表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/36

白百合の祝福34

「嫌あああーーーママーーー‼︎」


戦場に悲痛な叫びが響き渡る、斧が直撃した左肩の傷口からは大量の血が噴き出し


ゼナおばさんは力無く膝から崩れ落ちた。


「ゼナおばさん‼」


とっさに私も叫んだがおそらくその声は届いていないだろう


大量に溢れ出ていく血液が地面を真っ赤に染めていく。


「ミランダさん、早く治癒魔法を‼」


すがるような思いでミランダさんに呼びかける、しかし彼女は目を閉じ、首を振った。


「無理なのよ、もう魔力が……」


わかっていた、わかってはいたが言わずにはいられなかった。


周りを囲んでいた敵も随分数が減ったが、それでもあと四人残っている。


この四人はガバルディの側近だけあって中々に手強い、だが一刻も早くエレナ先輩の元へと駆けつけなければ、彼女は……


「どけ、ゴミムシども‼」


感情のままに威嚇気味の言葉を吐き出す、だがそれで引いてくれるほど敵は甘くはない。


剣の腕だけならば間違いなく私の方が上だが、ガバルディの側近達は戦い慣れしている百戦錬磨の猛者たちだ。


ゼナおばさんはその身に強烈な一撃を受け、命の灯火が消え去るまでもうわずかな時間しか残されていない事は


誰の目から見ても明らかであった。


「ママーーー、死んではダメ、ママーーー‼」


動かない体を無理矢理動かし、地面を這いずるようににじり寄っていくエレナ先輩


純白の衣装がゼナおばさんの血で真っ赤に染まっていく。


「ふっ、馬鹿なババアだぜ、最後は自分の身を犠牲にして娘を守りやがった。


そんなことをしても、どちらが先に死ぬかの差でしかないっていうのによ」


二人を嘲笑いながら、まるで虫を観察するかのようにニヤニヤと見下ろすガバルディ


〈どのタイミングで殺してやろうか〉などという残忍な考えを巡らせているようにすら見えた。


 致命傷を受けたゼナおばさんは呼吸も浅くなり、目もよく見えていない様子であった。


そこにエレナ先輩がにじり寄り話しかける。


「ママ、死んじゃ嫌、死なないでよ……」


ボロボロと涙を流しながら横たわる母に必死で語りかける


母親の最後の時を前にして素直に思いを告げているように見えた。


「ハアハアハア、エレナ……そこにいるの?」


「うん、いるよ、ママ、ここにいる」


「エレナ……今まで御免なさい、私は本当にダメな母親だったわ……あなたに辛い思いばかりさせて……本当に御免なさいね……」


「そんな事ない、そんな事ないから……死なないで‼」


何度も首を振りながら、ボロボロと涙を流し訴えるように語りかける。


そんな光景を見ていたガバルディは、わざとらしく大きなため息をついた。


「ハア〜〜、安い芝居を見せられている気分だぜ、全く見ていられないな。


もういい、テメエから死ね、クソババア」


ガバルディは面倒臭そうに頭をかきながら、右手で斧を振り上げた。


「エレナ……私の大事な娘……ずっと貴方を愛しているわ……」


その言葉を聞いたエレナ先輩は大きく目を見開くと、息を引き取ろうとしている母親の姿をマジマジと見つめた。


その時である。突然エレナ先輩の体から赤い正体不明の放射物が噴き出してきたのである。


「な、何だ⁉︎」


突然起きた怪現象に戸惑うガバルディ、私を含む周りの人間達もその正体不明の現象に困惑し、ことの成り行きを見守った。


「ああああああーーー‼」


その小さな体からは想像できないほどの声をあげる、それは大声というより魂の叫び、雄叫びと言ってもよかった。


体から放出される赤い放射物は霊的なエネルギーのようでもあり、人知を超えた神秘的な現象にすら思えた。


「あの赤いオーラは……まさか⁉︎」


ミランダさんが何かに気がついたようだが、私には何が起きているのか全くわからず、ただ呆然と見守っていた


。するとエレナ先輩に起きているある異変に気がついた、それは先輩の体が徐々に大きくなっていいたのだ。


正確にいえば成長していると言った方がいいのだろうか?


見た目が十二、三歳程度にしか見えなかったエレナ先輩が年齢相応の姿に変化していった。


赤い煙のようなオーラの放出が終わると、エレナ先輩は何事も無かったかのようにスッと立ち上がる


その姿はとても美しく、まるで絵画から出てきたかのような神秘性すら感じられた。


「そうか、【女神の祝福】とはそういうことだったのか……」


ミランダさんがこの現象の正体に気がついた。


「幼い頃にエレナは女神に対して〈ママのように強くなりたい〉と願った


それは剣の実力の事だとばかり思っていたけれど、それは違ったんだ……


精神的な部分も含めた強さ。母親へのわだかまりとコンプレックスがエレナの精神の成長を止めていた。


だから女神はタイムリミットを設けて罰を与えた。しかしここに来てエレナは母親との確執を解消し


精神的に成長を遂げ、ようやくゼナに追いつくことができた、だから女神は呪いを解いたという事か……


わかってみればこんな単純な事だったなんて、我ながら気がつくのが遅いっての‼」


【女神の祝福】の謎を解明した事よりも、自分自身に怒りを覚えている様子であった。


「ママ、剣を借りるね」


呪いが解消されたエレナ先輩は、地面に横たわっている母に優しくそう告げた。


そして母親の剣をそっと拾い上げる。


「ほう、どういうからくりかしらないが、乳臭いガキだった奴が随分といい女になったじゃねーか。


しかし何がどうなろうと俺には勝てん、俺が最強だ」


口元を緩め、不敵な笑みを浮かべるガバルディ、そして再び斧を構え戦闘体制に入る。


「ガバルディ、貴様だけは絶対に許さん」


鋭い眼差しで仇敵ともいえる相手を睨みつける、そして二人は余韻を感じることもなく、戦いの火蓋は切って落とされた。


「でああああ‼」


巨漢のガバルディに対し躊躇なく猛攻を仕掛けるエレナ先輩


年齢相応の姿に戻った彼女の戦闘力は凄まじかった。以前から桁違いのスピードと技術を持ち合わせてはいたのだが


今はそれに力強さが加わったのである、それはまさに人間を超えた超人的な強さであった。


「クソが‼」


覚醒したエレナ先輩を相手になすすべ無く攻め込まれるガバルディ、一方的な展開に思わず悪態をつくが


それでも伝説の武具【ロンデリオンの鎧】の牙城は崩せない。


何度も急所に一撃を叩き込むが、その都度弾き返された。


難攻不落ともいえる鎧を前にして、エレナ先輩は一旦間合いをとる


「ハハハハハ、貴様は強い、単純な剣の技術ならば俺より数段強いのだろう。


だがこの鎧がある限り最後に勝つのは俺だ。いくら活動時間に制限が無くなったとしても


人間には体力の限界というものがある、俺は貴様のバテるのを、ただ待っていればいいのだからな」


勝利を確信し、強者を気取る敵に対し、エレナ先輩は悔しさを滲ませる。


「遅くなりました」


ようやくガバルディの側近達を全て退け、慌てて加勢に入ると、先輩はクスリと微笑みながら小さくうなずいた。


「来たわね、リアちゃん。でもあの鎧の攻略法が見つからないのよ」


相手に聞こえない程度の小声で話してくる。これほど強いエレナ先輩ですら伝説の鎧の前では打つ手がなく、攻めあぐねているようだ。


ガバルディは相手の体力が尽きるまで耐える、という持久戦の構えをとっているので


基本向こうからは仕掛けてはこない。そこで私はある提案をしてみる。


「ここは私に任せてくれませんか?」


「何を言い出すのよ、今の私でもあの鎧には苦戦しているのに……」


驚きの表情をうかべ、言葉を濁した先輩。しかしその先は言わなくても理解できた。


〈私でさえ苦戦しているのに、私より弱い貴方がどうにかできる訳がないでしょう〉と言いたいのだろう。


確かにそれは事実だ、覚醒したエレナ先輩は一段と凄みを増し、スピード、技術、技のキレ


どれをとっても超一流の域に達していて、今の私ではとてもかなわない。


だが、ただ一点において、いまだに私の方が優れている点がある、そしてそれこそがこの場面で必要なのだ。


それは力、今の覚醒したエレナ先輩を見ても確信できる。単純なパワーだけならば私の方が優れていると。


「ここは黙って私に任せてください」


「でも……」


やはり私に任せることを躊躇している様子だ。ゼナおばさんを失い、私までも死んでしまったら……


と考えているのだろう。エレナ先輩らしい気遣いだ。しかしそんな優しさは今の私には屈辱でしかなかった


それは言い換えれば〈私を信用していない〉と言うことに他ならないからである。


「私はエレナ先輩の何ですか、保護対象者ですか?弟子ですか?パートナーですよね?


その相棒が〈信じてくれ〉と言っているのです、お互いに信頼あってこその相棒のはずですよ」


私はやや語気を強めて訴えたが、先輩はまだ躊躇している様子であった。


視線を逸らし、険しい顔で何かを考えていて、明確な返事をしてはくれない。


そんな彼女の態度にだんだん腹が立ってきて、私は思い切って自分の思いをぶちまけた。


「こっちを見て、私を信じなさい エレナ‼」


驚いた様子で私の顔を見つめるエレナ、両目を大きく見開き、一瞬震えたようにも見えた。


「わかった、任せるわ、リア」


私は小さく頷くと、ガバルディの前にでる。


「ほう、今度はもう一人の英雄の娘か。テメエも少々腕に自信があるようだが、この俺にかかれば……」


「黙れ」


ガバルディが饒舌にしゃべっている最中、それを遮るように口を挟んだ。


「貴様のようなゲスと、同じ空気を吸っていると思うだけで汚らわしい。


今息の根を止めてやるからさっさとかかってこい」


私はガバルディを挑発するように言い放つ。相手に待たれるよりも、攻撃してくれた方が隙も出来やすいし


相手の力も利用できる、という考えから来ている。


そう、私の狙いは、ある一点のみに狙いを絞ったカウンター攻撃だ。


その効果もあってか、ガバルディは怒りのあまりブルブルと震え出す


私の言葉がよほど腹にすえかねたのだろう、怒鳴るような大声で威嚇してきた。


「ナメているんじゃねーぞ、このクソアマ‼貴様はただでは殺さん。


生きていることを後悔するほど、じっくりといたぶり殺してやるぞ。


挑発に怒り心頭のガバルディ、しめしめ狙い通りだ。私は相手に対して半身の構えを取ると重心を下げて腰を落とす


そして剣先に全てを乗せ、狙いを定めた。これは私が得意とする【五月雨】の構えだが


そこからさらに体制を低くし、弓を引き絞るように構えをとった。


頑張って毎日投稿する予定です。少しでも〈面白い〉〈続きが読みたい〉と思ってくれたならブックマーク登録と本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです、ものすごく励みになります、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ