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白百合の祝福23

じゃあ店の事は頼んだぞ、遅くとも、明後日には帰ってくるから」


 翌日、支部長はそんなセリフを残し本国へと向かった


もう店の仕事を完全に把握しているので、先輩と二人でならば難なくこなせるはずだ。


もちろんミランダさんは戦力としてカウントしていない。


そもそもこの店はそこまで繁盛しているわけではないので、私一人でも充分切り盛りできるレベルなのである。


だが予想外の事が起きた。呼び出されて本国へと向かった支部長が


翌日も、その翌日も、さらにその翌日になっても帰ってこなかったのである


もちろん何の連絡もない。店を出て四日たっても帰ってこない支部長。


その事が気がかりで、先輩と共にモヤモヤとした気持ちを抱えていた。


「支部長、いくら何でも遅すぎませんか?何の連絡もないというのも何か気になります


例えそのまま本国での勅任の辞令を受けたとしても、こちらに連絡ぐらいはくるはずです」


「そうね、ミランダならばともかく、この店を放っておいて連絡もないとか。


マスターがそんないい加減な事をするとは思えないし……」


 二人で色々と考えてはみたものの、何も連絡がないのでは明確な結論を出す事はできない


ロデリア軍がいつ攻めてくるかわからないという状況で、嫌な予感だけが膨れ上がっていく。


「何か胸騒ぎがします、ここは思い切って確認しに行きませんか?」


「確認って、本国に行くってこと?」


「はい、店は先輩に任せますから、私が確認しにいってきます。馬車を使えば二日で往復できるはずですから」


 口に手を当て、少し考え込んだエレナ先輩だったが、何かを決意するように口を開いた。


「ちょっと待って、私も行くわ」


「えっ、エレナ先輩も?」


 意外だった、先輩にとって、嫌な思い出しかない本国に行くということは


それなりに覚悟がいるはずだからだ。それだけ先輩もこの状況に、嫌な気配を感じているのだろう。


「じゃあ、店はどうするのですか?」


「店の方は、ミランダに任せよう」


 軽くそう言ってのけるが、正直それはどうなのだろうか?と思う。


私がここに着任してきて以来、ミランダさんがまともに働いている姿を見た事がない。


おそらく本人も嫌がるだろうと思っていたのだが……


「いいわよ、行ってらっしゃい」


 予想外の返事であった。もしかしたら私が知らないだけで


彼女にも店の切り盛りぐらいはできるのだろうか?そんな事を考えていた時である。


「あんた達がいない時は、店の前に【臨時休業】の看板を掲げておくわ」


 なるほど、そういうことか。こうして私たちは、後顧の憂いを断ち、本国へと向かうことになった。


手配していた馬車に乗り、夜のうちに村を立つと、朝には首都ベロリアに到着する。


朝早くから大通りには大勢の人が行き交い、道沿いに展開されている露店では


人々が商品売買や、仕入れ交渉を行なっていた。


ひっきりなしに通り過ぎて行く何台の馬車が、嫌でも活気を感じさせる。


ここを離れて数ヶ月しか経っていないが、随分と久しぶりの気がした。


「相変わらず、騒がしい街ですね」


 何気なしにそう呟いたが、ふと横を見ると、先輩は暗くて冴えない表情を浮かべていた。


先輩にとって、この町は、嫌な思い出ばかりだろうから、それも仕方がないのか……


「大丈夫ですか、先輩?」


 何がどうという具体的な事ではなく、あくまでも大雑把な感じで問いかけると


エレナ先輩は無理矢理の笑顔を作って応えてくれる。


「うん、大丈夫だよ。少し馬車に酔っただけ」


 こんな少しの強がりでさえ、私の胸には突き刺さるモノがあった。


私たちは早速軍の司令本部へと足を運び、受付の女性に手続きを申し込む。


「私は極東支部所属、ミュンヘルト・リアと申します。


こちらにラウンデル支部長が来ているはずなのですが、面会は可能でしょうか?」


 逸る気持ちを抑えきれないまま、早口で問い詰めるように言った為


受付の女性は少し戸惑うそぶりを見せるが、すぐに手元の帳面に目を通すと優しく微笑んで答えてくれた。


「申し訳ありません、ラウンデル極東支部長が、こちらに来ているという記録はありません。


何かのお間違いなのではないでしょうか?」


「そんなはずはありません、確かにここに来ているはずなのです‼」


「そうおっしゃられましても、そのような記録は、一切ございませんので……」


「そんな馬鹿な、もう一度ちゃんと調べて……」


 私が声を荒げ、問い詰めようとした時、エレナ先輩が私の背中を軽く叩く。


何かと思い振り向くと、先輩は私に向かって手招きしていた。


何やら意味深な空気を感じとった私は、先輩に近づき小声で問いかける。


「どうしました、先輩?」


「極東支部は、私の事や、魔獣の件などの極秘事項が多いから、正式な記録には残っていない事が結構あるのよ


だからここで聞いても無駄じゃないかな?」


「じゃあ、どうすればいいのですか?」


「例のシュナウゼルなら、知っているのではないかな?マスターを呼び出した張本人だし」


「そうですね、彼と支部長は師弟関係でもあるし、彼ならば事情を知っているでしょう」


 私は気を取り直し、努めて平静を装いながら再び問いかけた。


「では、シュナウゼル騎士団長に繋いで欲しいのですが」


 すると受付の女性は少し困った表情浮かべ、申し訳なさそうに答えた。


「申し訳ありません。あいにくシュナウゼル金獅子団長は、数日前より国境警備の視察に出かけておりまして


お戻りは来週になる予定です」


「ちっ、この肝心な時に……使えない男ですね」


 思わず舌打ちし、悪態を口にすると、受付の女性は目を丸くして驚いていた。


国民的人気を誇るシュナウゼルに対し、このような暴言を吐く女性など、今までいなかったのだろう。


しかし、そんなことは私にとってどうでもいい事なので、再び先輩と小声で相談する。


「困ったわね、どうしようか?」


「こうなれば仕方がありません、ゼナおばさんを頼りましょう」


 私の言葉に、エレナ先輩の表情が曇る。


「先輩には思うところがあるでしょうが、もはやそれしか手段がありません。


私の方から話しますから、いいですね?」


「わかったわ、ママを頼りましょう」


 渋々主諾したという感じだったが、この際それを気にしている余裕はない。


私たちは受付で手続きを済ませ、面会を取り付けると、足早にゼナおばさんのいる部屋へと向かった。


「どうした、こんな朝早くから二人揃って?」


 私たちを見たゼナおばさんは、少し驚いた様子だったが、あくまで冷静に対応してくれる


一方で、まだわだかまりがあるのか、先輩は顔を背け


母親であるゼナおばさんの方を向くこともなく、視線を合わせようとはしなかった。


「ゼナおばさ……いえ、騎士団長。実は……」


 私は、先日ラウンデル支部長が、司令部から呼び出されてここに来たのだが


それから一切連絡が取れなくなった事を説明した。


「何だと?私は聞いていないぞ、そんな話。そもそもそのような会議は行われていない」


話を聞き、自分が全く知らなかったことに、心底驚いた様子であった。


「シュナウゼルに事情を聞けば……そうか、あいつは今、国境警備で出ているのだったな。


わかった、私が直接軍司令部に問い合わせてみる」


 何か思うところがあったのか、書いていた書類から手を止め、素早く立ち上がった。


頑張って毎日投稿する予定です。少しでも〈面白い〉〈続きが読みたい〉と思ってくれたならブックマーク登録と本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです、ものすごく励みになります、よろしくお願いします。

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