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1:出会い

この物語はSFカテゴリーにて投稿中の『光と陰-織りなす夢の形-』のプロローグです。主人公”ヒデ”の視点でソフィアとジュリアのBLANC TWINSが描かれている日記をお楽しみください。

　《あらすじ》

1980年代のある夏の暑い日に偶然上野公園で１人の金髪美女に出会う。まるでアニメフィギュアのような容姿のソフィアにノックアウトされてしまった。生まれて初めて情熱を感じるようになった理屈っぽい性格の大学生のヒデ。そして今までろくに1人で国内旅行もしたこともない彼だが、それがきっかけで夢を探すヨーロッパへの一人旅が始まった。ヨーロッパの国々で過ごすとともに異文化や価値観の違い、また真のライフスタイルというものを実感する事になる。しかし、その先には予想もしていなかったことが起こるのであった。さて異文化の果てとは一体どんなことろなのであろうか？

日本での価値観しか知らないヒデは、スイス・フランス・イギリスと放浪しつつその国のカルチャーや価値観の違いを体感し少しずつ異文化を理解し吸収していく。

そしてその異文化の果てには・・・

その先には驚くべきパラレルワールドがあったのだ。ソフィアとジュリアの謎の双子美人姉妹　Blanc　Twins との関係が深まり吸い込まれるようにSF体験をしていくのだが…

モラトリアム期間にいる思春期のヒデは『いったい自分の夢のかたちとはなんなのか？』という問いかけに悩みながら自分なりの将来を模索していく。

荒廃したパラレルワールドを舞台に水陸両用の移動ヴィークルであるホバージェットでヒデと一緒に旅をする美人姉妹の妹ジュリア。彼女と一緒に行く先々で戦いに巻き込まれながら“剣姫ジュリア”に惹かれていく。

そして2人はお互い同じ価値観を持っている事に気が付き愛が芽生えていくのだが…

この物語は主人公ヒデが綴るソフィアとジュリアとの冒険日記となっています。

そしてこの上巻・下巻が『光と陰ー織りなす夢の形』へと繋がっていくのです。

先に『光と陰』と読んで頂いた方々は、『なるほど、そういうことだったのか！？』と思われるかもしれません。

また、この日記から読み進めて行く方々は是非『光と陰』本編も読んで頂きたいと思います。

全４巻用意しておりますのでBLANC TWINSとともに様々な冒険を体験して頂きたいと思います。

それは８０年代のある夏の暑い日だった。

ついにジュネーブ空港についた。

北回りチューリッヒ経由のスイス航空便だ。

イミグレを通過しバゲッジクレイムホールへと向かう。搭乗していたフライトナンバーが表示されているベルトコンベアを探し自分の荷物が出てくるのを待っているところだ。最後の方からやっとグレーの登山リュックが出てきた。ついに待ちに待った約２ヶ月間のヨーロッパ放浪の旅の始まりである。

人間とは不思議な生き物だ。

そもそも３千円の小さなリュックサックを買ったのがきっかけの１人旅。始まりはそのブラウンのクラシックなリュックを背負ってヨーロッパの石畳を歩いてみたくなったのだった。３千円が総経費約５０万円の旅行に化けてしまったのだが、僕の将来を変えると人間形成上重要な旅ともなったのだ。

さてドキドキしながらゲートを出てきた。ソフィアが待っているはずだ。

いた！彼女だ。丁度ゲートを出たあたりにブロンドの健康的な女性が待っていた。

英語で「ハーイ、ソフィア！迎えに来てくれて有難う！」と握手しようとしたら、

「スイスでは歓迎するときにキスするんだけどいい？」と

一瞬驚いたが「もちろん！」とハニカミながら答えるや否やキスされたのである。いきなりのキスに驚かされて、実は女性慣れしていないのだが、それを悟られないように動じないフリをして一緒にジュネーブ空港の外に出てきた。実際の心境はドキドキであった。キスの歓迎で気持ちが動転した状態で、無意識のうちに空港のパーキングに駐車してある彼女の車まで来ていたのだった。彼女の愛車は今流行りのプジョー205GTI。カラーはもちろんピュアレッド。彼女の雰囲気に合う軽やかなスポーティーな車だ。

では、まずは彼女との出会いをお話ししよう。

大学１年生の夏休みに上野の国会図書館に通っていたのだ。何かの勉強をするというよりは、学生時代の夏休みを無駄にしないように何かを学ぶと言う名目と、また学割通学定期もあったため予備校時代に通っていた癖で暇つぶしのようなものでもあった。自分では人生の目的を見つけるための研究と言い聞かせていたのだが、実は一番の理由はこの図書館の大正ロマン的な空間が気にいっていたのだっだ。外観は赤煉瓦造りの歴史ある重厚な洋館。中もそれに準じた懐かしい造りである。図書設備の他に大正ロマン風の理髪店もあり割安な食堂もあったので昼前に到着するようにしてよく昼食を取ったものだ。特に閲覧した書籍は外国に関する歴史・文化、民族・地理といった写真が多いものをかたっぱしから見ていった記憶がある。全てヨーロッパに関するものがメインではあった。高校生の時からヨーロッパに関しては憧れの対象であり、この洋館でそれに関するものに触れていればいつしかヨーロッパに行けるチャンスがあると不思議と固く信じていたのだった。

そして、ある暑い日の帰り道だった。いつものように駅に向かい上野公園を横切って歩いていると、無意識にブロンドの女性が目に入った。通行人に道を聞いているように見えたが誰も相手をしようとしていない。

これは何かの縁かなと直感で感じ勇気を振り絞って英語で話かけてみた。人生初の試みである。

すると「近代美術館を探しているんだけど、どこにあるか分かりますか？」ということであった。

分かりますよということで案内をしたのであるが、あいにくその日は休館だったのだ。

彼女はアートが大好きでとても残念がっていたのだが、折角気合と入れて声を掛けたので、さらに勇気を振り絞って「暑いからラムネでも飲みますか？」と緊張しながらも誘ってみた。すると彼女は笑顔で応じてくれて、

公園の露店でラムネを２つ買いベンチに腰掛けて話し始めていた。

２０分か３０分か？　定かではないが物凄く楽しいひと時であった。

第１印象ではアメリカ人かと思ったのだが、なんと彼女はスイスのフランス語圏から来ており、２週間の日本観光に来ていたのだった。

週末の明日に帰国するため今日が最終日になるという。白人でも染めたブロンドが多い中、彼女はナチュラルブロンドでブルーの瞳であった。背丈は１６８センチぐらいだろうか？　さらに彼女の容姿を描いてみると、顔は顎が少し尖った卵形の輪郭の中に大きめの目が中央から若干外より気味で付いている。鼻は白人としては小さめで先が少し尖り気味である。口はというと目と同じような大きさで唇も厚くもなく薄くもなくのとても美形でまるでマネキンのように整っており額は広めであった。見た目は１００パーセントコーカソイド系ではあるが、いわゆる外人外人とした立体的な派手さはなく、どちらかというと先祖にアジア系が混じっているスラブ系のような印象を受けた。スタイルは細身であるがスポーツをやっているかのような筋肉質で健康的な日焼けがある。年齢は少し僕よりは年上に感じた。表情は始終笑顔で、ブロンドの髪を高い位置でポニーテールにまとめているため快活でナチュラルなイメージをさらに魅力的に魅せていた。まるで夢にみた金髪碧眼の美女であった。

旅行が好きだということで話が盛り上がり、人生初の白人女性との会話を楽しんだのだが、そもそも美術館での絵画鑑賞が大好きで中でもモジリアーニが１番のお気に入りらしい。そして別れ際にもしスイスに来る予定があれば、遠慮なくうちに泊まってねと言い残してアドレスを書いてくれた。そう　この彼女との出会いがこのヨーロッパ放浪の旅の始まりだったのだ。

『おいおいおい』というぐらいスイスの高速道路を飛ばしていった。

『このプジョーこんなにスピードでるのかな？』　と思うぐらい横目でメーターを見ると１６０キロぐらい出してまるで飛んでいるような感覚であった。都市部を抜けてどんどん視界はグリーンになっていき、ジュネーブからあっという間にビュルという小さい町に到着した。

緑の丘という言い方をした方が当てはまると思うが、その小さい丘がポコポコと連なっている風景の中にシャレーと言われるスイスらしい木造平屋の家がポツポツと点在していた。しかしこのシャレーはよく日本で見かけるスイスの観光写真のお家とは若干異なる。そうそうここはフランス語圏なのだ。彼女の住居は住宅地にあるため車は路地に入っていった。

しかし初めて見たヨーロッパの風景・・・

小さい緑の丘の頂にフランス風のとんがり屋根の教会があり、それを中心に可愛い家々が取り巻いているといったまるでおとぎ話のような世界だ。ドイツ語圏であればもっとデザインが直線的なんだろうが、ここフランス語圏は柔らかい輪郭の印象となっている。少なくとも僕の中では、夢に見るメルヘンの箱庭にも思えた。

彼女の家はベージュの４階建てのいかにもヨーロッパというマンションの３階であった。車から降りリュックを持って階段を上がる。どんな部屋なのだろうか？　とイメージが広がる前に彼女はドアを開けた。

なるほど　これがヨーロッパのお部屋なんだな。

おや！もう１人若い女性がいるではないか？？

ソフィアから紹介されたのだがなんと双子の妹だそうだ。

凄い！　これが一卵性双生児というものなのか？　日本でも見たことがなかったが、こんなに瓜２つだとは思ってもいなかった。２人の違いは、髪色と髪型が違うだけで他は顔も身長も体型も全く同じであった。

妹の名前はジュリア。いかにも２人ともフランス系らしい名前だ。そして姉がブロンドであるのに対して、いわゆる銀髪のプラチナブロンドのショートボブなのだ。ソフィアが健康的な日焼けをしている分、陽な雰囲気であるのに対して、ジュリアは透き通るような色白で陰な雰囲気がある。同じ顔同じ背格好であるのに髪色や髪型でこんなにも雰囲気が違うものか？と思えるぐらい対照的な仕上がりになっている。普通こういったツインズ達は意識的に似通った格好をするのが常と思っていたのだが、その事前知識が見事に覆させられたのであった。

そしてその瞬間冷静に我に帰り、今僕が置かれた状況がどういう状況かを理解した。生まれて初めて外国人女性が２人もいる彼女らのプライベートスペースに身を置いているのであった！　その状況を認識したら、またもや心臓の鼓動が速くなってきて緊張した面持ちでジュリアに自己紹介をした。彼女はヨガが好きで丁度僕らが到着した時はヨガを始めようとしていた時だったようだ。そして驚く事にスポーツブラとパンティというイデタチだったのだった。といっても見た目はほぼ裸同然である。そしてお互いの自己紹介が済むと一瞬青い目が輝いただけで表情的にはあまり反応がなく自分の部屋に戻って行った。ソフィアに聞くと彼女はシャイで趣味がヨガ、それもいつも裸でやっているとのことであった。少し筋肉質で贅肉が全くないバランス抜群のプロポーションであり、ソフィアと違い日差しを避けているのか透き通るような白い肌と銀髪が異様に合っていた。なるほどヨガが好きだということはうなずけるし、ソフィアと比べると対照的で第３者的に見るとこの姉妹の美貌には甲乙つけ難いところがある。そういったツインズとの共同生活が始まると思うとワクワクドキドキしてくるし、思い切ってヨーロッパ放浪の旅に踏み切った自分に感謝したのだった。

なんだかんだしているうちに、すでに午後４時をまわっていた。

僕はソフィアの部屋に通されてスイスに滞在している間は彼女の部屋を使わせてもらうことになった。

まず彼女達の部屋の雰囲気を説明しておこう。やはりスイスのフランス語圏は石造りの住宅が一般的なのであろうか？　このマンションは豪華ではないがフロアーも大理石の床材である。そして壁はオフホワイトの塗り壁。家具はチョコレートブラウンの猫足とまではいかないものの良質な木材を使ったクラシックなデザインである。中央にはクイーンサイズの立派なベッドが置いてあり、壁面にも同じ木材のワードローブやキャビネットがあるといったシンプルな部屋だ。日本では家具の木材の種類やカラーを完璧に合わせるという事に拘っていないようにおもうが、やはりヨーロッパのカルチャーではコーディネートすることが当たり前なんだなと改めて感じた。早速日本から一緒だった大きなリュックを置いてベッドに座ってみた。こうやって落ち着いてみると成田を出発してすでに１８時間ぐらい経っていたのだった。これからの冒険に想いを馳せしばしボーッと窓の外の青空を眺めていた。

どうやらとても疲れていたらしくベッドの上でいつの間にか眠りこけてしまっていた。ソフィアの呼びかけでふと我に返って起き、呼ばれるままにキッチンに行ってみると姉妹で何やら料理をしていた。太めのスパゲッティを茹でている最中でソースはトマトソースのようだ。

「私たちは料理が苦手で普段はあまり料理しないんだけど、今日はヒデのために特別に料理しているのよ。トマトソースは好き？」「わー感激！　トマトソーススパゲッティは僕の大好物だよ！」という会話を交わしながら彼女らを眺めていた。僕が居眠りしている間にすでにダイニングにはテーブルセッティングがされており、どうやらスパゲッティにグリーンサラダに赤ワインといった感じのようだ。結構大きめのテーブルに３席用意されており料理がサーブされた。僕が赤ワインのコルクを開けてソムリエのようにグラスに注ぎ、楽しい雰囲気で彼女らが作った料理でウェルカムパーティーが始まった。

まずスパゲッティであるが、トマトソースはいささかシンプルなテイストであるが、まあ食べられるレベルのものであった。肝心のスパゲッティは腰があるという表現に収めたいところだが、ちょっと硬くてあまり美味しいというレベルではなかった。まあ料理は得意ではないと言っていただけあってその通りだと思った。「どおかな？　美味しい？」とソフィアに聞かれたが、事前の欧米研究での事を思いました。そう日本人は失礼がないようにと本音を言わずに不可解な国民と言われているというエピソードが頭をよぎったのだった。「トマトソースは美味しいけど・・・スパゲッティはちょっと僕には堅いかな？」と意図的に言ってしまった。するとソフィアは機嫌が悪くなり、「料理は上手くないといったでしょ！？」と俯いてしまったのだ。正直にいうことで日本人らしくないという事を演出したかったのだが、どうやら逆に傷つけてしまったらしい。不可解な国民と言われる前に、人間性が問われることになったのかもしれない。失敗第一弾ということで今後の反省としたい。

そのうち彼女も機嫌を取り戻してくれて、この後は３人で楽しい食事ができた。話題としては明日から僕はどんなプランなのか？であった。まずは２週間ばかりここでお世話になりながらスイス国内を見て回り、その後事前にアポを取っているイギリスに渡る事を話した。その前にまずパリに出てそこでも２週間ぐらいいたいと思ってはいるが、バックパッカーの気ままな旅なので気が変わるかもしれないとも付け足そうとしたが、パリに行くということを言った瞬間ソフィアの顔が明るくなった。「えっ　パリに行くの？　私達も一緒に行ってもいいかな？」間髪入れずに「私達もパリに行かなくちゃいけない用事があって３人でいけば楽しくない！？」と。「フランス語　話せないでしょ？」まさにその通りであり否定はできない。まあこの美人姉妹との旅を想像すると楽しいこと間違いなしということで快諾した。彼女らはパリに残り、僕は別れてイギリスに渡るという計画で一致したのだった。そしてその後はまたスイスに戻り彼女らのアパートで合流するというラフプランまでできあがってしまったのだ。彼女らがパリでやらなくちゃいけないことの詳細は教えてくれなかったのだが、ソフィアはいわゆるヘアドレッサーの仕事をしているので、それ系のことではないか？と推察した。まあ細かく立ち入るのはここの場ではやめておこう。なんせ実際には会ってまだ２回目なのだから。そして話題は将来の話に移って行った。

ソフィアはこのままヘアドレッサーとして経験を積んで自分のヘアサロンを持ちたいのだと言う。ジュリアはまだはっきりとした夢はないのだが、ヨガや武道に興味があり弓や刀剣での戦い方を鍛えられるいわゆる西洋の道場にも通っているらしいのだ。武道が趣味なのかと驚くと同時に本当にこのツインズは趣味嗜好が真逆なのに驚いた。僕はファッションが好きだからファッション関係の仕事がしたいかなという話題となり、何故なら半年先１年先の流行りが読める特技があって、「こんなものが流行るかな？と思うと本当に流行ってしまうことが日常茶飯事なんだ。」という説明も付け加えた。２人はその事にやけに反応し詳しい具体的な過去にあった事柄を聞きたがっていたので詳しく僕の英語で表現できるレベルで説明した。

その晩は食後にシャワーを浴びて姉妹にお休みの挨拶をして寝室に行った。こんな美人姉妹とディナータイムを持っただけでもとても幸せなことであるが、これから少なくても２週間は共同生活ということで興奮している自分がいた。僕に寝室を譲ったソフィアはリビングのソファベッドで寝ることになるためすでにベッドメイキングが済んでおり、ジュリアも自分の寝室に戻って行った。ソフィアがいるリビングはすでにサイドテーブルのナイトライトだけが点灯していた。『そうか、やはり映画でも見たがヨーロッパでは、ほとんど真っ暗な状態で寝るんだな』と思った。

そして僕も照明を消してベッドに入った。冷静に考えると日本を出て生まれて初めての外国スイスに辿り着き今日は長い旅の初日である。まず国内もろくに１人旅をしたことがない僕にとっては、無事にここまで辿り着けたということはそもそも快挙であるのだ。新たな人生の１ページといっても過言ではない。それとたまたま上野公園で１度だけ会った金髪美人と数回文通はしたものの、２回目の今日こんなにも親交を深めることができたのは、まさに運命の出会いに違いないと瞑想に耽っているうちに寝てしまったようだ。

このプロローグは、本編『光と陰ー織りなす夢の形』の序編になります。

この物語から読み始めて頂いた方々は、是非このプロローグ（上）（下）を読み終えた後に、本編を読んで頂くとそのまま物語が繋がりますので是非本編もお楽しみください。シーズ1からシーズン3まで投稿済みです。