表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/21

8:一旦スイスに戻るが・・・

この物語はSFカテゴリーにて投稿中の『光と陰-織りなす夢の形-』のプロローグです。主人公”ヒデ”の視点でソフィアとジュリアのBLANC TWINSが描かれている日記をお楽しみください。


 《あらすじ》

1980年代のある夏の暑い日に偶然上野公園で1人の金髪美女に出会う。まるでアニメフィギュアのような容姿のソフィアにノックアウトされてしまった。生まれて初めて情熱を感じるようになった理屈っぽい性格の大学生のヒデ。そして今までろくに1人で国内旅行もしたこともない彼だが、それがきっかけで夢を探すヨーロッパへの一人旅が始まった。ヨーロッパの国々で過ごすとともに異文化や価値観の違い、また真のライフスタイルというものを実感する事になる。しかし、その先には予想もしていなかったことが起こるのであった。さて異文化の果てとは一体どんなことろなのであろうか?


日本での価値観しか知らないヒデは、スイス・フランス・イギリスと放浪しつつその国のカルチャーや価値観の違いを体感し少しずつ異文化を理解し吸収していく。

そしてその異文化の果てには・・・


その先には驚くべきパラレルワールドがあったのだ。ソフィアとジュリアの謎の双子美人姉妹 Blanc Twins との関係が深まり吸い込まれるようにSF体験をしていくのだが…


モラトリアム期間にいる思春期のヒデは『いったい自分の夢のかたちとはなんなのか?』という問いかけに悩みながら自分なりの将来を模索していく。


荒廃したパラレルワールドを舞台に水陸両用の移動ヴィークルであるホバージェットでヒデと一緒に旅をする美人姉妹の妹ジュリア。彼女と一緒に行く先々で戦いに巻き込まれながら“剣姫ジュリア”に惹かれていく。

そして2人はお互い同じ価値観を持っている事に気が付き愛が芽生えていくのだが…


ヨーロッパの中では祖国的な雰囲気を持つ英国を後にして再度ドーバーからカレーに向かうことにした。すでにフェリーが2隻ピアに入っていたので、焦って出港時刻と行き先を確認して乗り込み丁度出発直前にどうにか間に合った。再度カレーに戻るための約1時間のドーバー海峡クルーズである。今回も幸運にも天気が恵まれ快晴そして海も静かで全く荒れていない。だから甲板の上で風に当たりながらゆったりとクルーズを楽しんでいた。だがしかし、50分経過しても対岸のフランス側が見えてこないのだ。一体なぜだろう?


少し不安になったので階下に降りてみた。やはり行きのフェリーと同じ構造で2等席中央にカフェスタンドがある。丁度昼時で小腹が減ってきたのでハムチーズサンドでも買おうとメニューを眺めてみて気がついた。『あれ! フランがない! ポンドとこれはどこの国のお金?』 どうやら、乗船の時に間違えてベルギーのオーステンド行きフェリーに乗ってしまったようなのだ・・・一瞬焦ったが乗ってしまったものは仕方がない。しばし考えて、とにかく腹が減っては戦ができぬということで、ポンドでハムサンドとコーラを買ったが、釣り銭はベルギーフランだった。『しかし ということは・・・行程としてはベルギーを通過しドイツを横断しスイスに向かわなければならないことになる。なぜなら、もう一度ソフィア達に戻ってくると約束し荷物も少々残してきたからだった。』 どうしたらいいのか? トーマスクックの時刻表を睨みながら考えていた。『この便なら、明日の昼頃にはビュルに着くかもしれない! なるほど、ひとまずドイツのケルンまで行かなければならないのか・・・』とわかり、オーステンドから電車に乗りとりあえずドイツに向かった。パリ経由で帰るはずだったのであるが予定が大幅に狂ってしまったのだった。すでに旅をスタートしてから5週間が経っていたため、あと3週間しか残されていないのだ。やっとケルンに着いてドイツ初上陸を果たした。期せずして英国に続いてベルギー・ドイツと5つ目の外国となったのだった。


かなり大きな近代的な都市で駅構内も大きく複数階の構造になっている。すでに夜になっており7時を回っていた。駅構内のカフェブースでメニューを見てみると、なんとフェリーでお釣りをもらったベルギーフランが使えるではないか!?これはお宝だ! すでに両替所がクローズしていて両替ができなかったため夕食を諦めていたのだが、どうやらちょっとしたものは食べられそうだ。そしてバンズに挟まれた簡単なベーコンサンドとコーラがギリギリ買えたのだった。『やったぜ! チョー嬉しい!』と喜んで荷物を背負って椅子を探しながら駅前広場に出て行った。誰も座っていないベンチに座り、この記念すべきドイツでの初夕食をまずはベンチの上に置いて眺めてみた。『そうだ! これは記念として写真を撮ろう!』 と思い記念撮影をした。日本から持ってきた35フィルムは10本のためスイス、フランス、イギリスですでに最後の10本目を使っていたのだった。貴重な最後のフィルムではあるが、これは失敗の思い出として撮らずにいられないという孤独な心境だったのだ。小さめのバンズサンドでは満腹にはならなかったのだが取り敢えずはコーラでお腹を満たした。食べながらケルン市内の夜景を眺めていると、なんとあのゴシック建築様式で教科書でも有名なケルン大聖堂らしき教会が見えるではないか? ガイドブックで確認してみてみるとやはりそうであった。ケルン大聖堂の内部は一度見たかったのではあるが、優先順位的には『今夜をどう生きるか?』である。ドイツマルクがないためホテルには泊まることはできない。『さてどうする?』 またもやトーマスクックの時刻表を調べてみることにした。


『おっと 20分後にスイスのジュネープ行きの夜行列車が出るじゃん!』夜行と言っても寝台車両ではなく、普通のラピッド車両で深夜に走るタイプの夜行列車であった。まあこれに乗って移動すれば、明日の朝にはジュネーブに到着できるわけだ。ここドイツまで来てケルン大聖堂の見学を諦めるのは物凄く残念な気持ちで一杯ではあったのだが、20分以内で見学し発車する列車に乗り込むのはとても不可能に思えた。思わぬ事故により生まれて初めて来たドイツ、しかも今後また来る予定はないと思えるのだが、時間にして30分ぐらいの上陸で奇しくも撤収することになってしまった。ケルンは大聖堂のような歴史的建造物はあるものの、東京にでもあるような近代的なビルが立ち並んでおり今までのヨーロッパの国々のような異国的な魅力を感じることはできなかった。ただ人々は英国よりもさらに大柄なイメージで、さすがゲルマン民族と思いながら出発ホームを探した。そして『路頭に迷ったところに急遽現れた救世主』という感じで、ホームに入ってきた夜行列車に乗り込んだのであった。もちろん2等である。この列車がなければ駅のベンチで夜を明かしていたと思うと『やはり僕はラッキーなんだな!』とも思えてきた。


間も無く車掌が切符拝見に回ってきた。ユーレイルユースパスを見せると、「このパスは正式な手続きでスタートしていない。」と言っている。「いや、スイスで最初に使用しその時の車掌のスタンプももらっている。」と説明したところ「その時に日付入りのスタンプが必要だったのだ。」と言われてなんと罰金を払うことになってしまったのだった。ドイツマルクがないと言ったらスイスフランでもいいというのでそれで支払った。『ラッキーと思っていたのだが、結局これはアンラッキーになってしまった!』安ホテル1泊分ぐらいの罰金を取られたからだ。『スイスでもフランスでもベルギーでも気付かれなかったのに、さすが緻密なゲルマン民族!』とまた実感した。几帳面で細かいという噂がこれで実証できた貴重な実体験となってしまった。車窓からの風景は街灯りしか見ることができずリクライニング態勢にして少し寝ることにした。途中かなり熱があるように感じたのだが、まあ寝れば治るだろうと思いつつ、とりあえず喉が渇いていたので手持ちのミネラルウォーターで水分補給をした。そして、そのまま疲れ果てて朝まで寝入ってしまった。その間は、駅に停まった時のかすかな雑音が脳裏に残っているだけであった。


早朝ついにジュネーブ駅についた。なんとなく熱で体がダルい感じもするが、それに気が付かない振りをして、またローカル線に乗り換えツインズがいるビュルへと向かった。そして懐かしいスイスの牧歌的な風景を再度眺められてホッと一安心した。3週間の旅路の後、ついに3週間前に一度後にしたアパートに戻ってくることができたのだ。


さて、ここまでは純文学的でしたが…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ