表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/81

48

ついに夜になった。

食事は本来なら食堂で食べるべきだが、疲れたからという理由で、部屋でゆっくりと()らせてもらった。

その後、ギデオン専用の風呂に入って来いと言われ、「いよいよ夜伽(よとぎ)…違う!仕事の準備か…?」と緊張しながら風呂に行き全身を洗う。アンの全身も丁寧に洗いながら、「おまえはどこへ行こうがずっと一緒だからな」と言うと、アンが即座に「アン!」と返事をした。まるで当然だと言わんばかりの態度に、リオは頬を(ゆる)ませた。

頭から被る形の丈の長い上着だけを着て、ギデオンの部屋に戻る。いや、一応下履はつけている。つけてはいるが、ズボンを履いてないからスースーして、なんとも心もとない。

先に風呂を済ませてソファーに座っていたギデオンが、リオに気づき「ここへ」と誘う。

リオと同じ服装で、既に酒のグラスを手に持っている。

リオは渋々隣に座り、「酔ってる?」と紫の瞳を見上げた。


「いや、飲み始めたばかりだ。リオにはこれを」

「ん、ありがとう」


水が入ったグラスを渡されて、リオはひと口飲む。


「あれ?おいしい」

「そうか」


透明だから水だと思っていたが、柑橘系の香りがして、少し甘味もあり、とても好みの味だ。

リオは半分くらいまでゴクゴクと飲んで、膝の上に抱いたアンを見て「あ!」と声を出す。


「なぁ、アンにも水をあげたい」

「そこに用意してあるぞ」


ギデオンの目線を追うと、ソファーの横の床に布が敷かれ、その上に水の入った皿が置いてあった。

「ありがとう」と笑って、リオはアンを皿の近くに下ろす。

アンは喉が渇いていたらしく、勢いよく水を飲み始めた。

リオがアンの傍にしゃがみこみ、柔らかい毛を撫でていると、「リオ」と呼ばれる。

いよいよ仕事か…とリオは素直に隣に座り直して緊張しながら待った。だが、いつまで待ってもギデオンが何も喋らない。ひたすら黙って酒を飲んでいる。

ついには(しび)れを切らしたリオが、「ちょっと!」と口を開いた。

ギデオンは静かにグラスを机に置くと、顔をリオに向けて「なんだ」と聞く。


「いや、なんだじゃないだろ。仕事だよ。仕事の内容は夜に話すって言ったじゃん。まさか並んで酒を飲むのが仕事じゃねぇだろうし。俺、どんな仕事か、ずーっと気になってんの。早く教えろよ」

「そうだな」


ギデオンが深く息を吸い静かに吐き出す。

常に冷静沈着なギデオンの緊張しているような態度に、一体何をさせられるのかと不安になる。

ギデオンは、正面からリオを見つめると、(かす)れた声を出した。


「リオ、俺と…一緒に寝てくれ」

「嫌だ」


打てば響く速さで、リオの口から拒絶の言葉が出た。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ