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途中で乗合馬車を見つけて乗せてもらい、州境から一刻で大きな街に着いた。

州境に隣接する街は、人や物が行き来することから栄えて賑やかだったが、この街は更に賑やかだ。大通りをたくさんの人が往来し、商売人の声があちらこちらから聞こえる。

賑やかな場所に身を置くと楽しくなってくるものだ。リオは移動中、念の為に被っていたフードを脱ぐと、アンをしっかりと腕に抱いて気になる店を見て回った。

甘い匂いに誘われてパン屋の前で足を止め、卵から作った甘いクリームがたっぷりと入ったパンを買った。少し進んだ先で、今度はこうばしい香りに誘われて肉屋に寄り、長い串に焼いた肉が刺さったものを買う。パンと肉が入った紙袋を持って歩いていると、小さな広場を見つけた。花壇に花が植えられ、石を四角く切り出しただけの椅子がある。

リオはその椅子に座り、膝の上にアンを乗せて紙袋から肉を出した。

アンがジッと肉を見つめている。その視線に気づいたリオは、「待ってろよ」と笑って肉を串から抜きアンの口元に持っていく。

アンはリオと肉を交互に見た。

気にせずに食べればいいのにとアンの背中を撫で、「腹減っただろ?ほら、食べていいぞ」とリオが言うと、ようやくアンは肉を口に入れた。小さいながらも鋭い牙で肉を咀嚼し、あっという間に食べてしまう。アンの食欲に驚きながらも、たくさん食べるのはいいことだと、串に刺さった肉の半分以上をアンに与えた。肉を食べ終えると、パンをちぎってアンの口元に持っていく。しかしアンは、ふいと顔を背けると、前足をペロペロと舐め始めた。


「おまえ、やっぱり甘い物は苦手なのか?いつも食べないよな。美味しいぞ?」


リオの声に、アンが顔を上げたけど、またすぐにそっぽを向く。


「まあいいか。ほら、水飲めよ」


リオは笑って、薄っぺらい木の皿に、持っていた水筒から水を注いでやる。

アンは喉が渇いていたらしく、リオの膝から降りると、あっという間に飲み干した。そして再びリオの膝に乗り、頭を伏せて目を閉じる。

そんなアンを見て、リオは目を細めて、柔らかい毛並みの身体を何度も撫でる。

アンと出会ってから、旅がとても楽しくなった。アンと一緒なら、どこへだって行ける気がする。


「アン、ずっと一緒にいてくれよ」


ほとんど寝かけていたのに、アンは律儀に顔を上げて、返事をするようにリオの手を舐めた。



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