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白百合の祝福25

衝撃的な言葉だった、あまりに想定外の事態に考えが追いつかない。


軍事クーデター?ガバルディを首謀者とした金獅子騎士団が


国に対して謀反を起こし、武力で国を乗っ取ったという事?何よ、それ……


「それは事実なのですか?」


「ああ、おそらく間違い無いだろう。ガバルディの奴は、クーデターを起こす際に、邪魔になる存在を排除にかかった。


まずはラウンデル支部長だ、元金獅子騎士団長でソードマスターの異名をとるラウンデルが


敵に回ると厄介だと思ったのだろう」


「えっ、それじゃあ支部長は嘘の呼び出しでここに来たのですか?じゃあ、まさかもう既に殺されているとか……」


 だがゼナおばさんはゆっくりと首を振った。


「いや、それは無いだろう。奴が最初にラウンデル支部長を押さえたのは


その武力を恐れたというのもあるが、一番の目的は金獅子騎士団への抑止力だ」


「抑止力ですか?」


「ああ、ガバルディを始めいくら腕っ節に自信がある猛虎騎士団とはいえ


シュナウゼル率いる金獅子騎士団と、真正面から衝突するのは避けたいはず。


だから国王陛下と宰相閣下の名前を使い、金獅子騎士団に国境警備の命令を下して一旦首都から遠ざけ


その隙にクーデターを成功させよう、という計画なのだろう。


だが、もしシュナウゼルが国の異変に気づいて、戻ってきた場合を考え


ラウンデル殿を人質にとって抑止力にしようというつもりなのだ。


金獅子騎士団の騎士達は、元々ラウンデル殿の部下だった者が多いし


団長であるシュナウゼルにとっても、ラウンデル殿は尊敬する師でもある。


人質として、これ以上の人間はいないからな」


 汚い、何という卑劣な……そんなのは騎士のすることではない。だがその時、私の頭に一つの疑問が浮かんだ。


「じゃあ、どうして白百合騎士団は、この首都ベロリアに残されているのですか?」


 質問をぶつけると、ゼナおばさんは唇をかみしめ、いら立ち交じりの口調で語り始めた。


「自分達の罪を全て白百合になすりつけ、大義名分を得るためだろう。


おそらく奴の筋書きでは〈白百合騎士団が謀反を起こし、クーデターを画策した。


だからガバルディ率いる猛虎騎士団が白百合を撃退し、国を守り抜いた〉とでも考えているのだろう。


そして我々を倒した後、〈国王陛下も、宰相閣下も、白百合騎士団によって殺されていた


だから緊急措置として、我々猛虎騎士団が一時国政を預かることにする〉とでも言って実効支配を続け


そのまま国を乗っ取るつもりなのだろう、いかにもゲスな奴が考えそうな計画だ」


「それじゃあ、白百合ならば、敵に回しても構わないということですか?」


「ああ、国民的に知名度がある白百合騎士団を倒し、新しい時代が来た、ということを印象付けたいのだろう。


つまり金獅子騎士団と違って、我々など取るに足らない雑魚だと思っている証拠だ。舐められているのだよ、クソが‼」


 吐き捨てるように言い放った、その言葉の節々に、悔しさがにじんでいた。


「何という卑劣な、騎士どころか、やっていることは野盗と変わらないじゃないですか‼」


「ああ、奴は最低、最悪のゲス野郎だ。」


 私も同様に、胸のムカつきが止まらないが、事態は深刻である。


今回のクーデターを決行するため、用意周到に準備していた向こう側に比べ


我々は今知ったばかりなのだ。嘘とはいえ向こうが国王陛下と、宰相閣下の名前で命令が下せる以上


こちらは立場的に反乱軍、つまり逆賊ということになる。


猛虎騎士団だけでも厄介なのに、正規軍六万人が敵にまわるということなのだ。


冷静に考えれば、不利を通り越して絶望的な状況と思えた。


「どうするつもりですか騎士団長、現状で勝算があるとは思えませんが?」


「いや、一つだけ、手がある」


 この絶望的な状況でも勝算があると言い切った、にわかには信じられなかったが


虚勢を張っているとも思えない、この人が言うのだからあるのだろう。


「それはどういった方法ですか?」


 反射的に問いかけると、ゼナおばさんはすぐには答えず、真剣な表情のまま無言でこちらに近づいてきた


何だろうか?と思っていると、私の横を通り過ぎ、後ろにいたエレナ先輩の前で立ち止まる。


ここまで一言も話さず、母親の目すら見ようとはしなかった、エレナ先輩に対し、静かに語り始めた。


「エレナ、お前に頼みたいことがある」


「何よ、今度は私に何をさせるつもり?」


 相変わらず顔を逸らし、不貞腐れ気味に返事をしていた、これが母と娘の会話か?


 そこから考えている作戦の内容を話してくれた、黙って聞いていたエレナ先輩は、ボソリと呟くように


「わかった」


 とだけ答えるが、最後まで目を合わそうとはしなかった。


「お前達二人は、先に集合場所へと向かってくれ、我々もすぐに行く。馬の繋いである場所はわかるな?」


「ええ、もちろんです」


「じゃあ、私もすぐに追いかける、急げ‼」


「はい」


 私たちはそそくさと部屋を出ると、白百合騎士団の使用する馬房へと急いだ


そこに繋いである馬を二頭連れ出し、指定された集合場所へと向かう。


何だかとんでもないとこになった、不安と絶望感が心を支配し、これからどうなるのか見当もつかない。


だが進むしかない、行くしかないのだ。自分に言い聞かせるように心の中で呟いた。


こうして私たちは運命の糸に導かれるように、時代の激流に飲見込まれていったのである。


 一方で召集をかけられた白百合の団員達は集合場所の第一訓練場へと集まっていた。


突然の呼び出しにも関わらず、これほど早く対応できるのはさすがと言わざるを得ない。


「白百合騎士団、総勢二千五百二十人 全団員集合いたしました」


 鍛え上げた部下たちの、素早い行動に満足したのか、ゼナおばさんは満足げに頷いた。


「皆に集まってもらったのは他でもない、実は……」


 この緊急の事態を話そうとしたその時、周りを囲むように、国軍の正規兵が姿を見せる。


「白百合騎士団の者達に告げる、君たちには国家反逆罪の容疑がかけられている。


身の潔白を証明したいのであれば、速やかに武装を解除し投降せよ。繰り返す、速やかに投降せよ‼」


 突然の謀反の疑惑と、投降勧告に動揺を隠しきれない団員達。


「国家反逆罪って何よ」


「私たちが反逆者?何かの間違いでしょう」


「一体何が起きているの?」


 浮き足立つ団員、それも無理からぬ事だろう。敵の予想以上の動きに、思わず舌打ちする。


「ちっ、顔に似合わずやることが早い。ガバルディの奴め……」


 続々と包囲網を形成しつつある正規軍の兵士、状況が把握できずにオロオロするだけの白百合の騎士達


そんな中でゼナおばさんの怒号のような声が響き渡った。


「全員戦闘準備、突撃陣形を編成し包囲網を突破する。急げ‼」


 団長からの思いもよらない命令に、さらに激しく動揺する団員達。


「突撃って……相手は味方ですよ⁉︎」


 そんな部隊長の声に耳を貸すこともなく、再び声を張り上げる。


「事情を話している暇はない、私を信じてついて来い。このまま突撃陣を形成しつつ


一点突破でこの包囲網を突破する、私に続け‼」


 そこから団員達の行動は早かった、普段から鍛え上げられた団員達は頭で考えるよりも早く体が動き


素早く突撃陣を形成すると、ゼナおばさんを先頭に正規兵の包囲網を難なく突破すると


そのまま私たちと同じ集合場所へと向かった。



 指定された場所は、首都から20㎞程離れたところにあり、以前は女神教の教会のあった所である。


三十年前にロデリア軍に攻め込まれ、その際に教会は半壊、そのまま放棄されたという経緯がある。


元々三千人は入れるほどの大きな教会だっただけに廃墟と化した今では不気味さと悲哀を感じさせ


まるで大きな墓標にも見えた。


私たちがそこに到着してから二十分程すると、白百合のメンバー達が到着した。


私たちはゼナおばさんから〈私が呼ぶまでは姿を見せるな〉と言われていたので、物陰に隠れて成り行きを見守る。


ゼナおばさんから団員達に、今回の事態の説明が告げられる。


「猛虎騎士団による軍事クーデター⁉︎しかも我々白百合が、その首謀者にされたのですか‼」


「ああ、そうだ」


 衝撃の事実を聞かされ、団員達は激しく動揺する。


「そんな無茶苦茶な話がありますか、議会なり、裁判所なりにきちんと事情を説明すれば


わかってくれるはずです、我々は無実なのですから」


 団員の一人が訴えかけるように発言したが、その希望の灯はすぐに打ち消される。


「無駄だろうな。国王陛下と宰相閣下を人質として取られている以上


議会や裁判所も押さえられていると思った方がいい。もし議会や裁判所が我々の味方をしたとしても


奴らがそれに従うとは思えない、行政府や立憲機関には、権力はあっても、戦力はないからな」


 厳しい現実を突きつけられ、誰もが言葉を失い、やりきれない思いを抱えて沈黙する。


身に覚えのない罪を背負わされ、逆賊という汚名を着せられ、誰もが忸怩たる思いを抱いていた。


長い沈黙の中で、水を打ったような静寂が訪れる。誰も口を開こうとはせず、重苦しい空気が漂い始めた時。


それを払拭するかのように、ゼナおばさんが口を開いた。


「ここからは各自で判断して欲しい。我々はこれから国家に仇なす逆賊として戦わなければならない


しかも相手には、本来味方であるはずの正規軍も含まれる。


誰も味方とは戦いたくはないだろう。だから、あくまで自分の身の潔白を証明するため


投降し裁判を受けるという者がいるならば、止めはしない。


だが待っているのはおそらく、テロリストとしての処遇だ。


反逆を企てた犯罪者として、民衆の前で公開処刑されるだろう。


このまま戦わず逃げるという選択もある。身を隠し、身分を偽って他国で細々と暮らす


それも一つの選択だ。だがいわれなき罪を着せられ、隠匿者としていつまでも怯えて暮らす生活が幸福だとは思えない。


ここからは自分の意志で選択しろ、誰が何をしても咎めはしない。


私についていけないという者はこのままここを立ち去ってもいい、決して責めはしない。


だが国ため、己の誇りのために私と共に戦うという者はここに残れ。


奴らに我ら白百合騎士団の意地と誇りを見せつけてやろうじゃないか‼」


 その瞬間、〈おおーーー〉という地鳴りのような歓声が上がった。もちろん立ち去るものなど一人もいない


先ほどまでの通夜のような空気はどこかへ吹き飛び、高揚感と使命感がこちらにも伝わってきた。


そんな興奮状態の中で、ベゼッタ部隊長が手を上げる。


「騎士団長と我々の気持ちは同じです。ですが一つだけお聞きしたい。


この戦いに勝機はありますか?相手が猛虎騎士団だけでもかなりの苦戦は免れないでしょう。


ましてやそこに正規軍が加わるとなれば、苦戦どころか全滅は必至。


今度の戦いは勝算あってのモノなのか、それとも玉砕覚悟で意地を見せつけるためだけの戦いなのか


そこのところを教えてください」


 部隊長の発言は部下のことを思ってのことだと誰もが理解した。


現実的に考えれば勝ち目などあるはずもない。一種の興奮状態で我を忘れて燃えていた団員達が


一瞬で現実に引き戻され、誰もが口をつぐんだ。


「皆の言いたいこともわかる、我ら白百合は総勢でも二千五百人ほどしかいない。


それに対し猛虎騎士団が約三千人、正規兵が約六万人。金獅子騎士団の加勢は期待できないことを考えれば


希望どころか絶望しか見えないというのもわかる。今までの戦術にならえば撤退の一手だろう。


だがそれはあくまで撤退する場所がある場合だ、今回我々に撤退する場所などない。


戦うしかないのだ。だが玉砕しに行くわけではない、勝機はある」


ゼナおばさんは静かに言った。


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