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コレで終わり

 岩羽につれられてむかったのは、徳平と岩羽がはたらいている組織と、かんれんのある施設であった。

 その施設には、この街に住んでいる、異能力者たちのリストが保管されている。

 このリストには、「生別、年齢、家族構成、どんなシゴトをしているか」などの情報や、「どのような異能のチカラを持っているか」という、いわば、異能力者にとって、もっとも重要ともいえるデータも書かれている。

「ワタシたちのしょくばって、ときどき、この施設とかかわりますよね。なんせ、ワタシたちのシゴトって、この街のインフラや、行政サービスまでふくんだ、せいかつ全般にかかわる機能を維持・管理するシゴトですから。

 特にワタシたちは、異能のチカラをニンゲンと、なにかのカタチでかかわることがありますし、この施設が持ってるデータを、シゴト上、何度もつかわせてもらってますし」

「たしかに、オレも何度か来たことはあるけど。でもこの施設のことは、あまりくわしくないんだよなあ。

 じぶんがたんとうする、直接のシゴト以外のことで、この施設にくることも、れんらくすることもない」

「そうですね。ワタシもさいしょはそうでした。でも最近は、この施設によく来るんですよ」

「なんでまた?」

「この街でおきた、犯罪ジケンの解決のため、ケイサツに協力するようになってからでしょうかね。

 なにかジケンがおきたときに、その犯人が、『どういう異能のチカラを持ってるか』だとか、『どんな環境でせいかつし、どこで、どういうシゴトをしてるのか』とかって、けっこう重要になりますし」

「ホントウに、探偵みたいなことをやってるんだね」

「とはいっても、あくまで、じぶんのシゴトに支障がないていどですよ。それに、前にもいいましたが、あまりこういうことを、大っぴらにするっていうのも、チョットどうかとおもってるので」

「たしかに、こういうことにクビを突っこんで、ケイサツに協力してる。っていうことが、たくさんのニンゲンに知られると、イロイロと面倒ごとや、トラブルに巻きこまれるキケン性がたかまるか」

 徳平と岩羽が、施設の窓口にいる受付の職員にたいして、話しかけようとしたときのことである。

「あれ、トクさんじゃないですか」

 と、とつぜん、はなしかけられたのだ。声のする方向を見ると、そこには斎藤がいた。

「斎藤くんか」

「どうもです。って、アレ、いっしょにいるのは岩羽さんだよね。ふたりそろって、なんでここにいるんですか?」

「チョット用事があってね。そういう斎藤くんこそ、なんでここに?」

「じぶんも、チョットした用事があったんです」

「そういえば、斎藤くん、このまえシゴトを早退したらしいけど、体調はだいじょうぶ?」

「ええ、すこし休んだら、スッカリ良くなりました。それじゃあ、オレはこのあとも予定があるので」

 そういって、斎藤は施設からでていった。

 ふたりは、窓口にいる職員にたいして、この街にいる異能力者のリストを、見せてもらいたいと依頼をした。その職員は、上司にそうだんするといい、席をはずした。

「意外でしたね、ここに斎藤さんがいるなんて」

「ホントウに」

「このまえのジケン、徳平さんは、斎藤さんが関わってるかも。っていってましたが、たしかに、もしもワタシが関わってなかったら、斎藤さんが関わってても、おかしくないですよね」

「たしかに、アイツだったら、それこそ、いつケイサツから、ジケン解決への協力依頼がきても、おかしくないだろうし」

「ワタシそうおもいます。アタマも切れるし、それに」

「ソレに、アイツの異能のチカラは強いからね、たんじゅんに。レベルがたかいというか、パワーもあるというか。

 いろんなイミで、一般的な並のレベルの異能力者じゃあ、アイツに敵わなんとおもうよ」

「斎藤さんの異能のチカラって、たしか、『圧迫』でしたっけ」

「圧迫といわれるときもあるし、『圧縮』っていわれるときもあるらしい。

 要するに、対象にたいして、つよい圧力をかけて、あいてを押さえつけてしまう。ってものらしい。

 とはいっても、オレも何度も見たワケじゃないけど」

「ワタシも、見たことがあるのは、かぞえるほどしかないです。でも、たしかにすごかったですよ。

 こんかいの銀行強盗と違って、異能力者がおこした犯罪ジケンだったんですが、斎藤さんが呼ばれて、その異能力者たちを、圧力をかけて圧迫して、それこそ一瞬で、身うごきをとれなくしてました」

「異能力者といったって、並のレベルのあいてだったら、一瞬で押さえつけるだろうね。

 だから、犯罪者をタイホしたり、取りおさえるのに適してるから、ケイサツから、何度か協力依頼がきたと聞いたことがある」

「だから徳平さん、さいしょはワタシじゃなくて、斎藤さんが、こんかいのジケンの解決に、一枚噛んでるっておもったんですね。そういう前例があるから」

「そうなんだよね。でもまあ、あの銀行強盗のジケンのゲンバで、ケイサツがガスをつかうのを見たから、斎藤のチカラでは、ガスをじゆうにあやつるっていうのは、チョット違うというか、ムリかなとおもってね。

 ガスを抑えつけて、一カ所に留まらすことはできても、ガスのうごきを、じゆうにコントロールするっていうことまでは、まずできないだろうし。

 で、じゃあ、ガスをじゆうにコントロールして、うごかせるっていう異能力は、一体なんなのか。

 もっというと、そういう異能力を持ってるニンゲンが、オレの知ってるニンゲンのなかにいないか。っていうことをかんがえたら」

「そこで、ワタシのことが、アタマにうかんだんですよね?」

「そういうことになる」

「たしかに、ガスは空気のなかで、風に乗ってうごいてながれるモノですから。そういう発想に立てば、ワタシのナマエがアタマにうかんぶのは、しぜんというか、ムリがないとおもいます」

「なんせ、岩羽さんのチカラはたしか、『物質のうごきをあやつる』ってヤツでしょ?」

「そうです。正確にいうと、『そんざいしている、あらゆる物質や物体、ものごとのチカラのながれ・うごきをあやつる』っていうものです。

 ですから、さっきの飲食店でやったように、空気のながれを変えたり、温度を変えることができます」

「オレからいわせれば、斎藤の異能のチカラもスゴイけど、君のチカラも、十分にスゴイというか、応用が効きそうにおもえる。

 だからこそ、ケイサツは、こんかいのジケンでは、岩羽さんに、解決の依頼をしたんだろうね」

 そうこうしているうちに、もどってきた窓口の職員が、話しかけてきた。

「上司にかくにんしましたが、どんな用件で、異能力者のデータを見たいのか。ということなんですが」

「先日おきた、銀行強盗のジケンにかんけいして、異能力者がかんけいしていないか、かくにんをするひつようがでてきまして」

 そういうと、岩羽は、ケイサツからもらったのであろう依頼文書を、職員にたいして渡したのであった。

(用意がいい。すでにケイサツから、依頼文書をもらってたのか)

 徳平が、岩羽の手ぎわの良さに関心していると、窓口の職員は、慣れた感じで、岩羽がだした、ケイサツからの依頼文書を受けつけた。

(個人情報を見たいといっているのに、スンナリと許可がでそうだ。コレはつまり、彼女が何度もこの施設にきて、異能力者のデータを見てるっていうことか。

 だから、あいての職員も、不審がらずに許可をだすんだろう)

 こうかんがえてみると、先ほど岩羽がいった「よく、この施設にきている」ということは、ホントウのことかもしれない。とおもったのである。ソレと同時に、

(ケイサツも、部外者である彼女にたいして、こういうカタチで、依頼文書をつくってわたすっていうのは、彼女がケイサツにたいして協力してる回数は、オレの予想以上におおいかもしれない)

 とも、おもえた。

「そういえば、先ほどお二人が話していた、たしか斎藤さんでしたっけ。お二人と、おなじ職場のかただとおもうのですが、このかたも、お二人と、おなじようなことを依頼してきたんです。斎藤さんの件と、なにか、かんけいがあるんですか?」

 と、施設の職員がいってきた。

 こういわれた瞬間、徳平と岩羽は、たがいにカオを身あわせてしまった。徳平は、なにかいいたかったが、うまくかんがえがまとまらず、だまっていると、岩羽が

「斎藤さんも、異能力者の個人情報データを見たいと、コチラに依頼してきたんですか?」

 と、すぐ職員に聞いた。

「ええ、なんでもケイサツと共同でおこなってる、異能力者の身辺調査。とおっしゃってました。

 先日、銀行でおきた強盗ジケンに、異能力者が関わっていないか、念のため、調べるひつようができたから。とも、おっしゃってました。

 それで、お二人とおなじように、異能力者の情報を見たい。という依頼文書を受けつけましたよ」

「そうですか、斎藤さんも、ワタシたちと、おなじような依頼をしたんですね。しかも、ケイサツからの依頼文書もあったと」

「ええ」

 すこしだけ、岩羽はかんがえたようすであったが、すぐに、施設の職員にたいして答えた。

「ワタシたちと、斎藤さんの件は、直接かんけいはないです」

 岩羽がこういうと、施設の職員は、異能力者の個人情報データを閲覧できる、許可をだした。

 ふたりは、別室につれていかれ、そこで、この街にいる異能力者の個人情報データを、閲覧することにした。

 パソコンの画面を見ながら、岩羽は、じぶんが想定し、かんがえる条件に該当するのであろう、異能力者がいないかどうか、その個人情報データを見ていた。

 だがしかし、彼女が想定し、かんがえた条件に合う異能力者を、見つけることはできなかった。

「う~ん、ワタシがかんがえた条件に合う異能力者は、いないかもです。見つかりません」

「岩羽さんがかんがえる条件っていうのは、さっきの店でいってた、ヒトのキオクをけしたり、変えたり、あるいは、キオクをいじらなくても、あいての行動をじゆうにできるような。っていうヤツ?」

「そうです」

「たしかに、ふくざつなことをかんがえるニンゲンを、じゆうにあやつり、コントロールするっていうのは、カナリ条件がむずかしいというか、困難に近いというか」

「そうなんです。ワタシもそうおもいます」

「ちなみに、岩羽さんの異能のチカラって、ニンゲンのうごきまでは、あやつれないんだっけ?」

「そうです。ワタシがあやつれるのは、あくまでも、物体や物質であって、ふくざつな思考ができるイキモノまでは、あやつれません。まして、ニンゲンなんてゼッタイにムリです。

 まあ植物だとか、動物くらいだったら、すこしくらいなら、あやつることができますけど。

 でも、ふくざつな思考ができるニンゲンを、じぶんのおもいどおりに、じゆうにあやつるなんてことは、とてもじゃないができません」

「だろうね、さすがに、そんなことができるニンゲンが、つまり、そんな異能力者がいれば、そのニンゲンは、カナリたかいレベルっていうことになる。

 もしそんなヤツがいれば、おそらく、あるていど有名で、たかい知名度があって、われわれがまったく知らない。なんていうことは、さすがにない気もする」

「そうなんですよ。ワタシもソレが、さっきからずっと、アタマのなかで、引っかかってるんです。

 ニンゲンみたいに、ふくざつな思考ができるイキモノを、じゆうにあやつり、コントロールする。

 そういう、カナリ高度なことができるヒトが、ホントウにいるんでしたら、とっくにナマエが知れわたってるはずなんです」

「だよねえ。っていうことは、そういうニンゲンは、そもそも、この街に、そんざいしない。っていうことになるのか」

「そんなニンゲンは、この街に、そんざいしていないか。あるいは」

「あるいは?」

「まだ来たばかりで、ナマエが知れわたっていないとか」

「来たばかり?」

「そうです。この街に来たばかりだったら、この施設のデータに、その異能力者のナマエがないのも、ツジツマが合うんです。

 まだ無名で、この街の統治機関がつくって保管してる、こういう、異能力者を管理して、はあくするためのデータに、まだナマエが載ってないのも、十分ありえるかとおもうんです」

「そういわれると、たしかに、ツジツマが合う気がする。まだ来たばかりなら無名だろうし、あるいは、じぶんの持ってる異能のチカラを、うまく隠してるかもしれない。

 異能力の種類だとか、チカラのレベルのたかさとかを、うまく隠してる。そういう可能性は、たしかに捨てきれない」

「異能のチカラに目ざめたヒトが、この街にくるっていうのは、ぜんこく的に、いちおう、確立されたシステム・仕組みになっていますが、そもそもの前提として、じぶんが異能のチカラに目ざめたとしても、その種類・ないようを、ハッキリと自覚したり、はあくする。なんていうことは、なかなかできないはずです。

 ほとんどのニンゲンは、異能のチカラに目ざめて、その自覚をしたとしても、この街にきてから、その異能のチカラの種類・ないようだとか、つかいかた・コントロールの仕方を学ぶじゃないですか。

 だから、じぶんの持ってる異能のチカラことを、隠してたとしても、ソレはあくまで、『じぶんでも、まだ十分わかっておらず、自覚してなくて、はあくしていなかった。そして、つかいかたや、コントロールの仕方もわからなかった。だから隠していた』っていえば、ダレもなにもいわないし、批判もされないはずです。

 ですので、隠してるから、このデータにナマエが載っていない。っていう可能性は、ありえそうですね。

 いずれにせよ、もうこれ以上、この施設にいても、わかることはなさそうですね。

 ソレにあくまで、ワタシが不自然さというか、違和感のようなものをおぼえたから、うごいてるだけですし。

 これ以上、この件についてしらべたり、かんがえなければならない理由って、しょうじき、もうないんですよね。

 可能なかぎりしらべたけれど、もうコレ以上はわからなかった。っていうことで、この件は、終わりにしようかとおもうんですけど。徳平さんは、それでいいですか?」

「オレとしては、ソレでいいとおもう」

「わかりました。じゃあ、ワタシもこの件は、コレで終わりってことにしますね」

 こういうと、ふたりは施設をでて、帰っていった。

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