあったからだろうけど、俺は二日間、その人の不思議な力で眠らされていたんだよ」
「へぇ…」
リオは気の無い返事をする。
本当はもっと詳しく聞きたい。その人は仲間だからだ。バラバラになって、もうどこにも仲間は、一族はいないのかもと思い始めていた。だけどいる。今もどこかにいる。会いたい。一族の誰なのか知りたい。でもこの話に食いつくと、リオもその不思議な力、魔法が使えることがバレてしまう。
しかしケリーがこの話をした時点で、疑われているのは間違いない。
ケリーは、リオの気持ちを読み取ったかのように、机に腕を置き身を乗り出した。
「面白い話だろ?興味あるだろ?」
「まあ、面白いとは思うけど」
「そうか?もっと面白い続きがあるんだ。その人はさ、リオと同じ、金髪に赤い目をしていたんだよ。金髪に赤い目って珍しいよな。もしかして兄弟か?」




