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白百合の祝福27

「聞いての通りだ。まず相手の陣形に対しミランダの魔法で先制の一撃を加える。


相手は何が起こったのかわからず困惑するだろう、そこを一気に突く。


相手の乱れに乗じて突撃陣形のまま一点突破を図り、一気にガバルディの元まで切り込む。


何があっても止まるな。奴の元へ必ずエレナとリアを連れて行く、先陣は私が切る。


我々は平和と秩序のために戦うのだ、白百合騎士団の意地と誇りを奴らに見せつけてやるぞ‼」


 〈おおおーーー〉という歓声と共に、団員達の士気が一気に高まる。


興奮状態で己を鼓舞する者、武者震いに震える者、感極まって涙を流す者、表現方法はそれぞれであった。


廃墟と化した建物の中で、熱気と闘争心が膨れ上がり、見ているこちらにも皆の決意が伝わってきた。


 団員達が感激のあまり騎士団長の周りを囲み、溢れんばかりの熱い思いを語っていた。


ゼナおばさんも団員たちの熱い思いを受け、何度も頷きながら応えている。


私とエレナ先輩はその輪には入らず、少し離れたところからその光景を見ていた。


「あんた達も混ざってこればいいじゃない」


 ミランダさんが私たちに声をかけてくる。


「別にいいわよ。私はあそこに入る資格はないわ」


「そうですね、私たちは白百合を追い出された組ですし、今あそこに入るのはちょっと違う気がします」


 私たちの返事が予想通りだったのか、意味ありげな表情で、ニヤニヤとこちらを見てくる。


「そんなこと言わずに入ってきなさいよ、特にエレナは世間公認の親子となった訳だし」


「そ、そんなことでいきなり関係が修復されるモノじゃないでしょう。


心の問題というか、準備期間というか……こっちにも色々あるのよ」


「ほう、その色々とやらを詳しく聞かせてみなさいよ。ホレホレ」


 ミランダさんは明らかにエレナ先輩の反応を面白がっているように見えた。


「うるっさいわね、ミランダは本当に性格悪いわよ‼」


 ほほを膨らませミランダさんに背中を向けるエレナ先輩。


だが心中ではそこまで怒ってはいないだろう、一種の照れ隠し行為にも見えた。


そんな先輩の言動が楽しくてしょうがないとばかりにからかい続けるミランダさん。


そんな彼女に今度は私から声をかけた。


「ミランダさんのおかげで明日の作戦において成功の確率が増えてきました、本当にありがとうございます」


「どうしたのよ、急に?アンタからそんな素直なお礼とか、何だか気持ち悪いわね」


いぶかしげな表情を浮かべ、本当に驚いた様子でこちらを見てきた。


思えば初対面の時からこの人にはあまりいい印象を持っておらず


散々つっかかっていたので彼女が驚くのも無理はない。


「これは本心ですよ、私は貴方の事を誤解していました。


最初に合った時は、ぐうたらで、怠け者で、どうしようもない酔っ払いだと思っていましたので」


「それ、わざわざ言葉にする必要ある?アンタは本当に可愛くないわね」


「すいません、可愛くなくて」


 目を細め、不満顔でこちらを見つめてくるが、私は軽く微笑む。


今となってはこんなやり取りですら心地よく感じていた。数か月前の私では考えられない事である。


「ねえ、ミランダ。どうして私たちを手伝ってくれる気になったの?」


 今度はエレナ先輩が質問をぶつける。


「いいじゃない、別に……単なる気まぐれよ」


「良くないわよ、命がけで戦ってくれる事が、単なる気まぐれの訳ないじゃない。


〈勝てない戦いはしない〉という、ミランダのポリシーにも反するし。ちゃんと答えて」


「そんな事、どうだっていいじゃない。戦力が増えて儲けものぐらいの感覚でいなさいよ」


 真剣な表情で詰め寄るエレナ先輩に対し、ミランダさんは表情を隠すように顔を背け、返事をはぐらかしていた。


「良くないよ、この国の人間でもないミランダが命を懸けて手伝ってくれるのよ、どうでもいい訳ないじゃない。


今知りたいのよ。この戦いで勝っても負けても、多分私は命を落とすことになるわ


ミランダには本当に迷惑をかけてきたし、今までの事も含めて


死ぬ前にちゃんとお礼を言っておきたいの。だからお願い、ちゃんと言って」


 悟ったような表情で詰め寄る先輩をマジマジと見つめるミランダさん。


「アンタ、本当にずるいわね。そんない方をされたら……」


 まっすぐに見つめてくるエレナ先輩の思いに根負けしたのか、ミランダさんは再び顔を背け小さな声で語り始めた。


「私には四つ下の妹がいた。でもロデリアとの戦争で……


アンタは妹に少し似ているのよ、だから助ける気になった。それだけよ」


 小さな声で照れくさそうに背中を見せると、エレナ先輩は優しい笑顔で語りかけた。


「ありがとう、お姉ちゃん」


「止めなさいよ、そういうの……アンタって本当に……」


 背を向けたまま答えるミランダさんの声は微かに震えていた。


それからしばらくの間、両者ともに言葉を発せず、沈黙が訪れる。


向こう側で盛り上がっている団員たちの声が耳に入って来て、どことなく気まずいような空気になる。


「生き残りなさいよ。手足がちぎれようが、腹に穴が開こうが、心臓が動いている限り私が治してあげるから……


どんなことをしても必ず生き残りなさい」


 ミランダさんは相変わらず顔をそむけたまま、絞り出すように語りかける。


「でも今回の戦いでは、さすがに限界まで戦わなきゃいけないはずよ。もし生き残れたとしても私の寿命は……」


「私がなんとかするわよ‼クソ女神の呪い何か、必ず私が解明してやるわ。だから必ず……」


 感情の高ぶりで言葉を詰まらせ、それ以上話せないようだった。エレナ先輩はそんな彼女の背中にそっと抱き着く。


「ありがとう、ミランダ。あなたの事は本当のお姉ちゃんのように思っていたよ」


「だから、そういう事を言うなって言っているじゃない‼」


 満足げな表情で背中の顔をうずめる先輩。それとは対照的に先輩の顔を見ることができずに精一杯強がるミランダさん


しかしその小刻みに震える肩が彼女の心情を現していた。


 こうして私たちは運命の決戦へと身を投じることになったのである。


頑張って毎日投稿する予定です。少しでも〈面白い〉〈続きが読みたい〉と思ってくれたならブックマーク登録と本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです、ものすごく励みになります、よろしくお願いします。

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