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状況がわからず、しばらく固まっていた。でもすぐに落ち着いて、冷静に周囲に視線を巡らせる。

うん、どうやら俺は、ベッドに寝ているらしい。しかも寝衣がはだけたギデオンの胸に抱きしめられて。え?なんで?

冷静になったと思ったけど、ドキドキと鳴り始めた心臓がうるさい。ちょっと待って。まさか、ナニされてないよな?…あ、大丈夫ぽい。ズボンも下着も履いてる。下半身に違和感もない。じゃあ、あれかな。たった二杯の酒で潰れてしまった俺を、ギデオンが寝かせてくれたのかな。その辺の床に転がしておけばいいのに、わざわざベッドに寝かせてくれるなんて、見た目に反して良い人なんだな。でもさ、抱きしめる必要はなくない?俺、女の子みたいに柔らかくないよ?筋肉はあまりないけど、抱き心地よくないよ?

顔を押しつけている逞しい胸からギデオンを見上げる。ギデオンは、規則正しい寝息を立てて、まだ深く眠っている。時おり長いまつ毛が震えるけど、全く起きそうにない。

リオは急にいたたまれなくなり、ギデオンを起こさないよう、静かにゆっくりと、まあまあ重い腕から抜け出して、ベッドから降りた。そして部屋を見回し、入口近くの棚の上に紙とペンを見つけると、ギデオンに対して無礼を詫び介抱してくれた礼を書き残して、足音も扉の開閉の音もさせずに部屋を出た。そして自分の部屋に戻ると急いで荷造りを済ませ一階に降りた。そこには既に起きていた宿の主人とノラがいたので、世話になった礼を言い、食事と宿泊代を引いて残った賃金をもらって宿を出た。

早足で宿から遠ざかりながら、ようやくリオは身体の力を抜く。一度後ろを振り返り、ギデオンが追ってきていないことを確認して、歩く速度を緩めた。


「ふぅ…、失態だった。ギデオンに、とんでもなく失礼なことしちゃったな。だってギデオンって、位の高い騎士ぽいじゃん。あいつらってさ、身分の低い者に対して冷たく厳しいからな。昨夜はギデオンも酒が入ってたから怒らなかっただけで、朝起きて同じベッドに寝てる俺を見たら、ブチ切れたかもしんないしさ。そうなる前に逃げ出せてよかった。一応謝りの書き置き残してきたし。それに今度こそ、会うことはないし…って!しまった!ギデオンから酒を運んだ対価をもらってない!あーっ!……まあいっか。昨日多めに銀貨をもらったし。盗まれたけど」


ブツブツと呟きながら歩いていると、ズキンと頭が痛むことに気づいた。起きた時は自分の置かれた状況に驚いて気にしていなかったけど、落ち着いてきたら気になって仕方がない。


「あー…これって二日酔い?あの酒、そんなに強かったの?」


美味しかったけど、やっぱり酒は苦手だと息を吐く。とりあえず常備している頭痛薬を飲む。しばらく進んでもまだ治らなかったら、次に見つけた宿で休もうと決めて、足を進める。

ひたすら黙々と歩き前方に森が見えて来た。リオは森を入った所に何か落ちているのに気づき、目を細めて見つめた。

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