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「わかったよ…」

「本当か!」


リオは乗り気では無いことを前面に押し出しながら渋々承諾する。

そんなリオの態度など目に入っていない様子で、ギデオンが勢いよくリオに顔を寄せた。(ひど)く疲れた顔の中の目が輝いている。リオの態度に反してすごく乗り気だ。リオを抱きしめる勢いで両肩を掴んでくる。


「助かるっ、感謝する!ベッドは十分に広いから大丈夫だ。それに安心してくれ。俺は寝相がいい」

「…そうですか」


リオは気の抜けた返事をした。

大きな手で掴まれた肩が痛い。ベッドが広いことも寝相がいいことも知ってる。でもさ、一緒に寝た時、俺を抱きしめてなかった?しかも二回とも。たまたま?抱きしめられて寝るの、寝苦しいんだけど。

リオが今まで見た中では最高の笑顔で、ギデオンがグラスに酒を注ぎ、一気に飲み干す。

最高の笑顔だとリオが思っただけで、実際は他の人が見たら、いつもの冷酷な顔なのだけど。


「では寝るか。リオは病み上がりだし馬に乗って疲れただろう?」

「そうだな、かなり疲れてる」


リオは素直に頷き立ち上がる。承諾したからには渋っていても仕方がない。一緒に寝るよ。寝てやるよ。

ギデオンも立ち上がり、先にベッドに上がる。

リオは、アンを抱いてベッドに上がり、ギデオンと反対側にアンを置いた。


「アンも一緒に寝てもいいよな?」

「ああ。しかしそこでは(つぶ)さないか?」

「大丈夫。俺も寝相がいいんだ」

「……そうか」


ニコッと笑うリオの言葉に、ギデオンが変な間をあける。

リオは不思議に思ったけど、大して気にせずに寝転んだ。


「俺、本当に疲れたからすぐにでも寝ちゃうよ?ギデオンよりも先に眠ってしまうけど、いい?」

「構わぬ。朝も俺より早く起きる必要もない」

「え、いいの?わかった。じゃあおやすみギデオン」

「おやすみ。今夜から頼んだぞ、リオ」

「ん…」


リオは(まぶた)を閉じて、ギデオンの言葉を聞いた。

この数日で、急激にいろんなことが起こって疲れた。魔法を使ってはいないし肉体労働もしていないけど、熱を出したし、精神的に疲れた。だから、アンを撫でようと伸ばした右手がアンに触れる前には、深い眠りに落ちていた。


そして夢を見た。村で暮らしていた頃の夢。村には子供が少なかったが、リオと歳の近い男の子がいた。名前はデック。リオと同じ金髪に赤い目をしていた。リオとデックはよく一緒に遊び、魔法の練習をした。魔法の力は、リオの方が強かったけど、デックもリオの次くらいに強かった。

大人になったら二人で村を守ろうと約束していたのに、デックはある日突然、いなくなった。その日のことは、おぼろげにしか覚えていない。でも、デックの母親が泣き叫ぶ姿だけは、今も鮮明に覚えている。


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