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第26話「ヤクザの宅急便」

「ここだね」

 

 指定された住所に着くと、目の前にはごく普通の一軒家があった。


「じゃあ、さくっと届けてくるね」


 デリバリーバッグを抱えて車を降りようとする。


「姐御の手を煩わせるまでもありません! あっしに行かせてください!」


 するとヤクザの一人が奪い取るようにして行ってしまった。マツダだったか? アオキだったか? 正直見分けはついていない。


 ヤクザが家のチャイムを鳴らす異様な光景。闇金の取り立てか何かだろうか……?


「こんにちはー。八九三組の者ですー」


「え? ヤクザ? ひいぃぃぃ! い、命だけはお助けをーーー!」


 突然訪れてきたヤクザに、チャイムの向こうはすっかり大パニック状態。そりゃそうだ。


「い、いえ。お料理届けにきましたー」


「そ、そんな危ないもの頼んでません! もっ、持って帰ってくださいぃーーー!」


 怪しいブツの押し売りだと思われていそうだ……。そりゃヤクザに「お料理」とか言われても麻薬の隠語にしか聞こえなくて当然だろう……。


「お料理、玄関に置いておきますねー」


 こうしてご注文の料理は、暴風雨吹き荒れる中、無事玄関先へと置き配されたのだった。めでたしめでたし。


         ***


 次に着いたのは少し大きめの一軒家。


 ヤクザたちは自分たちが代わりに行くときかなかったが、身に覚えがないのにヤクザにインターフォンを鳴らされるのは普通に恐怖でしかなくて、お相手が気の毒過ぎるので自重してもらった。


 まあ、かといって後ろに張り付いて圧を放っているのもどうかと思うが……。これでは私がまるでマフィアの女ボスだ……。

 

 ピンポーン。


 インターフォンを鳴らす。今のところ、ただヤクザからマフィアの女ボスに変わっただけだが、果たしてちゃんと受け取ってもらえるのだろうか……? 


 ガチャ。


 奇跡的に扉が開く。この家の住人は相当な精神力の持ち主か、或いはヤクザ慣れしているらしい。


「あ、お疲れ様です……」


 出てきたのは上下ジャージ姿の20代くらいの女性。でもこの顔どこかで見たことがあるような……?


 バタン!


 などと考えていたら一転、勢いよく扉が閉められてしまった……。やはり後ろのヤクザに恐れをなしたのだろうか……?


 ガチャ。


 5分ほど経つと再び扉が開き、中からは黒のゴスロリドレスに身を包んだ先ほどの女性が現れた。急いで着たからなのか、ところどころからジャージがこんにちはしている……。


「ご苦労であったメイドよ。い、いや? 闇社会のボス……? もしかして妾、始末されるやつ……?」


 ああ。あの時のニンニクラーメンの自称皇女様だ……。


 目の前に広がる余りにも異様な光景に混乱しているのか、あんまりキャラが定まっていない。かわいそうに。


「いや、こう見えて命とる気はないから安心して……。はい、これ。ご注文の『ニンニクラーメン ニンニクアブラインフィニティヤサイキリマンジャロ』」


 とてつもない異臭を放つそれを手渡す。あまりにも強烈な臭いのせいで、後ろのヤクザたちが険しい顔になっていることも、威圧感に拍車をかけているのかもしれない……。


「あ、どうも……。お足元の悪い中、わざわざありがとうございました……」


 迷走の末ただの常識人になってしまった彼女は、禍々しいまでの異臭を放つそれを受け取ると、うやうやしく頭を下げて家の中へと戻っていった。


         ***


「なんだかんだ始めてまともな配達ができた気がする……」


 溜息混じりにそう呟くと、不思議そうに首をかしげる取り巻きのヤクザたち。


 まあ原因何なのかは火を見るよりも明らかなのだが、敢えて口にはしないでおこう……。


「次でようやく最後だね……」


 もはや「デリバリーを頼んだらヤクザが来たドッキリ」と化しているデリバリー事業だが、次の注文で最後のようだ。


「お疲れ様です姐御! えっと次の住所は……西区南北町東五丁目九番地十号……あれ、この住所どこかで見覚えが……」


 指示された住所を見て頭をひねる助手席のヤクザ。


「どうかしたの……?」


「い、いや。何でもありません! 早く行きましょう」


 何かが引っかかっている様子だったが、はっきりとは思い出せないようだ……。


「しっかし、いったいどこの誰が唐揚げ200個も頼んだんですかね……?」

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