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リオが働き始めてから、毎晩店に来る二人の騎士がいる。今までも、たまには来ていたようだが、今は明らかにリオ目当てで来店している客だ。

そのような客は何人かいたから、大して気にはしていなかった。その騎士達は、非常に礼儀正しく、立ち居振る舞いも上品だったから。

その日、騎士達はテーブルにつくと、すぐにリオを呼んだ。リオが笑顔で近寄ると、いつものように酒と肉料理を頼む。しかし今夜は、なぜか甘い果物を絞った果実水も頼んだ。

リオは素直に頷き、厨房に注文を伝えた。出来上がった料理と飲み物を運び、他の客に呼ばれて騎士達のテーブルを離れる。他のテーブルにも料理を運んで手が空くとすぐに、再び二人の騎士に呼ばれた。


「他にも注文ですか?」

「いや、違うんだ。この果実水は君のために頼んだんだ。飲んでくれるかな」

「えっ、いいんですか?じゃあありがたくいただきます」

「今日はいい事がある日でね。乾杯してくれる?」

「いいですよ。はい、乾杯!」


リオは果実水のグラスを持ち上げて、二人の騎士が持つ酒のグラスと合わせる。そして果汁の甘い匂いを嗅ぐと、グラスを傾けた。


「ははっ、いい飲みっぷりだな」

「はあっ…。すいません、喉が渇いてたので」

「よく動いてるからな。もう一杯飲むか?」

「いえ、大丈夫です。仕事に戻りますね」

「ああ、また後で」

「…?はい」


ずっと話していたのは灰色の髪をした二十代半ばくらいの騎士。もう一人の茶色の髪の、十代後半くらいの騎士は、気持ちの悪い笑みを浮かべてリオを見ていた。

二人はよい客だ。だけど今夜は、二人の相手をしてると嫌な気持ちになる。それに今気づいたけど、先ほどの果実水、少し変な味がしなかったか?まさかとは思うけど、薬を入れられてないよな?

リオは少し考えて、店長に休憩したいと伝えて店の裏側の路地へと出た。そこに下水を流す溝がある。リオはしゃがみ込むと、喉に指を突っ込んで、果実水を吐いた。だけど少ししか出てこない。固形の食べ物と違い、液体だから既に胃を通過してしまっている。二人を疑うことはしたくないし、何事も無ければそれでいい。しかし数年を一人で暮らしてきたリオの本能が、危険だと伝えている。

もう一度指を喉深く突っ込んで吐き出し、立ち上がった瞬間、目が回って倒れそうになる。ただの立ちくらみか。


「…違う。やっぱりさっきの果実水に…」

「よくわかったな。そうだ、興奮剤を入れたんだよ。どう?身体が熱くなってきただろ?」

「…おまえ」


いつの間に来たのか、わらかなかった。

壁に手をつくリオの目の前に、果実水をすすめてきた二人の騎士が、立ち塞がっていた。

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