20:これからは・・・
この物語はSFカテゴリーにて投稿中の『光と陰-織りなす夢の形-』のプロローグです。主人公”ヒデ”の視点でソフィアとジュリアのBLANC TWINSが描かれている日記をお楽しみください。
《あらすじ》
1980年代のある夏の暑い日に偶然上野公園で1人の金髪美女に出会う。まるでアニメフィギュアのような容姿のソフィアにノックアウトされてしまった。生まれて初めて情熱を感じるようになった理屈っぽい性格の大学生のヒデ。そして今までろくに1人で国内旅行もしたこともない彼だが、それがきっかけで夢を探すヨーロッパへの一人旅が始まった。ヨーロッパの国々で過ごすとともに異文化や価値観の違い、また真のライフスタイルというものを実感する事になる。しかし、その先には予想もしていなかったことが起こるのであった。さて異文化の果てとは一体どんなことろなのであろうか?
日本での価値観しか知らないヒデは、スイス・フランス・イギリスと放浪しつつその国のカルチャーや価値観の違いを体感し少しずつ異文化を理解し吸収していく。
そしてその異文化の果てには・・・
その先には驚くべきパラレルワールドがあったのだ。ソフィアとジュリアの謎の双子美人姉妹 Blanc Twins との関係が深まり吸い込まれるようにSF体験をしていくのだが…
モラトリアム期間にいる思春期のヒデは『いったい自分の夢のかたちとはなんなのか?』という問いかけに悩みながら自分なりの将来を模索していく。
荒廃したパラレルワールドを舞台に水陸両用の移動ヴィークルであるホバージェットでヒデと一緒に旅をする美人姉妹の妹ジュリア。彼女と一緒に行く先々で戦いに巻き込まれながら“剣姫ジュリア”に惹かれていく。
そして2人はお互い同じ価値観を持っている事に気が付き愛が芽生えていくのだが…
本編も宜しくお願いいたします!!
実は僕の頭の中ではジュリアとソフィアはもしかしたらAndroidではないのか?という疑念もあったのだが、今回の件でエンハンスドだと分かった。僕としてはたとえAndroidであったとしても、彼女らへの想いはヒューマンへのものと変わらない感情がありそれはそれで受け入れるつもりではいた。だがしかし、やはり彼女らも人類なんだと分かったとたん安堵し気持ちがさらに軽く前向きになっていることも実感した。彼女らがAndroidだった場合でも不思議と機械を愛するという感情ではなかった。やはり我々と同じ人間の姿をしていることが同胞へ抱く感情と同じように感じられ、自然と人間の異性に対す感触と同じように感じてしまうことも実感できた。ソフィアの話によると、彼女らの未来世界では人類の配偶者はAndroidになっている。子孫を残すということは、『国家組織が計画的にAIによる遺伝子管理の元で必要な人間のみを生産している』というイメージだという。男性の人間は成人になる頃に自分の理想の女性像をまとめ、そのイメージを元にAIがAndroidをオーダーメイドする。女性の人間の場合も同様に理想の男性をオーダーメイドする。基本的にAndroidが人間をサポートするように夫婦として生活をしているのだが、人間が歳をとるに従い希望に応じてそのAndroidも見え方を老化させていくようだ。また途中で趣味嗜好が変わった場合も一定の条件内であれば外見を微調整することもできるらしい。
僕がAndroidに抱いた感情を元にそれを考察してみると、Androidとの結婚生活は思い通りに尽くしてくれるわけでありストレスなく成り立つと思える。もしかしたら高度に進んだAIによるデジタル未来社会の中では、そういった機械やコンピューターによるサポートがパートナーとして生理的にも有効であり、むしろ人類にはAIや機械と共に生きるハイブリット社会が必須になってしまったのかもしれないと思った。今までであれば人間同士、特に夫婦での衝突は必ず起こり現代ではそれが原因で離婚率もアップしている。男女平等やダイバーシティの概念も強まりお互いにヒューマニティーを重視しなければならない社会環境に昇華してしまった。故に思ったことも言えずに悶々と内面に溜め込み病んでしまうか、いつしか耐えかねて爆発するといったことが頻繁に起こっている。それは、もしかしたら社会環境の高度化がもたらす人間同士の関係性の最終的な答えの1つになっているのかもしれない。そもそも僕らは民主主義体制が1番平等で自由な社会を創ると固く信じているからだ。
しかしながら、かつて世界の歴史では王政や帝政など実権を握った1人の人間が全てを決めるという時代が長く存在したわけである。そんな時代よりもフランス革命を皮切りに民衆による自由と平等を勝ち取った民主主義国家の方が進んだ国家であるという認識が定着してしまっている。本当にそうなのだろうか?と疑問が湧き出てきた。それは一元君主のあり様によって決まるようにも思われる。もしかしたら、聖人のような君主が上に立つのであれば、どちらの体制が良いのかその状況が変わることが実感できるのだろう。まさにここの日本政府は属代表をトップに聖人による理想の政治を実践しており、政府というよりは1つの巨大企業として国政を経営していると言えるのだろう。各セクションも予算と実績を元に可視化された評価運営がされている。しかもAIにより公正に管理されているため私腹を肥やす人間は存在しないという。そして利益は予算と実績に応じて透明に分配されていくため、ポストによる年収の違いはあるものの、貨幣ではなくポイントとして還元され、そのポイントを使用して生活をすることになる。しかしながら衣食住に関わる必需品に関してはバリエーションはなく厳選されたアイテムが平等に配給される。ここはかつての共産国家のそれと変わりはないのだが、アイテムのレベルはどれも満足がいくものである。必ずしも全員が必要としない趣味性の高いアイテムに関しては各自自分のポイントを使ってオンラインで購入していく仕組みになっているのだ。また居住空間も成人となった時点で国から用意されるため、1人用と2人用があるだけで住居による貧富の差も発生しない。ここでは18歳の成人になるまでは、ボーディングスクールでの寄宿生活による男女別の集団生活をしている。そして18歳から20歳になるまでのモラトリアム期間を経て職種を選び国の仕事に従事すると同時にAIによる配偶者の選抜期間に入るらしい。
またそれ以前の配偶者選びであるが、僕らの元世界では、『これって今更成り立つのであろうか?』という疑問がでてくるのであるが、いわゆる日本の昔の『お見合い』と同じ仕組みによって結婚相手が決まっていたと言う。しかし、今でも自由恋愛による結婚よりお見合いによる結婚の方が離婚率も低いというデータもあるし、しかも前もってアプリを通して希望や趣味嗜好はAIにインプットされ選択させる仕組みのためある程度の想定内に収まっていた。 まあ僕らの世界もそうなりつつあるが、先行きの不安から男女間の交流があまりなくなってきてしまった。このパラレルワールドでは、もしかしたら自由恋愛をしていたのなら結婚率がものすごく下がり、またまた日本の人口がさらに減って絶滅の危機に陥ったのかもしれない。しかしここに来て思ったことではあるが、ヨーロッパの小国家が実現しているように、今まさにここの日本も人口が少ないほぼ単一民族国家となっている。そして価値観や考え方は一つの方向を向いて政策が進めていけるため何事においてもとてもシンプルな仕組みが構築できてきているのだ。
様々な利己的な思惑や主張が介在すると意思決定までが複雑化し可視化することが難しくなる。そこに不要な『欲』が介在していく隙間を与えてしまうのだと思う。今のところここに滞在しての感想としては、少ない人間とAIやロボットとの共存は心地よい環境になっている。ただAIが暴走しないような管理体制が必須であり、それをソフィアが未来の経験からサポートしているのだ。またAndroidもこの世界では自我を持つまで成熟しきっていないため危険分子にはなっておらず共存できている状態であるようだ。
という風に、ソフィアとジュリアの2人とこの世界の良いことなどを珍しく真剣に話し合っていた。
ソフィアは僕の遺伝子の解析とその結果を未来に応用できるようにできれば、またスイスに戻れるのだという。ではそれを未来にはどう応用するのだろう? ここの日本でその結果をインプットすることにより、それが時間を経て未来にも反映されるのだという。つまり未来に花咲くタネを植えると言うことらしいのだ。つまりそれが完了することにより僕が未来のAndroidから命を狙われることは無くなるらしいのだが・・・それまでどのぐらいかかるのか? ソフィアも今その遺伝子実験の最中であり、またそれが成功するまである程度の期間が必要らしいのだ。
僕が予想する未来社会を描写してみました。皆さんはいかがでしょうか??
次回でこの上巻は終わりになりますが、下巻がまたアップしますのでお楽しみに!




