表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/81

10

最上階の部屋に来た。捨て台詞を吐いて出たのに、すぐに戻って来てしまった。気まずくて困っていると、扉が開いてギデオンが顔を出した。


「何をしている。早く入れ」

「料理を持ってきたんだけど…」

「知ってる。俺がリオに持ってきてもらうよう、頼んだ」

「なんでっ?」


「うるさい」とギデオンがリオの腕を引く。

リオが中に入ると、扉を閉めて鍵をかけた。


「なんで鍵かけんの?」

「おまえスりに会ったんだろう。用心しないとな」

「くぅ…、ぶり返さないでくれよ…。ところでなんで俺もここで食べることになってんの?」

「一人で食べても味気ないだろう」

「そう…かな」


ギデオンがリオから箱を取り上げテーブルに置く。そして手際よく箱の中から料理を取り出して並べ「リオ」と名を呼んだ。


「ここに座れ」

「…うん」

「酒は飲めるか?」

「少しだけ」


ボトルの酒をグラスに注ぎ、リオと自分の前に置く。


「ありがとう」

「ふむ、誰かに酒を注いだのは初めてだな」

「それは…恐れ入ります」

「ふ…よい」


あ、また笑った。素の状態がすごく怖いから誤解してたけど、もしかしてよく笑う人なのかな。

リオはギデオンの表情を観察しながらグラスを持つと、酒をひと口飲んだ。


「うっ…苦いぃ」

「なんだその顔は。かわいい顔が台無しだな」

「だって苦いんだも…ん」


ん?今サラッとかわいいって言った?俺のことかわいいって?ギデオンは俺のことをよく思ってないと感じていたけど、そうではないのか?どちからというと好意を持ってる?でもそんなふうには微塵も感じないんだけどなぁ。

リオはチラリとギデオンの様子をうかがう。グラスの中の酒を飲み干し、ナイフで肉を切りフォークに刺して食べている。一連の動きがすごく綺麗だ。さすが育ちがいいだけある。

でもリオも、母親に厳しく躾られた。上品な動作を身につけ、出自に自信を持つように。異端の野蛮な一族だと蔑まれないように。

音を立てないよう肉を切り口に運ぶ。少し噛むだけで肉がほぐれて美味しい。肉を食べ野菜を食べパンを食べる。黙々と食べていると視線を感じて顔を上げた。


「なに?」


ギデオンが手を止めてこちらを見ている。


「きれいな食べ方だな。リオの両親は、優れた方達なのだな」

「うん…」


冷たく怖く低い声なのに、優しく聞こえる。大好きな両親を、そう言ってもらえて嬉しい。

リオは小さく頷き、溢れそうになる涙を誤魔化すために、俯いて小さくちぎったパンを口に押し込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ