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朝餉(あさげ)を食べ終え、宿の使用人が皿を片付けて出ていくや否や、ギデオンが「返事を聞かせてくれ」とリオの隣に座った。

洗い場に口を(すす)ぎに行こうと立ち上がっていたリオは、再び腰を下ろして息を吐く。そして紫の瞳をまっすぐに見た。


「いいよ、ギデオンの家に一緒に行くよ。でもそれっていつまで?」

「いつ…までとかは、決めていない。ただ、しばらくは傍にいて欲しい」

「ふーん。まあ特に予定はないからいっか。わかった。賃金はいくら?」

「月に金貨一枚だ」

「えっ、ええっ!」

「足りないのか?なら金貨二枚…」

「いや!いい!ってか、そんなにもらっていいのか?」

「もちろん」


金貨一枚は銀貨五十枚と同等の価値がある。銀貨一枚あれば三日は暮らせる。だから半年働けば数年は楽に旅ができる!

リオはギデオンの正面に立つと、大きな手を両手で握りしめた。


「よろしくお願いします!ギデオ…雇い主を呼び捨てはよくないよな。ご主人様?」

「ふっ、ギデオンでいい。それに堅苦しい話し方もしなくていい。おまえにかしこまられると調子が狂う」


今度はギデオンが軽く笑って俺の手を握る。

そんなに気楽なことで大金をもらっていいのか、やはり裏があるのかと一瞬訝しんだが、楽に稼げるならいいかと生まれ持っての楽天的な性格ゆえに、リオは大して疑いもせず快諾した。



リオの気が変わらない内にと、ギデオンの指示で早々に荷物をまとめて宿を出た。

こんな高級宿に泊まれるなんて二度とないから、リオはゆっくりとしたかった。なんならもう一泊したかった。でもギデオンが宿を出るというなら一緒に出るしかない。

宿の主人に見送られて宿を離れても、リオはもう少し満喫したかったと()ねていた。

そんなリオを見て、ギデオンが「どうかしたか?」と聞く。


「宿…もう少しいたかった。あんな高級宿に泊まること、二度と無いし」

「そうか、すまなかったな。気が急いて慌てて出てしまった」

「いやまあ…謝ることじゃないから」


リオが勝手に拗ねていただけで、ギデオンは何一つ悪くない。拗ねていたことが急に恥ずかしくなり、リオは照れ笑いを浮かべた。

しばらく無言で歩き、リオが働いていた店が見えてきた。店を少し通り過ぎた先に、昨日、二人の騎士を縛り上げて連れていった三人が、馬の手綱を手に待っていた。

リオは、隣を歩くギデオンを見上げて聞く。


「あの人達は誰なの?」

「俺の部下だ。彼らは信用できる。道中、困ったことがあれば、頼るといい」

「部下…」

「なんだ」

「あ、ううん」


部下か。部下を持てるくらい、ギデオンは身分が高いのか。そのギデオンが、どうして俺なんかが必要なんだろ。いくら考えてもわかんないな。

まあ行ってみればなんとかなるかと軽く考えて、リオはギデオンと共に、三人の騎士の前で足を止めた。






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