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アンに鼻や頬を舐められて、混乱していた気持ちが少し落ち着いてきた。

ここで蹲っていても仕方がない。あまりやりたくはないが髪の毛を染めよう。目立つ髪の色を変えるんだ。傷みそうで嫌だけど、捕まって死罪にはなりたくない。

リオはフードをしっかりと被り直し、アンに「大人しくしてろよ」と囁いて、店が立ち並ぶ通りへと向かった。

様々な物を売ってる雑貨店に入り、植物から採取された染色液の容器を手に取る。代金を払おうと声をかけたが、街のあちらこちらで起こっている騒ぎを聞きつけて見に行ったのか、店の人が誰も出てこない。仕方なく銅貨を棚の上の小皿に乗せて、急いで店を出た。半分走りながら一旦街を出て森に入る。少し歩くと川を見つけたので、アンを地面に下ろしてマントと上着を脱ぎ、先ほどの染色液を頭に満遍なくかけた。余分な液を布で拭き取り手を洗う。川に顔を映してみると、なんとか黒く染まっている。


「これで大丈夫だろう。アン、どうかな?似合ってる?」

「アン!」


アンは一瞬キョトンとしたけど、すぐに飛び跳ねてリオの膝に飛び乗った。


「ふふっ、俺たちお揃いだな」

「アン!」


リオはアンの頭を撫でると、上着とマントを着てアンを首からかけた鞄に入れ、急いで来た道を戻った。



街に入り再び州境の門に向かって歩き出す。

かなりの時間を無駄にしてしまった。少しでも早く門を抜けたい。早く隣の州に行きたい。早歩きで進みながら、素早く周りの様子をうかがう。

大丈夫。誰も俺を不審な目で見ていない。魔法でも目の色は変えることができない。だから赤いままだけど、目立つ金髪を黒髪に変えたんだ。捕まったりしない。

自分で自分を安心させるが、お尋ね者になるなんて初めてで、思わずアンを抱いた手に力がこもる。そんなリオを、鞄の中からアンが心配そうに「クゥーン」と鳴いて見上げている。

リオは「大丈夫だよ」と囁くと、そういえば俺は、なんで黒髪にしたんだろと足を止めた。世の中には茶髪の人が多いのに…としばらく考えて、ある人の顔が頭の中に浮かんだ。


「あ…そっか。ギデオンの姿が頭の中に残ってたんだ。あの人の、光が当たると青く光る黒髪がきれいだと思っていたから…」


まあでも、もう会うことは無いからと、ギデオンの姿を消し去るように頭を振ると、再び足を前に出した。


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