表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/36

白百合の祝福21

「な、何を突然言い出すのですか、どうして私が……」


「もう一度、戦いたいのでしょう、彼と?」


 まるでこちらの心を見透かしたかのように、私の顔を覗き込む。


「うっ、確かに、リベンジしたい気持ちはあります。しかし私の力量では、彼の相手は……」


「リアちゃんはここに来て、凄く強くなっているよ、それは私が保証する、自分を信じて」


 屈託のない笑顔でそう言い切られる。確かに、ここに来るまでは自分の腕にそれなりに自信があった。


それを見事に打ち砕いたのは、何を隠そう目の前にいるこの人自身なのだ。


毎日稽古をつけてもらいながら、カスる事すらできないのに〈強くなっている〉などと言われても、納得できるはずもなかった。


だが先輩は私の気持ちを察してくれて、国内最強と言われるこの男にリベンジのチャンスを与えてくれたのだ。


その気持ちには応えたい。何より私が負けて、先輩が彼と勝負する事になれば


先輩にとって悲しい結末しか待っていない、そういう意味でも、負けられないのである。


「この女に勝てばいいのだな?」


 鋭い視線でジロリとこちらを見て来るシュナウゼル。今日、彼が私をキチンと見たのは初めての気がする。


「ええ、私の相棒だからね。強いわよ」


 私の肩に手を乗せ、挑発のような言葉を投げかける。


無駄にハードルが上がったが、この際それはどうでもいい。


先輩は気合を入れる私の耳元に近づき、小さな声で囁いた。


「やっちゃえ、リアちゃん」


 激励の言葉に私は小さく頷く。思えばこの男と初めて戦った時はまるで歯が立たなかった


今の私がどれだけ通じるのか、期待と不安が入り混じる。


〈リアちゃんは強くなった〉という、根拠の薄い言葉を完全に信じた訳ではないが


ここまで来たら、全力でぶつかるのみである。


「それでは模擬戦を始める、使用するのは模擬専用の木剣。


勝敗はどちらかが動けなくなるか負けを認めるまでとする」


 支部長が説明をしている最中、シュナウゼルはずっとエレナ先輩の方を見ていた。


わかってはいたがこうして対峙している時でさえ、私のことは全く眼中にないのである。


「それでは、始め‼」


 開始の合図とともに模擬戦が始まった。シュナウゼルは木剣の剣先を私に向け、静かに語り始める。


「君に恨みはないが、早々に決めさせてもらう」


 そう言いながら剣を静かに構えた。


「来る」


 私も剣を構え迎え撃つ体勢をとった。シュナウゼルの使う剣術流派は【破砕剛気流】


私の使う【破砕列波流】とは同じ系列の剣術である。


元々【破砕流】から枝分かれした流派同士ということもあり、使う技の系統はほぼ同じ


だからシュナウゼルが今から放とうとしている技のこともよく知っている。だが知っていても防げないのだ。


シュナウゼルは剣先に殺気を込め、中段に構える、その姿はまるで燃え盛る炎のようだ。


私は気持ちで負けないよう、相手の剣先に集中し、シュナウゼルを睨みつけた


ここで飲まれてしまっては勝負にならないからだ。


支部長やエレナ先輩が見守る中、物音一つしないこの場所で二人の剣士が対峙する。


互いに気合と気合をぶつけながら様子を伺う、ピリピリと張り詰めた空気が辺りを支配していく。


限られた人間だけが見守る静寂の中で、嫌でも緊張感が高まっていく。


だが私の心は不思議と落ち着いていた。これほどの強敵を相手にして、余裕などあるはずもないのだが


私の脳裏に浮かんだのは〈いくらこの男が強かろうと、あの人ほどではない〉という確信じみた思いだった。


その時、微かな風が吹き木々の揺れる〈カサッ〉という音がすると、それに連動するようにシュナウゼルが動いた。


繰り出す技は【砕波剛気流初伝技 双龍撃】、相手の両肩口にほぼ同時に放たれる袈裟斬りによる二連撃である。


【大聖剣舞祭】においてシュナウゼルはこの技だけでほとんどの相手を一蹴してきた


かくいう私もその一蹴された中の一人である。


技の内容と太刀筋を知っていても食らってしまう、その理由はその圧倒的ともいえる技の威力だ。


シュナウゼルの剣はスピード、パワー、技のキレ、どれをとっても凄まじく高レベルのものであり


彼が超一流の剣士であることの証明でもあった。私が【大聖剣舞祭】でこの男に敗れた時は


最初の一撃を受け止めた際、その剣圧によって体勢を崩され、連続で襲ってくる二撃目の防御に間に合わなかったのである。


まるで野生の虎を思わせる殺気を纏いながら、凄まじい剣撃を繰り出すシュナウゼル


模擬専用の木剣とはいえ、頭部に喰らえば一撃で相手を絶命させるほどの威力を持つ剣が


空気を切り裂き、唸りを上げて襲いかかってくる。


私は咄嗟にその一撃を受け止めた。相変わらずの威力と殺気に思わず押し込まれそうになる


そして息をつく暇もなく、連続で繰り出される二撃目、あの時とは違う、動け、私の体‼


すると頭で考えるよりも先に、体が反応する。


〈カカーン〉という木剣同士がぶつかり合う乾いた音が、辺り一帯に鳴り響いた。


「ほう、今の技を受け止められるとは。思ったよりはやるな」


 シュナウゼルが少し嬉しそうに呟く。私自身も前回とは違う結果に成長を感じ


嬉しさが込み上げてくるが、それを表に出すことはせず、精一杯余裕の表情を浮かべて言ってやった。


「これが我が国最強と呼ばれる騎士の剣ですか?思っていたより大した事はありませんね」


 もちろんこれはハッタリの虚勢である。今の【双龍撃】を受け止められたのもギリギリで


正直、自分でも驚いているというのにそんな余裕などあるはずがない。


〈ナメられたくない〉という思いだけで、自然と口から出ていた、我ながら己の負けず嫌いに呆れるばかりである。


「言うじゃないか、じゃあここからは本気でいかせてもらうよ」


 どこか嬉しそうにニヤリと口元を緩めると、そこらから嵐のような怒涛の攻撃が始まった。


だが、その全てに対応し、互角に戦えている。


〈カンカンカンカン〉という木剣同士が激しくぶつかり合う衝突音が鳴り響き


互いの息づかいが聞こえるほどの距離で火花を散らし、激しくぶつかり合う私とシュナウゼル。


ついていける、国内最強といわれるこの男相手にも、私は負けていない‼


そんな思いが頭を駆け巡り、高揚感と充実感が心を満たしていく。


激しい攻防を繰り広げる中でシュナウゼルが一旦仕切りなおすように間を取り、大きく息を吐く、


そして静かな口調で語りかけてきた。


「君の使う剣は私と同じ【破砕流】だな、【破砕列波流】か?」


「今頃気づいたのですか」


 この男が私の事を、初めて一人の剣士として認識した瞬間だった


ようやく同じ目線で戦える。その事実に興奮を抑えきれないでいるが


私はあくまで平静を装い、ありもしない余裕を見せつけた。


するとシュナウゼルは、少し目を細め、静かに語り始める。


「なるほど、道理で私の太刀筋が読まれているわけだな。


だが同じ流派だからといって、簡単に受け止められるほど私の剣は安くない。


君が相当の腕を持つ剣士だということは認めよう」


「同系列の流派である以上、あなたの太刀筋は全てお見通しです


どんな攻撃だろうが、全て受け切って見せましょう」


 わざと相手のプライドを刺激し、挑発するような言葉を言い放つ。


ここまで打ち合ってきて気づいたことなのだが、私はまだ僅かにこの男には及ばない。


彼の攻撃を受けるのが精一杯で、ほとんど攻撃に転ずることができていないからだ。


このまま打ち合えば、おそらく自力の差で最後は敗れてしまうだろう。


ならばこのプライドの高そうな男を挑発し、一撃勝負に持ち込む事によってそこに勝機を見出す。


私が勝つ方法はそれしか思いつかなかった。姑息ではあるが、この勝負は私だけのものではない


私の負けは先輩の不幸に繋がってしまう、つまりどうしても負けられない戦いなのだ。


「わかった、あえてその誘いに乗ってやる。次の一撃で決めてやろう」


 シュナウゼルの顔つきが真剣なものへと変わる。そしてゆっくりと剣を大上段に構える。


私の狙いはバレバレのようだが、それでもあえて誘いに乗ってきてくれた。


「おい、シュナウゼル、その構えは」


 支部長が思わず大きな声を出した、その理由は私にもわかる。


シュナウゼルが今から繰り出そうとしている技は【破砕剛気流奥義 竜撃斬】


己の全身全霊を込めた一撃を相手にぶつける必殺の技である。


奥義だけあって凄まじい威力ではあるが、避けられ、受け止められたら相手に隙だらけの姿をさらすことになるため


それで終わりという諸刃の剣であり、後のことなど一切考えない捨て身の剣


それが【破砕剛気流奥義 竜撃斬】という技なのである。


頑張って毎日投稿する予定です。少しでも〈面白い〉〈続きが読みたい〉と思ってくれたならブックマーク登録と本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです、ものすごく励みになります、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ