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ムカつく。身分の低い者を相手にするのは嫌だってことか。

リオは早くこの場を立ち去りたくて、さっさと残りの袋を降ろした。

騎士が、リオに手を差し出しながら言う。


「代金だ。本当に助かった」

「どういたしまして」


リオは素早く硬貨を受け取ると、目も合わさずに馬に乗り、来た道を戻った。

馬が元気になったのは良かったけど、騎士と話したのは最悪だ。あんな目で見られたのはあの時以来だな。いや、あの時は、もっと複雑な…いろんな感情が混ざったような目で…。


「やめだっ、変なことは考えるな!それにしても街に着く前に売れてよかったぜ」


リオは頭を振ると、手の中の硬貨を見た。


「えっ!」


思わず声が出た。銀貨が五枚あった。あの野菜、街で全部売っても銀貨二枚くらいだと思う。売上げの半分をおばちゃんはくれると約束してくれてたから、喜んでいたのに。倍、あるじゃん。

ギデオンは、きっと身分の高い騎士なんだな。年齢からして部隊長か?でも身分の高い騎士なら、なんで一人で行動してたんだ?


「ま、関係ないか。もう会うことはないし」


リオは、美しい顔なのに、目の下に隈があるギデオンの怖い顔を思い出して、狼領主はあんな顔をしてるのかもしれないと思った。



狼領主とは、王都から遠く離れた辺境の地を治める、狼様と呼ばれる領主のことだ。狼のように鋭い目つきの怖い顔で、他人が近寄ろう者なら即座に威嚇する怖い人なのだそうだ。実際、街に買い物に来る城に仕える騎士や使用人達が「とても厳しく怖い方だ」とよく話しているらしい。


「そんなに怖いと聞くと会ってみたくなるんだよな。確か…ここの隣の領地だったな。もしかしてバッタリ会うかもしんねぇし、次は狼領主のいる土地へ行ってみよう」


次の目的地が決まり、楽しくなってきた。

荷車が軽くなったぶん、馬の足も早い。

夕方に帰ってくるはずのリオが、まだ日が高いうちに戻ってきて、おばさんは驚いていた。


「あれまぁ、もう行ってきたのかい?」

「うん。街に行く途中で売っちゃったんだけど…大丈夫だった?」

「いいよいいよ、売れたんならさ。ありがとねぇ」

「へへっ、じゃあこれ、売上げだよ」


リオはポケットから銀貨五枚を出した。

おばさんは先ほどよりも驚いていた。


「ええっ!こんなに?すごいねぇ。じゃあ、あんたの分はこれだよ」


おばさんは、リオの手から銀貨二枚を取った。

リオは慌てて残りの銀貨も渡そうとする。


「待って待って!最初の約束じゃ、銀貨一枚じゃん。だからおばさんは四枚取ってよ」

「何言ってんの。あの野菜の売り上げは、本当なら銀貨二枚だよ。半分はあんたに渡す約束だったから、銀貨二枚もらっちまうのも悪いと思ってんのに。二枚もらってもいいかね?」

「当たり前だろ!せめてもう一枚取れよ」

「いいって。後はあんたの分。これからも旅を続けるなら、いくらでもお金がいるんだから。本当に助かったよ、ありがとね」


おばさんは、どうしても銀貨を二枚以上受け取ってくれない。リオは仕方なく銀貨三枚を握りしめた。そして挨拶をして村を出て、街に向かって歩き出した。

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